ダボス会議でのICRC:科学技術とのパートナーシップ、AR、戦争の残酷さ
赤十字国際委員会(ICRC)のペーター・マウラー総裁は、ダボスで開かれている世界経済フォーラム年次総会に参加。デジタル化が進み相互につながりながらも破断された世界で、切迫する人道支援について議論します。
ダルフール地域で活動を再開したスーダン、そして暴力と苦しみが世界的に表面化されていない中央アフリカ共和国から戻ったばかりのマウラー総裁は、2018年の人道支援における課題をはじめ、サイバー戦争、新しい形を模索した資金調達、そして科学技術面でのパートナーシップについてICRCの見解を述べる予定です。マイクロソフト社の社長兼最高法務責任者ブラッド・スミス氏と、サイバースペースにおける人道主義の保護についてのイベントを共催します。
「人道的に高い代償が伴う長期化した戦争に世界が直面した時、何の行動も起こさないことは、支援の新しいやり方を探索することよりも、はるかに危険です。自分たちの思考を今変えなければ、弱い立場に置かれた人々の生活を大きく改善する解決策があるのかどうか、一生知りえないでしょう」とマウラー総裁。「今ある人道上の課題を解決するために、あらゆる人の努力が欠かせないということを今日の首脳陣に思い出してもらうため、私はダボスにいます。加えて、私たちが日々支援している、戦争で傷を背負った人たちの苦しみを軽減するために、新しいパートナーシップを開拓することも、ここにきた理由です」
ICRCはAR(拡張現実)を活用しています。ARは、スナップチャットやポケモン・ゴーで知られていますが、私たちはこの技術を全く異なることに使用しています。「断片化された世界で共通ビジョンを創造する(Creating a Shared Vision in a Fragmented World)」という(世界経済フォーラムの)今年のテーマに沿って、ICRCは「エンター・ザ・ルーム(部屋に入る)」という、迫力があり直に戦争の残忍な現実をARで体験できるアプリケーションの公開を楽しみにしています。
このアプリケーションは、戦争から逃れることができない膨大な何百万人もの経験を掘り下げていきます。それを使用すると、自宅の入り口で、自己体験するかのように一人称視点で捉えることができます。戦争がもたらす影響や、特に都市型戦争に関連するICRCの核となる活動や価値について、対話の機会を作るツールになり得ると信じています。
ICRCの視野にある2018年の課題
- サイバー攻撃:紛争下でのサイバー攻撃による人道上の代償に対応するため、デジタル・ジュネーブ条約の中で関心は広がっています。航空管制システム、油送管、そして原子力発電所は脆弱です。
- 社会を良くする科学技術:ICRCは、紛争で離れ離れになった家族の再会支援のため、顔認証技術を取り入れるべくマイクロソフト社とパートナーシップを結んでいます。より効果的・効率的な活動を目指す上で、技術者の専門知識を歓迎します。
- 戦場となった街の再建:世界で5000万人が都市型戦争の被害を受けています。たとえ紛争の真っ最中であっても、物理面、そして心理面における街の復興にできる限り早く着手しなければいけません。
- 忘れ去られた紛争:紛争や苦しみは長年にわたってくすぶります。コンゴ、イスラエルとパレスチナ、リビア、南スーダン、そしてウクライナ。苦しみを終わらせるため、平和に向けた更なる努力が必要です。
- 人道支援のための資金調達の転換:政府や社会的投資家は、紛争を社会経済の壊滅的大惨事と受け止め、長期的に資金を供給するべきです。革新的なパートナーシップ構築の絶好の機会と思っています。
- 国際人道法(IHL):IHLは依然高い効力を有します。国際社会は、IHLが適用されない、または手続きの中で取り引きされるという議論からIHLを守らなければなりません。
- 忘れられた人々:世界が、移民に関するグローバル・コンパクトの策定に向けて交渉している中で、家を追われてきた人々をどう助けるかが議題の中心です。政策が国際的責務と合致するよう、私たちは訴えます。
原文は本部サイト(英語)をご覧ください。