ICRCが「気候・環境移行基金」を開設:人道セクターの“進化”をサポート
紛争の影響を受けている国に住む人々は、同時に気候変動の影響を最も受けやすい人々でもあります。
紛争、食料不安、加速する気候変動が相まって、避難民を生み、緊張を高め、大規模な人道ニーズを呼び起こします。私たちは、サハラ砂漠南部に広がるサヘル地域やアフリカ北東部に位置する「アフリカの角」など多くの活動地でそうした状況を目の当たりにしています。
一方、私たち赤十字国際委員会(ICRC)のような人道支援組織が救援活動を行う際に、温室効果ガスを発生させたり、(時には有害な)廃棄物を出したり、水などの天然資源を消費したりして気候や環境の問題に拍車をかけていることも事実です。
2021年、ICRCと国際赤十字・赤新月社連盟は、人道セクターを横断する幅広い協議プロセスを経て、「人道団体のための気候・環境憲章」を採択しました。
この憲章に沿って、ICRCは以下の3つの組織目標を掲げています。
こうした目標を達成するため、私たちは「ICRC気候・環境移行基金」を2022年1月17日に立ち上げました。開設に伴い、ICRCのペーター・マウラー総裁は次のように述べています。
「気候変動を受けて賢明に行動でき、適応力を備え、持続できる組織に移行するうえで、この基金は重要となってくるでしょう。移行プロセスの加速に必要な多くの取り組みを支援するために、公的機関、民間企業、慈善団体から追加資金が寄せられる見込みです。私たちの目指すべき姿は明確です。それは、気候変動対策を強化するために、人道セクターの進化をサポートし、こうした取り組みの先駆けとなることです」。
現場に必要不可欠な人道支援をサポートする新しい資金調達モデル
「ICRC気候・環境移行基金」は、以下の二つの段階を経て変革を実現します。
節約分は、人道支援に充てる予定です。中期的には、世界各地を拠点とするICRC代表部も参加して、さらなるCO2と支出金の削減が期待されます。
こうした取り組みも含めて、2030年までに目標を達成するために必要な資金は、2022年中に計上される見込みです。リサーチと基金設計のための初期資金は、ロンバー・オディエ財団が提供してくれました。
また、同基金の開設以前に、ICRCのための財団(1931年設立)、リヒテンシュタイン公国政府、およびスイス開発協力庁が約300万スイスフラン(約3億7000万円)の寄附をICRCに対して確約しました。
長期的視野に立った計画であることから、「ICRC気候・環境移行基金」は1年単位ではなく、複数年を一括りとして組み立てられる 予定です。資産構成は、ICRC自らが元手として投じた貸付金に加えて、公共、民間、慈善団体からの援助金です。2022年に返済と補充のメカニズムを検討し、2023年の実施を目指します。また、この基金を民間投資の対象として開放することも念頭に入れています。
本プロジェクトには、他にも多様なコラボレーションの形が潜在します。赤十字運動のパートナーをはじめ、エネルギー分野に携わる民間企業や、環境に配慮した持続可能性を研究する専門家、学術界、非営利団体など、あらゆる分野からの協力を私たちは求めています。既に、知見を共有する仲間として、赤十字・赤新月気候センターやNPOの Climate Action Acceleratorも名を連ねています。
ICRCと新しい資金調達モデルについて:
「ICRC気候・環境移行基金」は、私たちが開発している一連の革新的な資金調達手法の一つです。狙いは、、、
このたび開設した「ICRC気候・環境移行基金」は、「人道インパクト投資」における学びと成功に基づいています。ICRCは2030年までに、この画期的なスキームの運用益の5%(年間1億5000万スイスフラン/約186億6000万円)を活動支援などにあてるという大きな目標を掲げています。