サイバー対策に特化したICRC代表部を開設~不正アクセスやフェイク情報、データ保護などの問題に対応
赤十字国際委員会(ICRC)とルクセンブルクの外務欧州省開発協力・人道支援局は2022年11月17日、サイバー対策が主な業務のICRCルクセンブルク代表部の開設を正式発表しました。同代表部では、最先端のインフラと支援のエコシステムを活用して、人道支援に関連した、サイバー空間における技術や政策、運用、法律にまつわる諸問題についての研究開発および試験運用を安全に行うことになります。
ルクセンブルクのフランツ・ファイヨ開発協力・人道支援担当大臣は、「私たちは、ICRCが紛争やその他暴力事態下にある人々の保護の強化を目的とした研究開発を安全に行うための空間を提供できることを大変誇りに思います」と語ります。「我が国が誇る、サイバーを含めた技術にまつわる幅広いエコシステムを活かして、ICRCのこうした重要な目的の達成のために価値ある貢献ができると確信しています」。
ここ数年、人道支援セクターがシステム・運用の両面でデジタルのツールやソリューションを活用するようになる中で、新しいサービスや支援形態が生まれています。例えば、携帯電話への給付金の送金や、紛争下にある人々に対する包括的な情報共有、インターネットや携帯電話の接続環境の提供、データ保護や行方不明の家族の捜索サービスの利用支援などです。
マーティン・シェップICRC事業局長は、「私たちには、紛争やその他暴力事態下にある人々をよりよく保護するために、デジタル変革がもたらす機会を倫理に基づき、また責任をもって活用する義務があります」と語ります。「ルクセンブルク政府が新設された代表部を支援してくださるだけでなく、人道支援組織が支援を実施する上で不可欠なツールであるサイバー空間の研究を推し進め、活用して行くことの重要さを理解してくださることに対して、ICRCより感謝を申し上げます」。
人道支援組織はサイバー空間上の問題にこれまで以上に投資する必要があることを浮き彫りにするような出来事が、最近複数発生しました。例えば、ICRCが公式発表したように、今年の1月には全世界で50 万人分を超える人道関連の個人情報を保存したICRC のサーバーが、高度なサイバー攻撃を受けてハッキングされました。武力紛争下でのサイバー攻撃は、現実のものとなりつつあります。軍のサイバー能力の開発を推し進める国家が増え続けていることに加えて、現実の世界・サイバー空間上を問わず、人道支援組織やその支援する人々がニセの情報により被害を受ける例が多くなっています。
ICRCルクセンブルク代表部の開設の最大の目的は、デジタル技術によって人々がよりいっそうリスクにさらされることがないようにすることに加えて、デジタル技術を支援に効果的に活用することで紛争下の人々に良い結果をもたらすことです。同代表部は、安全に活用できるだけでなく、私たちICRCが掲げる中立や公平、独立、人道などの諸原則にデジタル空間でも適合する技術ソリューションの研究開発を推し進めていきます。
マーティン・シェップICRC事業局長
ファイヨ大臣は、「このたび、サイバー対策が主な業務のICRCルクセンブルク代表部が発足したことは、ルクセンブルクとICRCとの信頼に基づく協力関係を構築する上でも、人道セクター全体にとっても重要な節目となるでしょう」と今回の発表を締めくくり、同代表部の今後の活動に期待を寄せました。