2024年 国際人道法模擬裁判・ロールプレイ大会 国内予選の結果報告
赤十字国際委員会(ICRC)は、2024年度国際人道法(IHL)模擬裁判およびロールプレイ大会国内予選を、2024年12月1日(日)、7日(土)、8日(日)の3日間にわたって開催しました。日本におけるIHL模擬裁判大会は今回で15回目、ロールプレイ大会は5回目の開催となります。
本年度の大会では、情報戦、サイバー戦、宇宙戦、そして自律型兵器システム(AWS)の使用といった次世代の武力紛争におけるIHLの適用の課題について検討して頂きました。参加チームは、8月に発表された架空の国家内の武力紛争を想定した設定文を読み込み、周到な準備を進めて大会に臨みました。
模擬裁判大会は、前回同様に予選をオンライン、準決勝・決勝戦を早稲田大学にて対面で実施。参加チームは、検察側と弁護側に分かれて、国際法一般、特にIHLの知識を駆使しながら、英語で自らの弁論を展開しました。
全8チーム(愛知県立大学、宇都宮大学、京都大学、国際基督教大学、東京大学、立命館アジア太平洋大学、立命館大学、早稲田大学)の中から12月8日の準決勝に勝ち進んだのは京都大学、国際基督教大学、立命館アジア太平洋大学、立命館大学のチームでした。決勝へは、立命館アジア太平洋大学、立命館大学のチームが進出し、立命館ダービー決戦となりました。接戦ののち立命館アジア太平洋大学が優勝を果たし、連覇を達成しました。最優秀弁論賞は、同点で立命館大学チームのAryan IyerさんとDiva Fristika Lordyaさんに贈られました。最優秀書面賞は、検察・弁護側ともに京都大学チームが受賞しました。
ロールプレイ大会は、昨年と同様に、東京大学にて対面で開催しました。参加チームは、武力紛争の影響を受ける地域に取り残された民間人の保護、収容所で拘束された人々の保護の必要性など大会当日に与えられる複数のシナリオに臨機応変に対応し、IHL・人道原則に基づいたICRCの活動や軍の法務官に扮しIHLを軍の視点から考える体験をしました。
12月7日、全8チーム(宇都宮大学、大阪大学、群馬県立女子大学、東京大学、同志社大学、立命館アジア太平洋大学、立命館大学、早稲田大学)のうち、東京大学チームが優勝しました。
裁判官・審査員として、ICRC関係者に加えて以下の方々にご協力いただきました。(敬称略、五十音順)
- 岩田 真由/外務省
- 浦野 響/EY Japan
- 大野 鉄平/日本弁護士連合会
- 大橋 佳美/早稲田大学
- 小林 美奈/日本弁護士連合会
- 齋藤 雄介/海上自衛隊
- 鈴木 孟/立教大学
- 須田 洋平/須田洋平法律事務所
- 竹村 仁美/一橋大学
- 中村 日向子/千葉地方裁判所
- 中鳥 勇紀/クリフォードチャンス法律事務所
- 平野 和男/海上自衛隊
- 御簾納 直樹/航空自衛隊
- 山崎 智尋/外務省
- 山崎 武徳/過去大会参加者
- 吉田 曉永/早稲田大学
- LLOYD Preston/在日米陸軍
- LOWRY Christina/在日米陸軍
- ZEMAN Jackson/在日米海軍司令部
大会の運営には、早稲田大学教授の古谷修一氏、東京大学教授のキハラハント愛氏をはじめ、早稲田大学、東京大学、立命館アジア太平洋大学の学生・卒業生の皆さんにサポートしていただきました。
また、1日の模擬裁判大会の予選後には、サイドイベントも実施。ICRC所属の外科医としてガザへ派遣された経験のある安藤恒平医師から「ガザでの経験」について講話を行いました。7日のロールプレイ大会の後にも、ICRC職員で保護業務に従事している、淡路愛より自身の業務経験に基づきロールプレイのシナリオについての振り返りを行いました。
模擬裁判大会は今年で15回目となり、過去大会の参加者だった方が、立場を変えて、模擬裁判の裁判官や、運営のボランティアを務めてくださっています。また、5回目となるロールプレイ大会においても、過去に大会に優勝し、日本代表として国際大会に出場した方に、アクターとしてご協力頂きました。ICRCは、日本における学術界や実務家、若い世代を巻き込んだIHLのネットワーク拡大に、これからも貢献していきたいと考えています。私たちICRCの主催する模擬裁判・ロールプレイ大会は、「To take the law out of the books」をスローガンにしています。IHLに対する理解がより実践的で親しみやすいものになるよう、ICRC駐日代表部は、次回大会の開催にも引き続き意欲を注いでいきます。