アフガン制裁に関する安保理決議に「人道」の例外を
テロリストの資金調達の脅威と傾向および国連安全保障理事会(安保理)決議第2462号(2019年採択)の実施に関する安保理特別合同会合において、ニューヨークの国連本部にオブザーバーとして常駐するレティシア・クルトワICRC代表が声明を発表しました。(2021年11月19日)
ここにお集まりの皆さんが2021年末までに何らかの行動を起こすことが期待される中、本日お話する機会をいただき感謝申し上げます。
皆さん、
アフガニスタンの状況は悪化の一途を辿っています。銀行は機能不全で、給料は支払われていません。人々が収入源を失う一方で、基本的な食料のコストは急上昇しています。3人に1人は、次にいつ食事ができるかわかりません。総合的食料安全保障レベル分類(IPC)の最新報告によると、2021年11月から2022年3月にかけて2200万以上のアフガニスタン人が、危機的または緊急レベルの飢餓に瀕することが予想されます。
ICRCが支援している医療施設には、治療を必要とする子どもたちが押し寄せています。私たちは、特に医療分野において、基本的なサービスが崩壊するリスクを憂慮し、少しでも安定化が図れるよう、支援の拡大を検討しています。アフガニスタンの医療インフラは崩壊しつつあります。現金が不足しているため、医療機関は発電機や救急車を動かすための燃料費の支払い、患者への食事の提供、職員の給料の支払いができないのです。
現在、海外からの援助の是非が問われています。最高幹部を含む現役の指導者の多くをテロリストに指定する、アフガニスタンへの制裁措置に関する安保理決議第1988号 (以下、決議第1988号)に基づく法的義務に違反することにならないか、ドナー国が自らに問うているからです。つまり、決議第1988号と自国の法律に従って、救いの手を差し伸べることを拒否するか、ICRCなどの組織を通じて援助を行うか、という難しい選択の狭間に自分たちがいると感じているのです。民間のドナーや物資を供給する業者、銀行なども同様の問題に直面することでしょう。
私たちは、今日ここで皆さんに訴えます。公平な人道組織が純粋に人道的観点から活動できるよう、決議第1988号の対象から除外し、国内法にも反映するよう求めます。2010年のソマリアでの事態をきっかけに制裁措置に例外規定が設けられましたが、アフガニスタンについても同様に必要です。アフガニスタンにおける円滑な人道支援の実施は、すべての人の利益につながります。決議第1988号には、テロリストに指定されている個人が自費で医療を受けることを認める例外規定が設けられていますが、助けを必要としている何百万もの人々に支援を提供する組織のための例外規定は、今のところ見当たりません。
一方で、安保理決議第1267号は、数十カ国に存在する個人や団体を対象に、より幅広く影響を及ぼす措置となっています。従って、次回の改正では、人道的な活動をより保障する文言を盛り込むことが、これまで以上に重要となってきます。私たちは、今後の議論の中で、安保理の理事国に文言を提案する準備ができています。
最後に、制裁措置と人道支援の保障の二つに関しては、適切なバランスをとることが重要である、と強調して私のスピーチを締めくくりたいと思います。私たちが活動できるのも、国際社会が人道支援の実施に便宜を図り、政治的思惑に左右されない活動を担保してくれるからこそなのです。