宇宙空間での兵器使用による被害と国際人道法上の保護

お知らせ
2021.04.19

宇宙時代の幕開け以来、宇宙に打ち上げられた人工衛星をはじめとした人工物は、軍事目的でも使用されてきました。ですが、宇宙空間における軍事化が進めば、宇宙を舞台に戦闘が起きる可能性が高まり、そうなれば地球上で暮らす私たちにも大きな影響が及ぶことが心配されます。

衛星電話を使う女性

カリブ海のハイチの首都、ポルトー・プランスのカネペ・ヴァート地区。ICRCはテントで避難生活を送る人々のために、家族との連絡回復支援を提供。衛星電話を利用して、家族に無事を知らせることができるサービスです。
©Marko Kokic/ICRC

宇宙空間で兵器が使用されれば、それが重量やスピードを破壊力に変える運動エネルギー兵器であろうがなかろうが、またその使用が宇宙からなのか、地上からなのかに関係なく、地球上の私たちに甚大な被害が及ぶ可能性があります。なぜなら、宇宙空間にある人工衛星などの物体を利用して提供されるサービスが、人々の生活のあらゆる場面に浸透しているからです。ということは、そうした人工物が攻撃された場合にもたらされる被害は、人道上の問題として捉えることができます。

赤十字国際委員会(ICRC)は、その人道上の使命と専門的知見に基づき、国連総会決議75/36で取り上げられたこうした課題についてのポジション・ペーパーを作成し、国連事務総長に提出しました。

ICRCの見解や立場を記したポジション・ペーパーには、以下の内容を盛り込んでいます。

  • 宇宙空間で兵器を使用した場合、どのような人道上の被害がもたらされるか。
  • 特に宇宙条約や国連憲章、国際人道法(特定の武器や戦闘の手段・方法の使用を規制・禁止する規定を有する)などの国際法が、兵器を使用することに対してどのような制限を課しているか。
  • 結論と各国家に向けた勧告

今後は、一国内または多国間における議論やその過程において、以下の認識を共有することを提言します。

  • 宇宙空間で兵器を使用すれば、地球上で暮らす民間人に多大な人道上の被害がもたらされる懸念がある。
  • 国際人道法の諸規則は、交戦国がどのような戦闘の手段・方法を選ぶかについて制限を課していて、それは宇宙空間にも適用される。なお、国際人道法が適用されるからといって、宇宙空間における軍事化や戦闘が合法化される訳でも、武力行使が奨励・正当化される訳でもない。