想定される「国家による宇宙システムに対する脅威に関する責任ある行動の規範、規則及び原則」に関する予備的勧告
赤十字国際委員会(ICRC)は、「責任ある行動の規範、規則及び原則を通じた宇宙における脅威の低減」に関するオープン・エンド作業部会にワーキングペーパーを提出しました。
このワーキングペーパーは、国連総会決議(76/231)に基づいて招集された「責任ある行動の規範、規則及び原則を通じた宇宙における脅威の低減」に関するオープン・エンド作業部会に対して、ICRCがその人道的使命と任務に則って、「(必要に応じて、宇宙における軍備競争の防止などに関する法的拘束力のある文書の交渉にいかに貢献するかを含む)国家による宇宙システムに対する脅威に関する責任ある行動の規範、規則及び原則」に関する5つの予備的勧告を提示するものです。
宇宙空間におけるまたは宇宙空間に関連した軍事行動は、それが物理的な手段であろうとなかろうと、法の空白地帯で行われることはなく、既存の国際法によって制限されます。よって、国際人道法など、既存の国際法による保護や制限を再認識することは、オープン・エンド作業部会の任務を果たす上で極めて重要です。責任ある宇宙での行動の規範の策定に関する勧告はすべて、既存の法的枠組みに合致していることに加えて、こうした枠組みを基盤とし、強化するものでなければならないからです。
宇宙空間におけるまたは宇宙空間に関連した武器の使用やその他の軍事作戦が、地上の民間人に及ぼし得る人的被害をICRCは何よりも懸念しています。規範の策定に関するすべての議論が人道上の配慮に基づいて行われる必要があります。だからこそ、ICRCの予備的勧告は、宇宙システムに対する脅威がもたらす民間人への被害のリスクを最小化するための措置に焦点を当てています。しかし、本来であれば、勧告の内容は平時から既に実施されているべきものです。
ICRCの5つの予備的勧告:
勧告1:国家は、必要不可欠な民間サービスの提供や国際法により保護される人・物を保護し、機能させるために必要な宇宙システムの妨害や損傷、破壊または機能停止を意図して、またはそうした事態を予測していながら、軍事作戦やその他の活動を実施または支援してはなりません。
勧告2:国家はできる限り常に、(衛星、通信回線および地上局を含む)宇宙システムの軍事利用とその民間利用を区別する必要があります。必要不可欠な民間サービスの提供や国際法により保護される人・物を保護し、機能させるために必要な宇宙システムに関しては、特にそうすべきです。
勧告3:国家は、宇宙における軍事作戦の影響から保護すべき、自国の管轄または管理下にある宇宙システムを識別や登録、印付け、公表などの方法で明示する必要があります。
勧告4:国家は、宇宙ゴミの発生を意図して、またはその発生を予測していながら、物理的な対宇宙空間能力の開発や試験、利用、または宇宙システムに危害を加えるその他の作戦の実施をすべきではありません。
勧告5:国家は、武力紛争やその他の緊急事態下では、人道支援や緊急援助のための衛星サービスの回復力を高めるよう協力する必要があります。