イベントリポート オンライントーク:混迷深まるアフガニスタンの今~現地とつなぎ、最新の人道ニーズを知る

イベント
2021.11.15

今年8月にアフガニスタンで起きた政変をきっかけに、岐路に立つ同国への国際支援。40年にわたる戦争でどん底に追い詰められた現地の人々は、情勢不安やコロナ禍、干ばつ、経済制裁でさらに苦境に追い込まれ、外からの支援なくしては命をつないでいけない状況に陥っています。

こうした現状を受けて、現地に残って人道支援を続けている赤十字国際委員会(ICRC)と日本赤十字社は、ジャーナリストの国谷裕子氏をモデレーターに据えて、オンライントークイベント「混迷深まるアフガニスタンの今~現地とつなぎ、最新の人道ニーズを知る」を10月2日に開催しました。

アフガニスタンパート、日本パートともに、オンライン視聴されていた参加者からの質問が数多く寄せられ、教育や医療、食料調達など実情から、アフガニスタンの将来を憂う声が寄せられました。詳しくは、こちらのイベント動画をご覧ください。

イベント要旨:

冒頭でモデレーターの国谷氏がアフガニスタンの紛争の歴史を振り返った後、カブール陥落以降の最新の情勢を紹介。日本の私たちに何ができるのかについて一緒に考えていきたい、と参加者に呼びかけました。

続いて、ビデオ出演した外務省国際協力局の植野篤志局長は、現在アフガニスタンで最も必要とされているのが人道支援だとしたうえで、日本政府が約71億円の緊急無償資金協力を決めたことに言及。日本政府として、全てのアフガニスタン人の生命と財産の保護、社会の秩序の回復、基本的人権、特に女性の権利の保護と向上、多様な民族と宗派を含む公設的な政治プロセスが担保される国づくりをタリバンに対して要求し、今後も他の支援国や国際機関と協力してこの要求を続けていく意向を表明しました。(外務省は本イベント後の10月26日、緊急無償資金協力71億円のうち、ICRCの人道支援に約14億円を充てることを発表

アフガニスタンの首都カブールで働くICRCスタッフとのトークセッションでは、首都陥落後の現地の雰囲気や人道ニーズなど最新の状況を伝えてもらいました。

カブールで30年以上リハビリ事業に従事している、イタリア人理学療法士のアルベルト・カイロは、不安に包まれた人々の暮らしぶりについて「音楽も車の渋滞もなくなった。夜は何一つ音が聞こえない。経済はほぼ破綻していて、人々の活気は失われてしまった」と報告。また、「現金が足りず、銀行に行っても一週間で二万円ちょっとしか引き出せない。公務員の給料も払えていない。人々はこの先どう暮らしていったらいいのか?今のところはみんなで支え合っているが、それも長くは続かない。冬に向かうなか、いつこの苦難から抜けられるのか全くみえない」と危機感をあらわにしました。

カイロの同僚でアフガニスタン人のシュクルラー・ジーラックは、職を失った兄弟を含め、大家族の生計を一手に担っていると言います。自国の喫緊のニーズに関しては、食料の緊急支援に加えて「薬や、マイナス15度にもなる冬に備えて避難民のためのシェルター、そして暖を取るための燃料や薪も必要」と語りました。そのうえで、「私たちにも希望を持つ権利がある。将来は暗澹としているが、国際社会がアフガニスタンを忘れないでいれば、唯一そこに希望を見出すことができる。90年代に戻らないように、国際社会や影響力のある国が開発や発展を支えて、平和を構築できるよう手助けして欲しい」と訴えました。

日本人スピーカーとのパネルディスカッションでは、国際社会や日本がアフガニスタンのために何ができるのか、今後の支援について考察。田中浩一郎慶応大学教授は、日本が人道支援団体を後押しして、現地の人々を助けると同時にタリバンに変革を促すことが重要だと語り、同国が安定した政権によって運営され、自国民の健康と福祉、差別を行うことなく平和を追及するということが、長期的に見てサステイナブルな解決策だとの見解を示しました。

日本のNGOで、現地の医療や灌漑事業を担っているペシャワール会の藤田千代子さんは、一番の問題はお金が滞っていることで、限られた現金調達では薬の購入がやっと。用水路建設にまで回せずに灌漑事業が止まっているが、種まきの時期までには何とか再開したい、と報告。「人類が生き残るには相互扶助、助け合いしかない」ことから、日本人に引き続き関心を持ってもらうことが大事だと語りました。

また、直前までICRCカンダハール地域事務所の副代表を務めていた藪﨑拡子は、日本政府の緊急無償資金協力や、日本赤十字社が現在募っているアフガニスタン救援金は、現地の政府を通さずに直接自分たちの活動に充てられると説明。中立・独立・公平を掲げる赤十字として、引き続きタリバンと対話する一方で、現地職員の育成や女性の参画も継続して進めていく姿勢を明らかにしました。

パネルディスカッションを終えて、国谷氏は、「世界中の人たちに支えられないと、アフガニスタンの人々の苦境は改善されない」とし、政治的な難しさもあるが、それ以上に人道支援の必要性をひしひしと実感した、と語りました。

イベントの最後に、ICRC駐日代表のレジス・サビオが挨拶。「私たちは今、コロナ禍や気候変動、紛争など、人道的な危機に瀕していている」としたうえで、政治的な議論とは別のところで、人類愛や人道を尊重しなければならない、と訴えました。また、「コロナ禍で困難に直面していても、日本には結束する力があると実感している」と述べ、助けを必要としている人に力を貸すことができる立場にいる私たちは、アフガニスタンの人々を忘れないことで現地に希望を与え、活気づけることができる、と締めくくりました。

協力:
株式会社 LIFE.14 (オンラインオペレーション)
NHKグローバルメディアサービス(通訳サービス)
古山 真紀子さん(同時通訳)
宮本 紀子さん (同時通訳)

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