6月11日公開!「戦争と生きる力プログラム」:ショートショート フィルムフェスティバル & アジア2021
米国アカデミー賞が公認する国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」(SSFF&ASIA)で毎年上映される「戦争と生きる力プログラムsupported by 赤十字」。今年は、6月11日からスタートします。
実話ベースのドラマやドキュメンタリーに加えて、アニメーションやコメディータッチの作品など、世界各地から届いた選りすぐりの短編映画10作品に、国際的な賞を受賞したICRC制作の2作品を合わせて、計12作品を上映します。会場は昨年同様、コロナ禍を受けてSSFF&ASIAのオンライン会場で、6月30日まで公開されます。
※視聴リンク:https://shortshorts.org/2021/ja/wp/
今年は、こちらのウェブページの作品欄に加えて、SNSでもICRC駐日代表部のスタッフによるレビューを添えています。
※ICRC駐日代表部ツイッター:https://twitter.com/ICRC_jp
※ICRC駐日代表部フェイスブック:https://www.facebook.com/ICRC.jp/
鑑賞された後の皆さんのご意見、ご感想もお待ちしています。奮って上記SNSまでお寄せください。
作品紹介
【恐怖の先に】
Juan Ting Jian /00:05:01/台湾/アニメーション/2020
戦争で壊滅した町に暮らす少年。彼にだけ見える銅線は、街中に張り巡らされ、触れるだけでさまざまなものを奪っていく。少年はその銅線がもたらす悲劇を目の当たりにして、戦争が落とした暗い影とフラッシュバックに怯え、おののく。
ICRC駐日代表部スタッフ レビュー
「戦争と生きる力」のラインナップ選考を担当しているのですが、この作品を視聴し終わった瞬間、是非入れたい!と思いました。 音楽も含め、映画の雰囲気から「鬼滅の刃」を連想させ、作品の中に出てくる“糸”も、那田蜘蛛山を思わせるような、、、(もちろん画質やタッチは全く異なりますが)。いつの時代であれ、現実/空想の出来事であれ、少年・少女が闘い、罪のない人たちが犠牲になることは本当に虚しく、あってはならないことだな、とつくづく感じます。短編映画の場合、作品の中ですべてが語られないことが多いので、見終わってから「これ、どういうこと?」「何を伝えたかったんだろう?」というものも少なからずあります。見ている人の想像力や感受性、事前知識によって、結末や作品に託されたメッセージの捉え方は人それぞれです。この作品は、アニメということもあり、戦争の悲惨さを身をもって知らない私でもその世界に入り込め、メッセージを感じ取ることができました。
【奪われる魂】
Chen-Wen Lo /00:16:01/ドラマ/2019
2013年、ミャンマー。脱走しようとして失敗した子ども兵士の兄妹が主人公で、実話に基づいている。12歳の妹は、一緒に逃亡を図った兄を自らの手で殺すか、共に死を待つか、究極の選択を迫られる。
ICRC駐日代表部スタッフ レビュー
子どもたちは最も傷つきやすい存在。周囲の大人はそのことを認識して接する必要があります。子どもたちの切実な願いは、学校に行き、友達と遊び、未来を手にし、何も恐れることなく生きること。それを大人たちがきちんと守ってやり、世間の関心を子どもたちに向けさせなければなりません。しかし残念なことに、現実はこのショートフィルムにあるように世界中の多くの子どもたちが厳しい状況のなかで生活しています。だからこそ、私たちは変化をもたらすために立ち上がる必要があるのではないでしょうか。
【老いたネズミ】
Sebastián Torres Greene /00:05:56/アメリカ/ドラマ/2021
かつて戦場カメラマンだった男性は、予期せぬ来客を迎えたことで、過去の自身の作品の”正義”を問う。
ICRC駐日代表部スタッフ レビュー
本作品は約6分という短さに関わらず、私たちに「正義」とは何か考えさせる作品です。かつて戦場カメラマンだった主人公の男性が葛藤する「正義」は戦場で活動するカメラマンや報道関係者のみならず、私たち人道支援に従事するスタッフも一度は通る「悔しさ」に通ずるものがあると思いました。私は初めて人道支援の現場に行ったとき、「自分の無力さ」と「焦り」から、胸が締め付けられ眠れない日々を過ごしました。当たり前ですが、戦場カメラマンにしろ、エイドワーカーにしろ、一人の人間にできることは限られています。だからこそ、現場にいる自分は何をすべきなのか、被害にあった人々とどう接するべきなのか、自分自身に問いかけ、日夜苦悶します。本作品は、答えのない「正義」について改めて考えさせられる作品です。
【マドモアゼル ピジョンへの手紙】
Alexandra Myotte /00:14:00/カナダ/アニメーション/2020
第一次世界大戦下の1917年。一兵卒のペパンは、想いを寄せるピジョン嬢に戦地から毎日手紙を書くと誓う(ピジョンは日本語で「鳩」の意)。厳しい状況下で彼は何とか必死に約束を果たそうとするが・・・。心が求めているものと、心が必要としているものは必ずしも一致しない、というコメディータッチの切ない物語。
ICRC駐日代表部スタッフ レビュー
「戦争」という厳しい状況下の様子、そして「死」を目の当たりにした時に、真っ先に考えるのは何なのか。両親、子ども、そして愛する人、メッセージを届けようとする強い思いと必死の試みを通じ、大事な人との絆についても考えさせられる作品でした。実は映画で戦闘の残虐なシーンを見るのは苦手なのですが、アニメーションを使い、コメディータッチで描かれているので、最後まで見ることができました。
【ヘブロンでの任務】
Rona Segal /00:23:20/イスラエル/ノンフィクション/2020
イスラエルでは18歳になると軍隊への入隊が可能となり、入隊後2、3ヵ月で占領地パレスチナの人々を監視する役目を命じられる。元兵士6人が、ヨルダン川西岸地区で最も不安定なヘブロンでの任務を語る。
ICRC駐日代表部スタッフ レビュー
今もなお続く、パレスチナ人とイスラエル人の対立。劇中ではイスラエル国防軍の元兵士6人が、ヨルダン川西岸地区で最も不安定な地域「ヘブロン」での任務について語っています。キリスト教、イスラーム、ユダヤ教の祖「アブラハム」の墓が位置する聖地であると共に、対立によって多くの犠牲者が出ているヘブロンで彼らが経験した任務。その時のことを「思い出したくない」と語る彼らの証言は、対立の果てに待ち受ける“癒えることのない傷”の存在を教えてくれているように感じます。日本に生きる私たちは、馴染みがないからと無関心に陥ることなく、フィルムを通して、ヘブロンでの対立に目を向けることができます。
【スタンブルック】
Óscar Bernàcer /00:19:42/スペイン/ドラマ/2020
1939年、スペインの港アリカンテで積荷の到着を待っているスタンブルック号の船長と乗組員たち。内戦後期のカオスの中、同じ港には共和国政府が手配した船の到着を待ち、国外へ脱出しようとする何千もの人々が身を寄せ合っていた。
ICRC駐日代表部スタッフ レビュー
20分弱のこの作品は、1本というより1幕という数え方が相応しいと感じました。この幕が始まる前にどんな物語があったのか、次の幕は、誰が主人公で、どんな終わりを迎えうるのか――己の想像力を手掛かりに作品の世界を拡げよ、と制作者からバトンを渡されたような気持ちになりました。作中「もう一度読め、新しい発見があるから」と本を手渡す父親の言葉は、まさしく私たち観客への呼びかけでしょう。戦争をテーマにした作品が決して心弾むようなものではないこと、絶望と悲哀に満ちたものであることは、観る前からわかっていました。それでもなお、私たちは何度でも立ち返らなければなりません。戦争が人間の良心にどんな苦しみをもたらすかを、知るために。
【管理人】
Roland Puknat /00:17:42/ドイツ/ドラマ/2020
1930年代、独ハンブルク市最大の美術館で、前衛芸術家アニタ・リーの作品がナチスに没収されようとしていた。管理人のヴィルヘルム・ヴェルナーは、作品を守るために自らの命を危険にさらす。実話に基づく物語。
ICRC駐日代表部スタッフ レビュー
本作品は、ユダヤ人迫害が大変厳しかった時代のドイツの実話です。全体的に暗いムードが漂っていますが、アート(絵画)が人々を動かし、時として思いがけない結果をもたらすことがあることを教えてくれます。広島の原爆についても、高校生が絵画で次世代に伝えていくという取り組みをしていますが、そういった試みにも思いを馳せると同時に、アートの持つ力を再認識させてくれます。
【フィルム巻11004番】
Mirabell Fréville /00:19:00/フランス/ノンフィクション/2020
原爆投下から8ヵ月後の1946年、米軍の撮影班が戦後日本のドキュメンタリーを製作。広島と長崎の様子を写した19分のフィルム巻「11004」は、核兵器史上初めて検閲が行われた事実をもあばいている。
ICRC駐日代表部スタッフ レビュー
広島・長崎に核兵器が投下された直後の1946年、アメリカ陸軍の撮影チームが敗戦した日本の実情を記録しました。その際に撮影されたフィルム巻11004は、36年間も最高機密に分類されていました。この短編映画は、核兵器が日本人に与えた影響について、フィルム巻11004の要素を用いて、核兵器による破壊に焦点を当てています。この映画の重要な点は、1945年にアメリカが投下した核兵器が罪のない一般市民に与える影響に関する検閲を暴露していることです。当時のプロパガンダや検閲により、多くのヒバクシャが自分に何が起こっているのか、病気の原因は何なのかを理解できなかったことを映し出しています。本作品は、戦争が人々に何をもたらすのか、その長期的な影響を改めて考えさせます。
【天空の下で】
Gustavo Milan /00:17:04/ブラジル/ドラマ/2020
若くして出産を経験したマルタは、ベネズエラから移住するためブラジルに向かっていた。道中、赤ん坊を抱えて困っている若い夫婦に出会う。マルタが母乳を与えたことによって新たに紡がれていく運命の糸。
ICRC駐日代表部スタッフ レビュー
この映画の舞台となるベネズエラでは、2014年以降、政治・経済・社会の情勢が悪化し、暴力が蔓延しています。主人公のマルタのように国外へ出ることを余儀なくされた人の数は、国民の6人に1人に上ります。この映画で描かれているのは、そうした状況下で女性たちが置かれた立場の弱さと、それでも家族や周りの人を守りながら生きようとする強さです。過酷な状況下でも、優しさと勇気をもって行動するマルタの姿は、一人ひとりの心がけ次第で女性の置かれた状況は変わると訴え、私たちに行動を促しているように思えました。重いテーマを描きながらも、映像の美しさが際立つ作品でもありました。
【ゴールド(Gold)】
Abbe Hassan/18:17/スウェーデン/フィクション/2018
アマルは戦中のシリアに姉妹と住んでいる。水と食料が不足している中、散歩道で金の欠片を見つける。するとまわりが自分のものだと名乗りだし…
ICRC駐日代表部スタッフ レビュー
「戦争」や「紛争」は、民族・宗教・資源・政治・領土などの様々な原因が複雑に重なって起こると考えられています。なぜ人間は、文明がこれほどまで発展しても「戦争」や「紛争」を無くすことができないのでしょう?この作品は「所有」という概念が今まで築いてきた信頼や人間関係を180度変えてしまうという事実を見事に描写しています。個体間における所有物の取り合いをめぐる争いと、集団間で大規模に繰り広げられる争い(戦争)との対比を感じ、教訓の一つとしたいと感じました。
【HOPE(希望~彼女の命を救えなかった理由)】
赤十字国際委員会(ICRC)がHealth Care in Danger ~危機に立つ医療活動~のグローバルキャンペーンの一環で制作したショートフィルム『希望:彼女の命を救えなかった理由』。世界最大規模の広告の祭典、カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルのフィルムクラフト部門でグランプリを受賞。
ICRC駐日代表部スタッフ レビュー
作品の視聴後、喪失されつつある命がもたらす圧倒的な絶望感と、現在のメディアで触れることができなくなった痛切な痛みが残りました。そして映画は将来への伏線無く終わります。多くの視聴者に対して、この映画は医療機関への攻撃という不条理な状況へのアンチテーゼとなり、またそれ以上に武力紛争がもたらす悲劇を訴えています。HOPEというタイトルは消えた希望と、敢えて言うならば視聴者の行動に希望を抱き、両者を対峙させていると信じたいと思います。
【NO LIMITS】 南スーダン車いすバスケットボールチーム
南スーダンで発足されて間もない車いすバスケットボールチームのコーチを務める二人のドキュメンタリー作品。Webby Awards 2020ビデオ部門で、最優秀スポーツ作品賞を受賞。
ICRC駐日代表部スタッフ レビュー
あと一歩踏み出す勇気がもらいたい人に見てほしい作品です。人の命というのは等しく尊いものですが、その命が生まれる環境が全て等しいとは限りません。自分を取り巻く環境が過酷なものだったのにもかかわらず、車いすバスケットボールという熱中できるものを見つけたマラット・ウェイさん。最初は自分のために始めたことが、他の誰かのため、同じような境遇にいる人々の希望となっていきます。自分の未来を形作るのは自分自身であり、誰もが可能性に満ちている、そんなメッセージを私は受け取りました。見た後は、背中を押された気持ちになり、新しいことややりたいことに挑戦するエネルギーがわいてくるショートフィルムです。