ICRC公式サポート:映画「ユダヤ人を救った動物園~アントニーナが愛した命」が12月15日から全国公開
紛争下で人道支援を行う赤十字国際委員会(ICRC)は、2017年12月15日より全国公開される映画「ユダヤ人を救った動物園~アントニーナが愛した命」の公式サポーターを務めます。
オスカー・シンドラーや杉原千畝と同じように、ナチス統治下の悲惨な状況の中、自らの危険を冒して、ユダヤ人を動物園の檻に匿い、300名もの命を救った夫婦の感動の実話を映画化。今春にはイギリスやアメリカで大きな話題となりました。
公開に先立ち、11月17日に東京・有楽町のよみうりホールで行われた試写会後のトークイベントに、リン・シュレーダー駐日代表がゲストとして登壇。司会進行役の石岡史子氏(NPO法人ホロコースト教育資料センター代表)と映画を振り返りながら、戦争の狂気によって人間性が奪われる中にも存在する希望や、人類愛を貫くことの大切さを語りました。
作品全体を通しての印象について聞かれたシュレーダー代表は、戦争がいかに人々の平和な日常を一変させるかということ、そして主人公アントニーナの女性の視点から描かれた戦争の苦しみや生きていくことへの不安がひしひしと伝わってきた、と答えました。
また、何も知らないユダヤ人の子どもたちが収容所行きの電車に乗せられていく場面や、アントニーナと夫ヤンが再会を遂げる場面が特に記憶に残った、とシュレーダー代表。「戦争や紛争で離ればなれになった家族を再会させるICRCの活動とリンクしました」と、自身の現場での経験と重ねながら映画を鑑賞していたと語りました。
ホロコーストについて教育目的で講演も行っている石岡氏は、ナチス占領下のポーランドの様子について説明。ユダヤ人がかくまわれているのを知っているだけで即死刑になる恐怖統治が敷かれていたことや、ナチス占領によりポーランドにいた330万人いたユダヤ人のうち約90%が殺害されたことなどを紹介しました。
二人は、現在も世界で起きている紛争や、差別や偏見による非人道的な状況について触れ、本作品から学ぶべきことについて意見を交わしました。「一般の人が普通ではない状況に置かれ、友人を助けていくうちに、知らない人の命も救っていった。本人も気づかないうちに、多くの人にとって大きな存在になっていく姿が本作品で描かれていました」とシュレーダー代表。石岡氏は、「一人で行動を起こすのは非常に難しいことかもしれませんが、一歩を踏み出すことで協力者が現れるなど、大きな力を動かすことにつながるかもしれないという希望を感じることができます」と述べました。
大量虐殺やホロコーストは、戦争のルールを定めた「国際人道法」に違反する行為です。人道法は武力行為を規律し、戦闘による犠牲者を支援・保護することを定めています。シュレーダー代表は「今日の国際社会では、この法律の順守・尊重が足りていないのではと感じます」と警鐘を鳴らす一方で、「人道法にあまり縁のない平和な日本において、この作品を通じて戦争や平和について改めて考え、話し合って欲しい」と観客に語りかけました。
「ユダヤ人を救った動物園~アントニーナが愛した命」は、TOHOシネマズみゆき座他で公開予定です。
<ストーリー>
1939年、ポーランド・ワルシャワ。ヤンとアントニーナ夫妻は、ヨーロッパ最大の規模を誇るワルシャワ動物園を営んでいた。
アントニーナの日課は、毎朝、園内を自転車で巡り動物たちに声をかけること。
時には動物たちのお産を手伝うほど、献身的な愛を注いでいた。
しかしその年の秋には、ドイツがポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発。
動物園の存続も危うくなる中、夫のヤンから「この動物園を隠れ家にする」という驚くべき提案をされる。
人間も動物も、すべての生けるものへの深い愛情を持つアントニーナはすぐさまその言葉を受け入れた。
ヤンがゲットー(ユダヤ人の強制居住区域)に忍び込みユダヤ人たちを次々と救出し、動物園の檻に忍び込ませ、アントニーナは得意のピアノや温かい食事で、彼らの傷ついた心を癒していく。
時にそのピアノの音色は、「隠れて」「逃げて」などの合図になることもあった。
この“救出活動”がドイツ兵に見つかったら自分たちだけでなく我が子の命すら狙われてしまう。
夫のヤンが不在になることも多い中、アントニーナはひとり”隠れ家“を守り、決してひるむことなく果敢に立ち向かっていった。
いくつもの危険を冒しながら、いかにして300もの命を救ったのか—。
アカデミー賞作品賞他多くの賞レースにノミネートされた『ゼロ・ダーク・サーティ』でCIAの女性分析官を演じ、先日公開された『女神の見えざる手』でも主演を務めた、今ハリウッドで最も注目される女優ジェシカ・チャステインが、主人公アントニーナを演じます。