ICRCインターンシップ体験談 広報インターン志水 千紘さん

お知らせ
2023.08.15

©ICRC

応募のきっかけ

2023年3月で大学を卒業し、次のステップである大学院進学までの間にスキルアップを目指したいと思っていた時に、以前より興味のあったICRCの広報インターン募集の時期が運良く重なり、「今しかない」と思ったのが応募のきっかけでした。

学部では、国際経営学・ファイナンス分野を専攻する傍ら、関心のあった国際協力の分野を副専攻として選択していました。今回大学院で学ぶ予定の「人道支援・紛争対応」と唯一無二の人道支援組織であるICRCの活動は多くの部分で繋がっており、人道支援の現場を体験する絶好の機会だと捉え、応募させていただきました。

業務内容

広報活動といっても、ただICRCの活動を発信することだけが業務ではありません。発信する内容、目的、媒体やターゲットに合わせて文章・ビジュアルともに工夫を凝らすことや、日々刻々と変化する世界情勢と世界中のICRCの活動現場からあがってくる情報にアンテナを張り続け、必要に応じてICRC内外の各関係者へ情報を提供すること、そして日本を含む世界各国の各種メディアの窓口になることなど、多岐にわたります。

その中でも私は、毎月発行の電子版ニュースレターの作成や、駐日代表部公式TwitterFacebookの更新、動画コンテンツの字幕翻訳、年一回発行のニュースレター番外編の執筆などを担当させていただきました。専門用語はもちろん、中立で公平な独立した人道支援組織としての立場を守るため、細かな言い回しや表現の仕方に気を配る必要があります。もちろん、私だけでは気がつくことができない箇所が多々あり、広報職員の方々の力をお借りしながらコンテンツの作成にあたりました。

これらに加えて、ICRC駐日代表部が運営に関わるイベントに参加する大変貴重な機会を多くいただきました。なかでも私のインターン期間中は、4月に国境なき医師団と共催した人道援助コングレスにはじまり、6月のショートショートフィルムフェスティバル&アジア(SSFF & ASIA)、そして日本が今年共同議長国を務めたドナー・サポート・グループの年次会合に伴う幹部の来日、7月は第49回フローレンス・ナイチンゲール記章授賞式など、イベント参加に加えて非常に重要な場を垣間見ることができました。紛争地ではない日本において、ICRC駐日代表部が果たす役割とその重要性を実感しました。

特に印象に残っていること

ICRCの職員の皆さんの、活動に対する強い心持ちを感じる機会が多くあったことです。

世界情勢は一夜にして大きく状況が変わることも多く、私のインターン活動期間中も4月にスーダンで戦闘が激化したり、6月にはウクライナ・カホウカ水力発電所のダムが決壊したりと、緊急の対応を要する事態が発生しました。残念ながらこうした緊張した状況が毎月のように発生するなか、職員の皆さんは、ICRC内部のミーティングや外部の各界関係者との調整を含め、非常に短いスパンでアクションを起こします。私が所属していた広報部門でも、各種メディアの対応や情報収集、駐日代表部公式SNSでの継続的かつ最新の情報発信をする必要があり、迅速な対応が求められます。このような状況の中でも、スタッフの皆さんは「影響を受けた人々の苦しみを和らげる」ためにチーム一丸となり対応にあたられていました。

また、6月には本部のあるスイス・ジュネーブよりミリアナ・スポリアリッチICRC総裁をはじめとする幹部が、ドナー・サポート・グループの年次会合出席のため訪日し、私もスポリアリッチ総裁と直接お話しをする機会がありました。特に印象的だったのは、ICRC初の女性総裁として組織を率いることへの覚悟や、いち母親としてこの分野での仕事を続けることに対する姿勢でした。そして、今回の来日に関する駐日代表部の尽力に対して、職員ひとり一人と握手をしながら「ありがとう」と感謝を述べていた姿も印象に残っています。

駐日代表部スタッフと話すスポリアリッチICRC総裁 🄫ICRC

このほかにも、業務の過程で、ジュネーブ本部をはじめとする世界各地にある他の代表部のスタッフの方々と連絡を取ることもありました。その際もインターンという立場に関係なく、真摯に、そして丁寧に対応してくださりました。

ICRCスタッフの皆さんのこのような姿から、ICRCの活動に対する強い覚悟と誇りを感じ取ることができ、私自身もその活動にインターンとして関わらせていただけたことをとても光栄に思っています。

インターン期間を振り返って

先述のように、私は学部時代に営利ビジネス関連の勉強をしていたため、周りに人道支援・国際協力という道を選択する仲間がいないのはもちろんのこと、「どうしてそんな道を選択するのか?」という質問をよく受けます。人道支援・国際協力というと、武力紛争や武器攻撃のイメージが強く、時には命の危険すら伴う分野に飛び込むことを疑問に思う方も多いかもしれません。

正直に言うと、世界から紛争がなくなれば、ICRCの人道支援活動は必要なくなるのだと思います。しかし、今もどこかで発生し続ける紛争や、止むことのない暴力により理不尽にも傷つく人々に、手を差し伸べる存在が引き続き必要なのが現状です。それが、ICRCが160年間続けてきた活動であり、紛争や暴力のもと暮らす人々の苦しみを少しでも減らせるよう、駐日代表部で働く職員の皆さんが日本からその活動を支えているのです。ICRCでのインターンを通して、世界のどこかで苦しむ人々のために、みんなで立ち向かうこの活動の素晴らしさを感じると同時に、日本にいる私と同世代の人たちにこの現状とICRCの活動に目を向けて欲しいと思いました。

時に緊迫した状況に対応するICRCではありますが、世界各地で活動するスタッフの間には「チーム」「ファミリー」というあたたかい雰囲気があります。インターン終了時には、国や言語、立場を越えて「一緒に仕事ができて嬉しかったよ!」「大学院でも頑張ってね!」「何か助けが必要だったら連絡してね!」と声を掛けていただき、短い期間でもICRCのチームの一員として活動できたことを本当に嬉しく思っています。

今後のキャリア展望

今後も、人道支援・国際協力のエリアに携わっていきたいと考えています。

まずは、今年9月より進学予定のイギリスの大学院にて、人道支援と紛争対応を学ぶ予定です。ICRC駐日代表部でのインターンを通して学んだことを活かしながら、学術面と実践面の双方から学びを深めていきたいです。修士課程を修了後は、実務経験を積みながら、人道支援・国際協力の分野で様々な選択肢に挑戦していきたいです。

ICRCでのインターンシップを考えている人へ

人道支援や国際協力の分野において、経験の浅いうちから活躍させていただける場はそう多くありません。そんななか、ICRC駐日代表部のインターンシップでは、はじめから多様な業務に携わることができたり、チームの一員としてミーティングやイベントに参加し、人道支援組織の業務をこの目で確かめたりすることができます。また、世界中のスタッフとの関わりもあるため、国際的な組織で働くということを日本にいながら経験できるのも魅力の1つだと思います。将来、人道支援や国際協力の分野で活躍したい方にとっては、確実なキャリアステップの1つになると思います!