ICRC総裁 「人道支援は、政治的解決策の欠如を補うものではない」

お知らせ
2024.03.28
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以下は、2024年3月18日、赤十字国際委員会 (ICRC)のミリアナ・スポリアリッチ総裁が、欧州人道フォーラムでおこなったスピーチ。

武力紛争下にあるガザ、ウクライナ、スーダン、イエメン、コンゴ民主共和国などで私たちが目にするもの。それは、民間人の保護における世界的な規模の失敗と失策です。

各国は、国際人道法の下での義務、すなわちこの耐え難い苦痛を防止し、最小化するために、緊急に行動しなければなりません。

人道支援は、政治的解決策の欠如を補うものでも、そこから目をそらすものでもありません。欧州連合(EU)とその加盟国は、国際人道法と、人道の原則にのっとった活動を支えてくれています。

そこで私は今日皆さんに対して、次の3つの分野において集団的責任を果たし、政治的影響力を行使していただくことを強く求めます。

1. 国際人道法の尊重を政治的優先課題とする中で、人道と平等という普遍的価値を再確認すること

75年前、世界は、4つのジュネーブ条約作成のために結集し、戦時の暴力に制限を設けました。人類を犠牲にした勝利など、もはや選択肢としてあり得なくなったのです。ジュネーブ諸条約の文言と精神を、是非皆さんに再確認していただきたいと思います。

なぜなら、国際人道法がますます自分たちの思考や行動に好都合に解釈されることで、危険な前例を作ることになるからです。

戦っている当事者が戦争のルールを尊重し、人々の苦しみを軽減するよう、言葉だけでなく影響力を行使できる立場に皆さんはいます。そうすることが、皆さんの義務の一環でもあるのです。

2. たとえ世間の耳目が集まらない場所にいても、戦争や暴力の影響を受けるすべての人々が、人道支援と保護を受けられるようにすること

メディアの関心がまばらだったとしても、国として、紛争地への政治的関心を維持することは可能です。予測可能で柔軟性のある、確固とした資金援助を強化することもできるのではないでしょうか。そうすることで、公平で独立した人道支援も可能となります。

ICRCは、各国の赤十字社、赤新月社とともに、長期化するニーズに対応するため、今後も地元コミュニティーと一緒に力を尽くします。

3. 中立で独立した人道支援団体の活動を保護すること

赤十字運動のスタッフやボランティアは、かつてないほど危険な環境の下で活動しており、死傷者が出るほど嘆かわしい状況下に置かれています。また、デジタル空間を含め、人道支援はますます駆け引きの道具となり、信用を失っています。

私は、国家に、そして政治を司る方たちに、人道の原則に沿って中立・公平におこなわれる活動を公に支持し、ご支援いただきますようお願い申し上げます。

先の3つのステップを踏むことで、私たちは深まる分断を乗り越え、すべての人々に共通する“人間性”を土台として、平和を築き上げることができるのです。