国際人道法とは

国際人道法
2024.03.01

国際人道法は、武力紛争法の一部で、武力紛争において「やってはいけないこと」を定めています。「国際人権法」と同様、「国際人道法」という名の条約や法律があるわけではなく、戦闘の方法や手段を具体的に制限・禁止し、戦時下で保護する対象を明文化した条約や慣習法などさまざまな国際的なルールの総称です。

国際人道法(international humanitarian law:IHL)と呼ばれる国際的なルールには、上述した2つの側面があります。1つ目は、「ハーグ法」と呼ばれる交戦の方法や手段を制限するものです。化学兵器やダムダム弾などの使用を制限・禁止している条約などがこれに該当します。もう1つは、「ジュネーブ法」と呼ばれ、武力紛争の犠牲者の保護を目的としたものです。

ジュネーブ諸条約とは

1864年8月22日に初めてのジュネーブ条約(赤十字条約)が誕生し、時代の流れと共に戦争の形や被害の実相が変わってきたことで発展。現代の紛争においては、第二次世界大戦後にできた「1949年のジュネーブ四条約」、そしてそれを補完する形で作られた「1977年の2つの追加議定書」が適用されます。その目的は、負傷したり病気になった兵士、捕虜、武器を持たない民間人を守ることです。

4つの条約とは

  • 戦地における傷者および病者(第一条約)
  • 海上にある軍隊の傷者、病者および難船者(第二条約)
  • 捕虜(第三条約)
  • 戦時における文民(第四条約)

これら4つの条約に加えて、内戦の多発など武力紛争の在り方が多様化・複雑化したことを受け、1977年に2つの追加議定書が採択されました。

  • 第一追加議定書(国際的な武力紛争に適用)
  • 第二追加議定書(非国際的な武力紛争に適用)

ジュネーブ諸条約と2つの追加議定書は、計600近くの条文により構成されています。その根底に流れる精神は、主に次の7つのルールに要約することができます(参照:日本赤十字社発行『赤十字と国際人道法 普及のためのハンドブック』より)。

  1. 敵対行為に参加しないすべての人は、いかなる場合にも差別されず、人道的な待遇を受ける。
  2. 紛争当事者は、常に戦闘員と文民(民間人)を区別し、攻撃を軍事目標に限定し、文民とその財産を保護しなければならない。
  3. 投降し、敵対行為をやめた戦闘員は殺傷してはならない。
  4. 紛争当事者は、傷病者を収容、看護しなければならない。そのための医療要員、施設、機材等を保護する赤十字などの標章を尊重、保護する。
  5. 捕虜、被拘束者の生命、尊厳、人権の尊重と保護及び家族との通信、援助を受ける権利を保証する。
  6. 戦闘方法や武器の使用は無制限ではなく、不必要で過度な損害や殺傷をもたらす武器は使用してはならない。
  7. 公正な裁判を受ける権利及び拷問、体罰、残虐で人間性や尊厳を汚す扱いを受けない権利を保証する。

これらは、「収容・看護の原則」、「人道的な待遇の原則」、「区別の原則」、「均衡性の原則」、「不必要な苦痛の防止原則」、「予防措置の原則」とも呼ばれています。その中でも「区別」・「均衡性」・「予防」の3つは戦時の行き過ぎた行為、いわゆる“非人道的”な行為に歯止めをかける根本的な原則の一部となります。

国際人道法に関するよくある質問

Q. ジュネーブ諸条約には何カ国が参加していますか?

ジュネーブ諸条約には196カ国が批准・加入・承継という形で参加しています(2024年2月末時点) 。これは、国連に加盟している国よりも多く、ジュネーブ諸条約が「世界共通のルール」と言われる所以です。日本は、1953年4月にジュネーブ四条約へ加入し、2004年8月に2つの追加議定書に加入しています。

締約国一覧は外務省のホームページでも公開されています。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/k_jindo/ichiran.html


Q. 国際人道法に違反するとどうなるの?

ジュネーブ諸条約や2つの追加議定書に加入した国は、条約ごとに定められている義務に応じることが求められます。締約国が国内の法整備を行い、違反者を放置することなく処罰する仕組みを作るのもその一つです。そのため、日本では、2004年に「国際人道法の重大な違反行為に処罰する法律 」が制定されました。

また、ジュネーブ諸条約に基づき、国際事実調査委員会が設置されています。同委員会は、国際人道法の履行を確保・促進するために活動しています。締約国は、ジュネーブ諸条約の違反があると考えられる場合に、国際事実調査委員会に申し立てることができます。過去には、日本人もその委員を務めていました。

もし、ある国家が戦争犯罪を実行した個人を捜査し、訴追する意思または能力を有していない場合、それらの犯罪への処罰なしに放置されることがないようにするのは、国際社会の役割です。特に、ハーグにある国際刑事裁判所にその権限が与えられています。これに加えて、特定の紛争下での犯罪について訴追することを目的とした国際特別法廷(例えば、旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所やルワンダ国際刑事裁判所)が設置されることもあります。


Q. 赤十字国際委員会(ICRC)と国際人道法はどんな関係なの?

ICRCは、赤十字条約ともいわれるジュネーブ条約の起源でもあります。現在の国際人道法の主要な枠組みは、ICRCの創設者であるアンリー・デュナンの提唱により誕生しました。ジュネーブ諸条約において、その名前と役割が記されている唯一の機関で、国際人道法の“ガーディアン(守護者)”と呼ばれるのはそのためです。ICRCは、紛争の犠牲を予防・軽減するためにも紛争当事者や影響力を持つ人々に対して国際人道法の遵守を訴え、同時に「法の強化」や「現場でのモニタリング」、「法の普及」に務めています。

詳しくは別のページで解説しています。こちらをご覧ください。

ICRCの3つの役割
https://jp.icrc.org/about/humanity/role/


Q. 国際人道法上、使ってはいけない武器にはどのようなものがありますか?

国際人道法は、戦時の行き過ぎた行為、いわゆる“非人道的”な行為に歯止めをかけるため、特定の種類の兵器の使用を禁止、またはその使用に制限を課しています。生物兵器や化学兵器、対人地雷、クラスター弾、核兵器 などがそれに該当します。

詳しくはこちらをご覧ください。
https://jp.icrc.org/information/regulating-weapons-and-their-use/

Q. ジュネーブ諸条約の条文はどこで見られますか?

 
日本語:防衛省と外務省のウェブサイトで閲覧可能

(ジュネーブ条約・第一条約)https://www.mod.go.jp/j/presiding/treaty/geneva/geneva1.html
(ジュネーブ条約・第二条約)https://www.mod.go.jp/j/presiding/treaty/geneva/geneva2.html
(ジュネーブ条約・第三条約)https://www.mod.go.jp/j/presiding/treaty/geneva/geneva3.html
(ジュネーブ条約・第四条約)https://www.mod.go.jp/j/presiding/treaty/geneva/geneva4.html

(第一追加議定書)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/k_jindo/pdfs/giteisho_01.pdf

(第二追加議定書)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/k_jindo/pdfs/giteisho_02.pdf

英語:

(ジュネーブ諸条約)https://www.icrc.org/en/doc/assets/files/publications/icrc-002-0173.pdf
(第一追加議定書)https://ihl-databases.icrc.org/en/ihl-treaties/api-1977
(第二追加議定書)https://ihl-databases.icrc.org/en/ihl-treaties/apii-1977


Q. 国際人道法では、捕虜の保護はどのように規定されていますか?

捕虜の具体的定義や取り扱い、ICRCの役割はジュネーブ第三条約に規定されています。詳しくはこちらをご覧ください。

捕虜って何?~国際人道法の観点から知っておきたいこと
https://jp.icrc.org/information/prisoners-war-what-you-need-know/ 


Q. 国際人道法の問題や課題は何ですか?

武力紛争の多くが都市部で行われるようになったこと、ドローンの使用など戦闘技術の変遷や発展、支援対象者のニーズなどジュネーブ諸条約の課題は多岐にわたります。これらの問題はチャレンジレポート「国際人道法と近代の紛争における課題」でご覧いただけます。(一部、日本語訳あり)

赤十字の最新チャレンジリポート「国際人道法と近代の紛争における課題」
https://jp.icrc.org/information/translation_of_icrc_challenges_report/