フィリピン:マラウィの戦いから8年、平安な生活を阻害する未解決問題-避難民と行方不明者-

©ICRC
マニラ(ICRC)― フィリピン南部のマラウィ市には、紛争から8年が経った今も、避難生活を送り、行方不明の身内の安否がわからず、サポートも限られている中で、平穏な日常を取り戻す見通しがた立ない人たちがいます。
約8,200人が8年もの間、不十分な環境のなか、一時避難所であるはずのシェルターで生活する様子を目の当たりにして落胆しています。現在では家賃を払っていますが、常に安全な水を確保できるとは限らず、人びとの日常生活に計り知れない負担を強いています。
ヨハネス・ブルーワー、赤十字国際委員会(ICRC)駐マニラ代表
フィリピン政府は、最も被害の大きかった地域に公共インフラ施設を建設したり、マラウィ補償委員会を設立したりと多くの対策を講じてきました。しかし、受け取った補償金を不十分と主張する家族や、補償金受け取りの書類作成を負担に感じる人びとにとって、マイホームの再建は依然として遠い夢のままです。
ICRCは引き続き、国や地方自治体、特に最近の選挙で当選した公職者などに対して、当該地域の生活再建を急ぐ一方、一時避難所にいる人びとへの基本的なサービスの提供に協力を求めています。
ICRCはこれまで、マラウィの住民が安全な水を確保できるように支援してきました。被害が限定的だった地域では既に、いつでも飲料水にアクセスできるようになっています。政府当局がマラウィ市内に給水菅を完備することを私たちは期待しています。

マラウィの一時避難所に身を寄せ、安全な水を受け取るために並ぶ住民 ©ICRC
行方不明者はいまだ300名超
2017年以降、マラウィで起きた紛争によって人生が一変した人びとを私たちは支援してきました。今なお、愛する身内の安否がわからないまま、苦悩を抱え、不安な毎日を送っている人たちも多くいます。
ジュネーブ諸条約とその追加議定書にフィリピンも加入していて、そこには、行方不明者が発生することを防止する義務や説明義務が明記されています。
精神的な負担以外にも、消息不明で不在であることを証明する法的書類の入手や失踪宣告の法的手続きの難しさが、家族の大きな懸念材料としてたびたび取り沙汰されています。こうした、すべての行方不明に関わる持続的で構造的な問題が政府によって解決されれば、その家族は社会福祉サービスや年金、財産権にアクセスできるようになります。
2017年から2024年にかけて、ICRCは、こころのケア を提供すると共に、生計の自立事業を通じて400人以上の行方不明者の家族を支援してきました。マクバラ墓地とダリプーガ墓地の遺骨の身元確認のため、フィリピン警察の法医学グループに対して技術的な助言や能力開発、物資支援をおこなっています。
「待ちわびる家族に一刻も早く安否の知らせを届けるよう、フィリピン当局に要請しています。消息を明らかにし、既に亡くなっている場合は、その身元確認のために必要な措置を講じることが求められます。それが、家族の傷を癒し、信頼を構築する一助になり得るのです」とブルワーは述べました。

行方不明者の家族に寄り添うICRC保護要員 ©ICRC
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