ネパール:大規模な洪水を受けて現地で展開する人道支援

©ICRC
8月26日にネパールで発生した大規模な洪水により、数百人が命を落としました。ヌワコートやラスワなどでは人道ニーズが高まり続けています。犠牲者数が更新され続ける中、今も数千人が行方不明となっていて、たくさんの家族が離ればなれになっています。また、生活に欠かせないサービスを利用できないなど、多くの地域で人びとが厳しい状況に置かれています。
当局によると、9月10日時点で1,000人以上の遺体が収容され、5,000人以上が今も行方不明となっている一方、1万2,000人が救助されています。現在も捜索や救助活動が続いているため、これらの数字は今後も変わる可能性があります。
被災地へのアクセスは、今も大きな課題となっています。ラスワでは、道路や橋が被害を受けたことで、被災地への支援物資の輸送が遅れていて、歩いて行くことしかできない場所もあります。
また、亡くなった人びとの尊厳を守った適切な対応や、離ればなれになった家族の追跡調査、こころのケアが早急に必要とされています。今回の災害による影響は、インフラや経済、地域の発展など幅広い分野に及び、長期化することが予想されています。また、洪水によって被災した人びとや地域社会が抱える精神的な負担や心の傷は、救助や復旧が進んだ後も、長く残るとみられています。
現在、ネパール赤十字社を軸として、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)や私たち赤十字国際委員会(ICRC)などの人道支援団体がその活動を支えています。ICRCデリー地域代表部は、離散家族支援や法医学、管理部門の専門家を速やかに派遣するとともに、必要な物資を手配しました。ICRCは、専門知識や援助物資の提供に加えて、ネパール赤十字社と研修を受けたボランティアの活動を、主に二つの分野でサポートしています:
- 離散家族支援ネットワークを通じ、離ればなれになった家族や行方不明者の追跡調査および家族との再会
- 亡くなった人びとを処置する際の安全性の確保と、尊厳をもった対処
ネパール赤十字社とICRCは共同でヌワコートの避難所を訪れ、離ればなれになった家族のつながりを取り戻すための支援や、亡くなった人びとの尊厳を守るための対応をおこないました。病院の記録や行方不明者に関する情報などをもとに、ラスワやヌワコートの人びとや地域社会のニーズに対応しています。洪水の発生前にICRCが提供していた700枚の遺体袋も、現地で亡くなった人びとの尊厳を守り、安全に対応するために活用されています。発災後は、3,500枚以上を追加で届けました。
ICRCの専門家はこれまで、ネパール赤十字社の職員やボランティアと連携し、緊急時の備えや対応に関する研修を実施しています。また、緊急時の活動計画に離散家族支援を取り入れることをサポートするほか、現在も行方不明となっている人びとの安否確認や、亡くなった人びとへの適切な対応にも協力しています。さらに、行方不明者や亡くなった人びとに関する情報を適切に保管・共有できるよう、情報管理の面でも支援しています。こうした活動には、行方不明者の登録や捜索状況の管理、行方不明者や亡くなった人びとに関する情報の安全な取り扱いに必要な体制の強化も含まれます。
今年2月には、ICRCとネパール赤十字社は4日間にわたり、緊急時の備えと対応に関するワークショップを共催しました。そこで高められた緊急時の対応力が、今回の人道支援にも生かされています。ICRCが長年にわたって進めてきた準備と連携は、国境を越えた洪水対応にもつながりました。2026年7月にインドのアッサムで発生した洪水では、インド赤十字社とICRCが2014年以来初めて連携して対応しました。この経験を踏まえ、インド赤十字社は国内36の全支部に対し、ネパールで行方不明となっているインド国民とその家族の再会に向けた支援が必要であることを伝えました。
ヌワコートの一時避難所では、ネパール赤十字社の職員やボランティアが、行方不明となっている家族の安否確認につなげるため、必要な情報の登録を支援しています。こうした支援は、親や家族が行方不明となり、保護者と離ればなれになっている子どもたちも対象となっています。また、必要に応じて、ボランティアが家族や親族に電話をかける手助けもしています。
子どもをはじめ、家族と離ればなれになった人びとは、大きな精神的苦痛を抱えることがあります。ICRCは、人びとがどのような心理社会的支援を必要としているのかをより深く理解し、すでに行われている取り組みを支えるため、当局や人道支援に従事するパートナーと連携しています。大切な人を亡くした家族にとって、何が起きたのかを知り、亡くなった家族や親族の身元を確認し、適切な形で送り出すことは、立ち直っていくうえでとても大切です。また、安否がわからないまま漠然とした喪失感に伴う精神的な苦しみや悲しみを和らげることにもつながります。また、亡くなった人びとの尊厳を守りながら適切に対応するボランティアや専門職の人びとにも、心理的な支援が必要とされています。
加えてICRCは、人道的見地から法医学の専門知識を提供し、ネパール赤十字社や現地当局、病院などの関係機関が、亡くなった人びとの尊厳を守りながら適切に対応し、身元を確認できるよう支援しています。洪水の発生後、タナフン、ゴルカ、ムグリンなどで収容された100人以上の遺体や遺骨をめぐっては、現地当局や病院、ネパール警察、ネパール軍、ネパール赤十字社が連携して対応にあたっています。ポッカールでは、ICRCが西部地域病院の法医学部門を訪問し、死後検査を安全に実施できるよう、個人用防護具を提供しました。カトマンズでは、トリブバン大学教育病院の医学研究所にある法医学部門からの要請を受け、ICRCが死後検査に必要な物資を提供しました。
赤十字運動の一員としてネパール赤十字社や関係当局を支援しつつ、被災した地域の状況や人びとのニーズに応じた活動を展開していきます。



英語原文はこちら
赤十字運動の国内パートナーである日本赤十字社では、ネパールで発生した洪水による被災者を支援するため、「2026年ネパール洪水救援金」の受付をおこなっています。
詳細はこちら(外部サイトに飛びます)
皆様から寄せられた善意は、ICRCの現地の活動にも役立てられます。