パキスタン:内反足に負けない小さな一歩
「(先天性)内反足」とは、生まれた時に足の先が内側、もしくは下に向いていて、足の裏が変形する疾患です。足の裏をきちんと床につけることができず、歩行に問題が生じるだけでなく、さまざまな炎症を引き起こす要因にもなりえます。
この病気を治すためには、正しい治療方法に沿った早期治療が重要となります。世界中で何千もの子どもたちが患っている先天性の疾患ですが、早期発見で完治することができます。パキスタンでは、内反足を患った子どもの症例が毎年7000件近く報告されています。
赤十字国際委員会(ICRC)は、ペシャワールのレディ・リーディング病院にある「内反足クリニック」を支援しています。そこでは、足が変形してしまった子どもたちを無料で診察しています。
【モハメッド・カーン博士】 治療の目的は明快です。患者の子どもたちの足に完全な可動性を持たせること。しかし、治療には、両親の果たす役割が大きなカギとなります。医師の指示に従い、訓練をきちんと理解しなければなりません。クリニックでは、治療に向けてできることを行います。子どもの未来をより健康に、より幸せなものにするべく、医療チームと親が一丸となって取り組みます。
「アジワは数日前に初めての一歩を踏み出しました。その瞬間がいかに貴重か、特別だったか、言葉では言い尽くせません。以前は別の病院で不適切な処置を受けていただけに、アジワに歩行できる可能性が残っていたなんて、想像もしていなかったです。ペシャワールのレディ・リーディング病院のクリニックの存在を知れて、とても嬉しいです。内反足は治療可能であることを、もっと多くの人たちに伝えなければなりません」と語る父親。
治療には、全力であたることが求められます。マディーハは、変形矯正用の靴を履いています。その靴は、両親が二時間おきに脱がせ、足を運動させる必要があります。まだ赤ん坊のため、時々ぐずることもありますが、なだめるよう努めています。簡単な手術を乗り越え、7回の石膏ギブスの交換を経て、彼女の足の形に変化が見られ始めました。彼女が最初の一歩を踏み出す日を、私たちは楽しみにしています。
多くの内反足が重症ではない一方で、小さなナディアのように、治療がとても難しい場合もあります。彼女は4回のギブス装着後、貧血が悪化し、治療を中止しなければなりませんでした。通常、治療が途中で中断されると、足は裏が内側に向いた変形した状態に戻ってしまいます。しかし幸いにも、ナディアは、治療を再開するや、回復の兆しを見せはじめました。彼女の完治を私たちは願っています。
「息子が内反足だと分かったとき、私たちはすっかりうろたえてしまいました。幸運にも、最初に訪れた整形外科医がICRCが支援するレディ・リーディング病院内の内反足クリニックを紹介してくれました。治療を確実に受けられるようになったことに加え、ウバイドゥラ先生とナジマ先生のサポートと優しさが、私たちに希望を与えてくれました。彼らのおかげで、息子が将来、自由に歩いたり走りまわったりすることを想像できるようになりました。日に日に夢に近づいているのは、本当に素晴らしいことです。」