離散家族への支援

カンボジア
2018.01.31

毎年、何千もの家族が紛争や自然災害、移動によって離ればなれになっています。愛する家族との連絡が途絶え、居場所もつかめない、無事かどうかも分からなくなった時の苦しみは計り知れません。

赤十字国際委員会(ICRC)と各国赤十字・赤新月社は、行方不明者の居所を探し、親族と再び連絡を取り合えるようにするために世界中で活動しています。この活動には、家族の捜索、連絡回復、家族との再会、行方不明者の安否調査が含まれます。

カンボジアでは、離散家族の再会支援は成果を残してきています。数十年におよぶ内戦や爆撃、大量殺人、そして飢きんを経た後、約3万6000人が家族との再会を果たしています。

ブーン・オウアン・カムソック(左側の女性)は、カンボジア北西部に位置する片田舎の村の出身です。1974年、木炭を売るために彼女はタイを越境しました。クメール・ルージュが国境を封鎖した際、彼女はタイ側に捕まり家に戻ることができませんでした。以来、家族とは会えませんでした。写真は現在のブーン・オウアンと、

昨年、ブーン・オウアンに、知らない番号から電話がかかってきました。「電話にでて最初に聞こえた言葉が『娘よ、私はまだ生きているの』です。がくぜんとしました。母の声を思い出し、至福の、そして感謝の気持ちでいっぱいになりました。」長年にわたる分離、内戦、爆撃、そして領土支配の後、ブーン・オウアンは、家族をカンボジアに置いたままにしていました © Nic Dunlop/ICRC

カンボジアにいる家族を40年ぶりに訪問するために国境へ向かうブーン・オウアン © Nic Dunlop/ICRC

数十年ぶりに母親を訪問するため、幼少時代を過ごした家に到着。母親のクル・アートさん(77歳)に、伝統的な儀式であるお香とお金を贈呈 © Nic Dunlop/ICRC

姉妹が集まり、やがて兄弟も集まってきました。数分内に数人の若き、そして老いた親戚が集まり、年老いた女性に水をかけました。スロング・ピーと呼ばれる儀式です。過去に犯した罪を洗い流し、許しを乞い、お年寄りの健康を祈る意味があります © Nic Dunlop/ICRC

儀式の後、伝統的なクメールのスカーフで母親を乾かすブーン・オウアン。「幸せです。心配することは何もありません」と語る彼女は、見るからにほっとしています。「この時を40年以上も待っていました」 © Nic Dunlop/ICRC

ブーン・オウアンは、姉妹のリム・イアンと母親のクル・アートと一緒に、知りえなかった生活の家族写真を眺めます。避難と戦争に包まれた家族の歴史 © Nic Dunlop/ICRC

離ればなれだった生活を振り返りながらも、ブーン・オウアンは、自分の知りえない家族の生活に距離感を感じているのは明らかでした。彼女の家族は、クメール・ルージュによる恐怖と何年にもおよぶ紛争に耐えました。家族との再会は、その空白の時間や経験を埋めることはできませんが、それは、家族にとって大したことではありません。彼らは純粋に、ブーン・オウアンが元気で幸せにいることに安堵しています © Nic Dunlop/ICRC