イエメン:医療を受けられない女性や女児たち
サヌア(ICRC)―8年にわたり武力紛争が続くイエメンでは、暴力の横行や経済事情の悪化、そして医療やインフラへの打撃などにより、女性や女児は必要な医療を受けるのがますます難しくなってきています。さらに昨今、資金不足により人道支援組織が援助の縮小を余儀なくされていることが、こうした事態に追い打ちをかけています。
ユニセフの報告書によると、現在イエメンでは、熟練した医療従事者の立ち会いのもと出産できるケースは半数以下です。そのため、医療を受けられないことや、限られた医療しか受けられないことが原因で、妊娠中の合併症などにより、2時間に1人の母親と6人の新生児が亡くなっています。本来であれば、ほぼ確実に助かるはずだった命が失われているのです。
「先日の出産を生き延びることができたのは、奇跡としか言いようがありません」と語るナジャさんは、イエメン南端にある古都タイズ出身です。イエメン国内でも最も長く戦場であり続けてきたタイズでは、住民は疲弊しきっています。
自宅で出産し、合併症にかかりました。武力衝突の激化によって近くの医療施設はすべて閉鎖されていました。ですが、運よく、近くに住んでいた看護師が出産を手伝ってくれて、親子とも命を救われたのです。
ナジャさん
紛争が始まって以来、イエメンでは推定420万人が国内避難民となりました。そのうち73%が女性や子どもです。避難民となった女性や女児は、経済的・社会的にさらに弱い立場に置かれます。結果として、慢性疾患の治療のための十分な医療をはじめ、基本的なサービスへのアクセスが制限されます。
「耐え難い痛みです」と声を絞り出すのは、イエメン中部マアリブにあるスワイダ国内避難民キャンプで暮らすシングルマザーで、末期がん患者のモグニヤさんです。
南に数百キロも離れたムッカラのがんセンターで治療を受けるように言われました。ですが、治療の度に交通費を払うことも、長時間の移動に耐えることもできませんでした。今はただ、テントの中でじっと座ったまま、死が苦しみから解放してくれるのを待つばかりです。
モグニヤさん
イエメンでは現在、総人口3,050万人のおよそ3人に2人に当たる、2,010万人超が基本的な医療を受けることができていません。ただでさえ、イエメン国内で機能している医療施設はわずか51%しかないところ、暴力の横行が、患者が医療施設にたどりついて救命医療を受けるのを一層困難にしているのです。
「長引く紛争下で夫を失った女性は、特に地方に住んでいる場合、道中で暴力や性的被害を受けることを恐れて、医療を受けるために移動することをためらいがちになっています」と語るのは、赤十字国際委員会(ICRC)が支援する、イエメン南端の都市アデンにある公営の大規模透析センターの責任者を務めるナビハ・アフマドさんです。「ここ数年は、腎不全にかかった多くの女性患者、特に遠隔地に住む患者が、生きながらえるために必要な治療を受けるために定期的に通院することがかなわず、自宅で亡くなっています」。
「まさにその通りです」とこの話に共感を示すのは、アデンで暮らす教師のサイダさん(45歳)です。腎不全を患っていて、週に少なくとも2回の透析を必要とするサイダさんは、「暴力による事態が激化するたびに、家に留まって病気で死ぬか、銃撃戦に巻き込まれることを覚悟で最寄りの透析センターまで行くか、幾度となく究極の選択を迫られてきました」と語ります。
たとえ事態が落ち着いてるときでも、特に私たち女性が医療にアクセスするのは、決して容易なことではないのです。
サイダさん