ギニア:病気と恐怖のなか、闘い、生きる

ギニア
2015.03.19
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感染死者を埋葬するギニア赤十字社のボランティア

 

エボラ出血熱は、今もギニアの人々にとって辛い生活の一部です。感染予防や適切な埋葬、治療などの取り組みは一定の成果を上げていますが、隣国シエラレオネと同様に、新たな感染例の報告も続いています。エボラは伝染病として致死的な結果をもたらすだけでなく、経済や医療制度にも大きな影響を与えます。世帯主や首長を失った妻や子ども、コミュニティといった社会全体が、影響をじかに感じとっています。赤十字国際委員会(ICRC)ギニア代表部で首席代表を務めるヤン・ボンゾンが、これまでの成果や課題、この病気との闘いについて語ります。

 

現在のエボラの状況を教えてください。

状況はほぼ全土で改善しています。特にギニア南部のフォレスティール地方や中部では感染者数も減少しています。しかし、首都コナクリの一部やその周辺地域はまだ予断を許さない状況が続いており、3月以降も感染者数の増加が報告されています。

 

なぜ多くの策が取られているにも関わらず、このような事態になっているのでしょうか?

エボラに感染した人を特定することはときに難しく、そうした人が外を歩くことで周囲に感染が拡がります。また、誰と接触したかを判別することも難しく、特に首都コナクリや周辺地域で課題となっています。新しい感染者が報告される県の特徴は、コミュニティの中で少なからず躊躇があるということです。これが私たちのチームによる消毒や患者移送、安全の確保、尊厳に配慮した埋葬等の作業の遅延につながっています。

 

エボラはギニア社会にどのような影響を与えていますか?

社会の基本構造や経済に大きな影響を与えています。多くの家族やコミュニティが複数の構成員を失い、家族の支えを奪われています。医療制度に関しては、エボラ危機前から十分機能していませんでした。今後、この医療サービスと農業分野が、復興の最重要課題になると思います。

 

赤十字ボランティアの活動が脅かされたり、支援しているにも関わらず攻撃される事例が起きています。このような事態が起きているのはなぜでしょうか

一部の住民の間で、この新ウイルスに関する理解が不十分であったり、その存在自体を否定するような動きが見られ、これらが地域の伝統や信仰とも結びついています。こうした考え方が、赤十字ボランティアやエボラ危機下で闘っているメンバーに対する見方に突然変化をもたらしたのです。

 

ボランティアの本来の任務は、初期段階における建築物の消毒や、命を落とした人々の尊厳に配慮しながら安全にかつ埋葬することでした。ボランティアの数が2000人余りまで急激に増加したことから、彼らは苦しむ人々への支援部隊というよりも、「墓掘り人」という印象を地元住民に与えてしまいました。その結果、支援の手を差し伸べようとしていた人々からボランティアたちが攻撃されるというような事態が発生しています。

 

ギニア赤十字社とともに啓発キャンペーンを実施しているそうですが、成果は?

地元のラジオ局に働きかけ、私たちのメッセージを地域の言葉で放送してもらうという活動をしてきました。こうした地域のラジオ局は国の80%をカバーしています。ギニア・フォレスティエールを始めとする地域では良い反応を得ており、良い成果が出ています。しかし、啓発や予防キャンペーンが全ての問題を解決するわけではありません。影響を受けているコミュニティに対しより一層の働きかけが必要ですし、何よりこうした努力こそギニア赤十字社のボランティアが行っていることなのです。

 

近い将来、どういった困難があると予測されていますか?

主に、首都や人口密度の高い地域を含むエボラ流行地域においてウイルスを封じ、感染拡大を防ぐことが引き続き課題であると考えています。

 

ICRCはエボラとの闘いにおいてどのような役割を果たしていますか?

ギニアでは他のエボラ流行国同様に、ICRCは国際赤十字・赤新月運動の一員として病気と闘っています。私たちは危機の初期段階からギニア赤十字社と協力し、300人のボランティアの訓練にかかる物資や資金を援助し、どのように病気を防ぎ、家屋を消毒し、感染死者を埋葬するかという訓練も実施してきました。また治安上の観点から、病気によって生み出される恐怖や誤解にどのように対処すべきかについて、数百人のボランティアに対し訓練を行い、患者へのアクセスを広げる一方で彼ら自身の安全を守ることを教えています。

 

また私たちは収容所等での病気の蔓延を防ぐために、基本的な予防措置も構築しました。刑務所内に配置される医療従事者を増やし、被拘束者および当局に対し、病気の危険性や手を洗うなどの予防方法を啓発してきました。その成果もあり、現在のところギニアの収容所におけるエボラ感染例は一件も報告されていません。

 

これまでのギニアにおける国際赤十字運動の活動から、私たちは何を学ぶことができるでしょうか?

強調したいのは、今までもそうだったように、これからも何千ものボランティアが、エボラとの闘いの中で素晴らしい役割を担ってくれるということです。先日ギニア赤十字社のリーダーの一人が、こうしたボランティアは毎日最前線で自身の命を危険にさらしながらもコミュニティを助けようとしている、と話していました。実際に犠牲となったボランティアもいるのです。ギニア赤十字社のボランティアは、この伝染病の蔓延のなかで、1年にわたり必死に闘ってきたヒーローなのです。彼らこそが、尊敬と称賛に値する人たちなのです。

 

原文は本部サイト(英語)をご覧ください