セルビア:シリア難民の心のライフライン‐家族の連絡回復支援

セルビア
2015.09.24
セルビア北部の都市スボティツァにて。娘の写真を誇らしげに見せるイムティサル。愛娘との会話が、長きにわたる闘病生活の苦しみを和らげる©ICRC

セルビア北部の都市スボティツァにて。娘の写真を誇らしげに見せるイムティサル。愛娘との会話が、長きにわたる闘病生活の苦しみを和らげる©ICRC

 

シリア難民の一人イムティサルは、母国の戦火から逃れて苦難の連続の旅を続け、セルビアまでなんとか辿り着きました。しかし、交通事故で大けがを負って入院することになり、その上身ごもっていた子どもの命も失ってしまいました。シリアのダマスカスに残った彼女の家族は、イムティサルの消息が分からず不安で気が狂わんばかりでしたが、セルビア赤十字社とICRCの支援により、再び連絡を取り合うことができるようになりました。

 

ヘッドライトの光が暗闇に走るやいなや、甲高いブレーキの音に続いて、車が身体にぶつかる胸の悪くなるような音がしました。セルビア北部の車道で、スピード違反の車がイムティサルを跳ね、シリアからスイスまで4000キロの旅を遮ったのです。イムティサルは、ハンガリー国境近くの都市スボティツァの病院に救急搬送され、救命医療チームが腰骨と骨盤を修復。頭部の傷も治療して、なんとか一命をとりとめました。しかし悲しいことに、一カ月後に生まれる予定だった、お腹の子の命を救うことはできませんでした。

 

イムティサルが一命をとりとめたと知るやいなや、彼女と行動を共にしていた家族は、従兄が待っている目的地スイス・ベルンに向かいました。その中には彼女の二歳半になる娘もいました。彼女と一緒にシリアから逃れてきた家族は、イムティサルの状況を知っていましたが、故郷に残っている家族は何が起きたか知る術もなく、不安でたまりませんでした。

 

国際赤十字運動が家族の連絡回復に貢献

 

イムティサルの兄も、妹から連絡がない日々に心配を募らせていました。赤十字の支援の話を聞いて、彼はダマスカスのICRC家族捜索チームに連絡を取ります。ICRCのチームは、セルビアの首都ベオグラードにあるICRC代表部に情報提供を求め、その要請がセルビア赤十字社の家族捜索サービスに転送されました。

 

ゾランは、セルビア赤十字社のスボティツァ支部に長く勤めるプロフェッショナルです。イムティサルがスボティツァ病院にいると突き止めるや否や、彼は病院へ直行しました。ゾランは、イムティサルや医者、精神科医、ソーシャルワーカーに話をつけました。それには、スボティツァに長年住み、現在は移民/難民危機の渦中にいる人々を助けるために通訳ボランティアをしているシリア人モハメドの力が欠かせませんでした。

 

セルビア・スボティツァにて。病院職員やICRC、セルビア赤十字社のスタッフがイムティサルと家族の支援について話し合う様子©ICRC

セルビア・スボティツァにて。病院職員やICRC、セルビア赤十字社のスタッフがイムティサルと家族の支援について話し合う様子©ICRC

 

怪我と精神的ショック、治療に気が滅入っていたイムティサルでしたが、ICRCの電話サービスを使って、スイスにいる家族に連絡を取ることができました。スイスの家族が安心できただけでなく、イムティサルが娘と話せたことが、大きな励みとなりました。

 

「入院生活に疲れ果て、精神的にかなり参っています。でも、娘といつか一緒のなる希望を叶えるためなら、身体の痛みなんて大したことないわ。娘には私が必要なの」とイムティサル。

 

母親と娘がまた連絡を取れるように

イムティサルが再び元気になり家族と再会できるには、まだ何週間もかかります。異国の地にただ一人、ベッドから動けずにいる苦痛や不快感よりも、娘と離ればなれになっている苦しみの方が耐え難いものです。しかし、イムティサルは今や愛娘と毎日会話できます。やっと手に入れた自分の携帯の画面に、娘の写真を出すときの顔は輝いています。

退院までの残り数週間、家族との連絡回復サービスがイムティサルの心のライフラインです。

 

原文は、本部サイト(英語)をご覧ください。

離散家族の連絡回復・再会支援については、こちらをご覧ください。