アフガニスタン:車椅子バスケットボールが障がい者に力を与える

アフガニスタン
2024.07.22

©ICRC

2024年6月21日から25日にかけて、ヘラートで「アフガニスタン全国車椅子バスケットボールトーナメント」が開催されました。

集結したのは、カブール、マザール、ファイザバード、パルワン、ヘラート、ジャララバードのアフガニスタン国内でもトップ6にあたる車椅子バスケットボールチーム。本記事では、活気に満ち溢れた選手たちの歩みや原動力に迫っていきます。

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28歳の車椅子バスケットボール選手、セブガトゥラ・カリザダ選手。

3歳でポリオに感染し、5歳のときに父親が他界し、一家の大黒柱となった彼の幼少期は苦難の連続でした。しかし、逆境に挫けない彼は、ICRC職業訓練プログラムで理学療法の高等教育を修了。ヘラートにあるICRC身体リハビリテーションセンターにて、2年間理学療法士として精力的に働いてきました。その後、幼少期からの情熱を追いかけ、現在はプロのアスリートを目指しています。

バスケットボールは障がい者には難しいと言われることもありますが、彼はこの経験を原動力に変えていっそう熱心にプレーに励んでいます。

車椅子バスケットボールは単なるゲームではなく、力を与えるプラットフォームです。自立心を育むと同時に、障がい者の限界を再定義することで先入観を打ち砕くことができます。

セブガトゥラ・カリザダ

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47歳のICRCの車椅子バスケットボールプログラムのマネージャー、シュクルラー・ジーラック。

シュクルラーは「障がい者の心身の健康を促進するうえで、スポーツは重要な役割を果たします。個人の可能性に満ちた能力が明らかになり、自尊心が高まることで、社会への統合が促進されるのです。障がいのある若者は、ICRC身体リハビリテーションセンターで初めてスポーツ活動について知ることも多く、719名の選手のうち44名がICRCによって採用されています」と語ります。

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34歳のICRC身体リハビリテーションセンターのスタッフ、モハマド・セイバー・スルタニ。

モハマドは、カブールの車椅子バスケットボールチームで10年以上活躍しています。彼は、3歳で不発弾の爆発により両足を失いました。失意のうちにいた彼に、友人がICRC車椅子バスケットボールプログラムを紹介し、人生観が変わったと言います。

車椅子バスケットボールを始めたときから、自分の障害のことを忘れていました。

モハマド・セイバー・スルタニ

彼にとって、車椅子バスケットボールは、身体的な制限を受けないものでした。

モハマドのチームは、代表に選出されて国際大会に出場。レバノンの大会で2つのタイトルを獲得し、他の国際大会でも優秀な成績を収めました。この功績は、チームへの尊敬と賞賛を集め、障がいに対する認識を変えました。

ICRC車椅子バスケットボールプログラムは、13州で719名の選手を支援するまでに規模を拡大しました。同プログラムの選考は、国際車椅子バスケットボール連盟 (International Wheelchair Basketball Federation:IWBF) の基準に沿って行われており、すべての選手にとって安全で包括的な環境が確保されています。

長期的な紛争と開発格差は、100万人を超える障がい者が暮らすアフガニスタンに永続的な傷痕を残しました。1988年以来、ICRCは全国7カ所・毎年20万人以上を支援する身体リハビリテーションプログラムを通じて、人々を支援する最前線に立っています。

また2012年からは、車椅子バスケットボールチームへの支援を開始し、現在は技術支援や財政支援も行っています。支援の際には、練習に向かう交通費の負担から始まり、ニーズに合った車椅子の提供、バスケットコートの維持、優秀なトレーナーの提供まで多岐に及びます。才能を育成するために、あらゆる細部に気を配っています。