エチオピア:エリトリアから送還された人々に対するICRCの支援

エチオピア
2018.05.28

2017年、赤十字国際委員会(ICRC)は、エリトリアから送還されてエチオピア北部のティグレ州メケレ村に住み始めたエチオピアの人々を対象に、起業のための交付金を支給しました。交付金を元手に、彼らは収入を生み出す活動を始めることができました。そんな人たちの物語の一部を紹介します。

肉屋を営むベルハネ・ツェハイさん 「ICRCが支給してくれた交付金のおかげで、わたしは今、肉屋を営んでいます。借金を全て返済し、家族の必要なものもまかなえています。子どもたちのために制服やその他の学校生活に必要なものを買うことができました。仕事を持つことで尊厳を保つことができ、もう将来を不安視していません」と、ベルハネさんは語ります。エチオピアで暮らす前、ベルハネさんはエリトリアの首都アスマラで有名な肉屋を経営していました。2015年に彼がエチオピアへ送還されたとき、家財を全て置いていかなくてはなりませんでした。エチオピアでは、彼は大工職や祭事専門の肉屋といった臨時の職業を見つけましたが、収入は不十分で定期的ではありませんでした。部屋が一つしかない自分の家の家賃すら支払うことができませんでした。ICRCの交付金により、人通りの多い通りに面する小さな店を借り、冷蔵庫やナイフ、天秤の皿といった必要な道具を買い揃え、大好きな肉屋を営むことができるようになりました。ベルハネさんは今、家族を養い、彼らのニーズに応えることができて幸せを感じています ©Alice Blaquiere/ICRC

家禽農家のセラマウィ・アスメラシュさん 「夫が私たち家族を置いて家を出ていったとき、私は子どもを学校に通わせてやることができませんでした。加えて、収入が全くないにも関わらず、返済しなければならない多額の借金を抱えていました。どうすればいいのか分かりませんでした。ICRCは農場の運営に必要な機材を購入するのを支援してくれました。今や農場は成長しつつあり、子どもたちは幸せに暮らしています」と、セラマウィさんは語ります。2015年3月、セラマウィさん、そして彼女の夫と子どもたちはエリトリアからエチオピアへ送還されました。彼らは家禽農場を始めようと、村のマイクロ・ファイナンスの団体から貸付金と土地の一区画を与えてもらいました。しかし、不幸なことに、彼女の夫は貸付金全額を持って家出。セラマウィさんには3人の子どもたちと、活用されなければ政府に没収されてしまう土地だけが残されました。でもICRCの交付金によって200羽の鶏と冷蔵庫、発電機、鶏用の餌入れ、そして薬を買うことができました。家禽農場に加え、彼女は、新製品を多く取り扱うお店も立ち上げました ©Alice Blaquiere/ICRC

市場で物売りをするレテイェス・テクルさん 「路面でモノを売ることは、私ぐらいの年齢の女性にとっては屈辱的なことです。特に天気が商売を左右するからです。ICRCの交付金で中央市場に場所を借りることができました。自分の場所を持つことができて幸せです。狭い一角ですが、この市場の一部が全部自分のものだと思うと、尊厳と誇りを感じます。収入は、ゆっくりではありますが確実に増えています」と話します。レテイェスさんは、エリトリアからの送還後、メケレで4人の家族を養いながら生活するのに苦労しました。道端で穀物の販売を試みましたが、生活はあまりにも不安定でした。ICRCは、彼女がより多くの穀物やスパイスを購入できるよう支援。そのおかげで彼女は事業を拡大し、屋内市場で場所を借りられまでになりました。今やティグレ地域の中心部にある主要な市場に店を構える売り主となり、尊厳を持った生活を送っています©Alice Blaquiere/ICRC

カフェを経営するハゴス姉妹 「ICRCによる支援のおかげで、街の人通りの多い地域に構えた私たちのカフェは順調です。近隣地域全体に常連客がいます。商品の配送も行っていて、収入が毎月増えています。レストランを開くことも検討しています。」 ミレンさんとセラマウィさんのハゴス姉妹は、2016年にエリトリアから送還されました。彼女たちは最初、ウェイトレスなどの職に就きましたが、収入は低く、家賃を支払えませんでした。そして、彼女たちを頼りに生活をしている母親と妹を養うこともできませんでした。ICRCの支援は、彼女たちが小さなカフェを借り、お店をたちあげるのに必要な機材の購入に充てられました。カフェは成功し、近隣で高い評価を得ています ©Alice Blaquiere/ICRC

美容師のレムレム・メクリアさん 「エリトリアでは、伝統的な三つ編みを人々に結っていました。長年、その仕事をしてきたのです。初めてこの村に来た時、自分の小さな家で同じ仕事を続けようとしましたが、知り合いがおらず、客は一人もいませんでした。この先どうすればよいのか分からず、どうやって3人の子どもたちを育てようか、途方に暮れていました。ありがたいことにICRCの交付金で必要な設備を購入することができ、地元の人が来店するようになりました。以来、収入は増えています。今や近隣では、成功した美容師として高く評価されています。」 レムレムさんは、仕事に使うプロ用のヘアドライヤーや製品、道具を購入することができました。今ではモダンな、そして伝統的な髪形を提案し、近隣で人気の美容師となっています。彼女は息子が電気工になるための教育資金を貯めています ©Alice Blaquiere/ICRC

仕立て屋のアブドゥルワヅィ・モハメドゥヌルさん 「身の回りには何もありませんでしたが、ICRCがミシンやロックミシン、基本設備の購入を支援してくれて、自分の店を開くことができました。今や、自分の仕事に誇りを持った仕立て屋です。仕事を助けてくれる人まで雇いました!」と、アブドゥルワヅィさんは語ります。報告によれば、アブドゥルワヅィさんはエリトリアで拘束され収容された後、2015年に妻と4人の子どもと共にエチオピアへ送還されました。彼は布を織ったり縫ったりするのが得意でしたが、ビジネスを始めるための十分な資金がありませんでした。ICRCの交付金により事業を立ち上げ、今では少額の貯金もできています。彼の妻は、5人目の子どもを出産したばかりで、彼は父親としての誇りも感じています ©Alice Blaquiere/ICRC

金属細工師のヨハネス・テクレハイマノさん 「支援がなければビジネスを始めることはできなかったでしょう。必要な道具や原料を購入するお金は全くありませんでした。ICRCはそこを助けてくれました。私は今、通年の仕事に就いています」と、ヨハネスさんは語ります。彼の仕事は排水用のパイプを作ったり、修復したりすることです。彼は技術にも経験にも長けていましたが、お金がありませんでした。見知らぬ街で3人の子どもと妻を抱え、金属細工師としての道を切り開いていくのは、不可能に思えました。金属板はとても高額。かつ作業費は全てが終了してからでないと受け取ることができません。ICRCは、彼が工事現場で働き始められるよう、必要な工具や器具を提供。今では完全に自立し、家族を養うことができています ©Alice Blaquiere/ICRC