ガザの若者たち:暮らしの中断と機会の喪失
赤十字国際委員会(ICRC)がガザの若者を対象として、新たにオンライン調査を行った結果、回答者の9割が、「自分たちの暮らしは異常だ」と考えていることが明らかになりました。
3人に2人が、「家族の収入に頼って暮らしている」と回答、4割が「今後15年の間に仕事に就ける見込みはない」と回答しました。
ガザの総人口の2割、つまり5人に1人は、18歳から29歳の若者です。今回はこうした若者を対象として調査を行った結果、回答者の大半が、人生の次のステージにおいても、ここ数年間と同じような重い課題に悩まされ続けることになるだろうと考えていることがわかりました。
紛争や封鎖は、私だけではなく、ガザのすべての若者に悪影響を及ぼしています。紛争でただでさえひどい状況に置かれているのに、封鎖まで行われて、ただただ耐えがたいです。
ラース・ラシュダンさん(25歳・大卒者)
ガザへの物や人の出入りが、イスラエルにより15年にわたり制限されてきたことが大きな原因となって、ガザの経済や人道状況は悪化の一途をたどり続けてきました。そのため、パレスチナ自治区の外に出て、必要不可欠なサービスを受けることや、仕事などの機会を得ることも制限されてきました。
ガザの若者たちを悩ます問題は、経済面だけではありません。今回の調査では、半数が、『深刻な心の問題を抱えている』、3人に1人が『対人面で問題を抱えている』と回答しています。その上で、戦闘行為や移動制限によってもたらされた苦悩から逃れ、希望や機会を見出したいと切実に求めています。
ICRCガザ副代表部 ニコラス・ゲーラート副代表
ガザの若者が尊厳と機会を取り戻すための持続可能で長期的な解決策をもたらすことができるのは、戦闘行為や移動制限を幾度となく繰り返している当局だけです。ICRCは、こうした当局に対し、重要なサービスへのアクセスを妨げ、ガザの若者の心の問題や失業率の増加の原因となっている、深刻な人道上の問題に直ちに対処するよう求めます。
私たちは、世界中の人々と同じように、ただ普通の暮らしをしたいのです。自由に移動したり、旅行をしたり、まともな仕事についたりしたいと切に願っています。
ヌーラン・アル・ザイームさん(23歳)
注記:
今回のガザの若者に関する調査は、今年の7月18日から8月3日にかけてICRCが実施しました。15年にわたる物や人の移動制限が、ガザの若者の暮らしに及ぼしている影響を把握するために、10万人以上のフォロワーを持つ、パレスチナ自治区にあるICRC代表部のアラビア語のFacebookページを通じて、オンライン調査を行いました。調査方式は、アラビア語のアンケートに回答者が記入する方式で、所要時間は5~7分です。調査結果は、こうしてガザ全域から寄せられた回答より、所定の調査手法に従って無作為にサンプル抽出された、18歳から30歳の年齢層に属する385名分の回答に基づいたものです。
赤十字国際委員会(ICRC)は、公平で中立、かつ独立した組織で、武力紛争およびその他暴力の伴う事態によって犠牲を強いられる人々の生命と尊厳を保護し、必要な援助を提供することをその人道的使命としています。ICRCは、国際人道法および世界共通の人道的諸原則を普及させ、また強化することによって人々に苦しみが及ばないよう尽力しています。1863年に設立されたICRCはジュネーブ諸条約および国際赤十字・赤新月運動の創設者でもあります。スイスのジュネーブに本部を置き、100カ国以上で活動しています。
主な調査結果
若者を取り巻く環境全般
88.8%が、主に次の理由から、他のコミュニティーと比較して、「ガザでの暮らしは異常だ」と回答。
- 繰り返される戦闘行為の影響
- 封鎖や移動制限
- パレスチナ内部が一枚岩ではない
- 気候変動
95.6%が、「ガザの人道状況によって悪影響を受けている」と回答。
- 所得水準が低い、または仕事がない
- 基本的なサービスを受けられていない(停電の常態化、上下水道の品質問題、栄養不足など)
- 周期的に戦闘が激化することによる影響
経済
- 69.9%が、経済の悪化による最大の影響は、「若者が経済的に自立できないこと」や「自分に合わない仕事でも受け入れざるを得ないこと」と回答。
健康
- 心の健康:49%が、「ストレスや不安、うつなどに悩まされている」、34.5%が「人とつながりを持てないなど、対人面で問題を抱えている」、12.4%が「結婚を控えている」と回答。
- 質の高い医療サービスを受ける上での影響:38.7%が「医療機関のキャパが限られているため、質の高い医療サービスを受けられなくなってきている」、33.6%が「医療費を払えない」、27.7%が「海外で治療を受けることが制限されているため、質の高い医療を受けられない」と回答。
人や物の移動制限
- 海外での就職の機会を逃した:39.2%
- ガザの外でビジネスチャンスを得ることができない:20.6%
- より良い治療を受けることができなかった:16.2%
- 海外の奨学金を受け損ねた:12.9%
- 人とのつながりが弱まった、家庭を持つ見通しが立たなくなった:11.1%
ガザの若者たちは、今後15年間の自分たちの将来がどうなると考えているか?
- 42.9%が、「今後15年間、仕事に就ける見込みはない」と回答。
- 67.5%が、「今後、再び戦闘が激化する可能性がある」、19.2%が「五分の確率で、新たな戦闘行為が起こる可能性がある」と回答。
- 47.8%が、「ガザへの出入りが改善されると少し期待している」、33.5%が「期待できない」と回答。
- 66.2%が、「一日中電気が使えないままだろう」と回答。
- 38.4%が、「ガザで新世代のインターネットサービスが使えるようになると期待している」、23.4%が「使えるようにはならないだろう」と回答。