水汲みに並ばなくてもいいように:ナイジェリアでの取り組み

©ICRC
ナイジェリア北東部のグウォザとビウでは、紛争の影響を受けたり、避難を余儀なくされたりした人びとがいます。かつては水を確保することが生活の中心となり、一日の過ごし方を左右していました。
朝は、一つしかない井戸や水汲み場に並ぶことから始まり、十分な水を入手できないまま家に戻ることも少なくありませんでした。限られた水を少しずつ大切に使わなければならず、飲み水や料理のために使うことが優先され、洗濯や家の掃除、子どもの入浴は後回しになっていました。本来なら、学校に通ったり、農作業や仕事をする時間も、水くみに使わなければなりませんでした。
こうした負担を軽減するため、赤十字国際委員会(ICRC)はナイジェリア赤十字社の協力を得て、両地域の避難民キャンプやホストコミュニティーに新たな井戸を設置するとともに、給水設備の修復をおこないました。今では家の近くで水を確保できるようになり、水を汲みに行ったり、水を求めて列に並んだりする時間が減りました。また、子どもたちは定時に学校へ通えるようになり、手洗いや家の掃除、トイレを清潔に保つための水も十分に確保できるようになりました。
こうした変化によって暮らしがどう変わったのか、住民たちが語ります。
取り戻した時間

修復された給水設備を利用するハウワ・アダムさん
©ICRC
以前は、いつも水が足りなくて、井戸の周りで何時間も待たなければなりませんでした。それだけ待っても、ほとんど水を汲めないまま帰ることもありました。
日が照り付ける中、何時間も並んでいましたが、手に入る水はわずかで、飲み水や料理に使う分しかありませんでした。
長い列に並ぶことで失われたのは、時間だけではありません。水を待つ時間が長くなるほど、ほかのことに使える時間も少なくなります。子どもたちは学校に遅刻したり、授業を休んだりすることも多かったと言います。親たちは、料理や家族の世話、小さな商売や農作業などを後回しにすることもありました。それほど、水の確保を中心に日々の生活が回っていたのです。
現在は、地域内に新しい井戸が設置されたことで、家族が水を手に入れるために使う時間が減り、その分、暮らしや生計に回せるようになりました。
今では暮らしが楽になり、一家が使う水も十分に確保できるようになりました。長い列もなくなったと、ハウワさんはほっとした様子で話します。
ハウワさんをはじめ、多くの人びとが水を確保できるようになったことで、家族の世話をしたり、働いて収入を得たり、将来について考えたりするための大切な時間を取り戻すことができました。
守られる安全

グウォザの国内避難民キャンプで暮らすブバ・ザドバブさん。修復された給水設備を前に満面の笑みです。
©ICRC
「もう苦労しなくていい」― ブバさんの喜び
64歳のブバ・ザドバさんは、暴力から逃れるために故郷の村を離れ、国内避難民キャンプで新たな生活を始めることになるとは思ってもいませんでした。避難したばかりの頃は、水を確保するためにキャンプの外へ出かけなければなりませんでした。
それは、多くの住民、特に女性や子ども、高齢者、障がいのある人にとって、非常に危険なことでした。強い日差しの中を長時間歩くことで、疲労や脱水症状を起こしたり、水が入った重い容器を抱えながら、慣れない道を通って移動しなければならなかったからです。
特にブバさんの世代の人びとにとって、体への負担は大きなものでした。
もう水のことで苦労しなくていいんです。今ではここで家族全員分の水を確保できますし、家畜にも十分な水を与えられるようになりました。
キャンプ内で水が手に入り、生活に欠かせない水を求めて大変な思いをして遠くまで行く必要はなくなりました。こうした変化によって、より安全で暮らしやすくなり、不安も軽減されました。
必要なことを優先できる暮らしへ

7人の子どもを持つアイシャ・ガジさん。紛争により故郷の村を離れ、ナイジェリア北東部グウォザの国内避難民キャンプで暮らしています。
キャンプ内で清潔な水を利用できるようになったと喜んでいます。
©ICRC
アイシャさんは、毎朝、限られた水をどう使うか悩んでいたと振り返ります。料理に使うのか、家の掃除に使うのか、何を後回しにしたらいいのか。少ない水をどうやりくりするか、常に考えなければなりませんでした。何百もの世帯が限られた場所から水を確保していたため、キャンプ内では病気が広がったり、水をめぐっていさかいが起こるリスクもありました。
今では、みんながきれいな水を使えるようになりました。子どもたちが使えるきれいな水もあります。
衛生的な暮らしを取り戻す

ビウのキャンプで行われている衛生活動
©ICRC
ビウの避難民キャンプでは、飲み水の確保だけでなく、暮らしのさまざまな面に影響を及ぼしていました。手を洗ったり、食器を洗ったり、トイレを清潔に保ったりするための水が十分になく、人が密集する避難所では病気が広がりやすくなってしまいます。特に子どもたちは体調を崩すことが多くありました。
キャンプに一つしかない水道には長い列ができ、限られた水を大切に使わなければなりませんでした。洗うために使う水よりも、飲み水を優先していました。避難所の周りにはゴミがたまり、病気が広がるリスクも日に日に高まっていました。
キャンプ内に新しい井戸が設置されたことで、状況は大きく変わりました。
今では、いつでも手が洗えます。トイレを掃除したり、食器を洗ったりして、キャンプ内をきれいに保っています。
井戸が使われるようになってから、下痢や皮膚感染症の発生が減ったと、医療従事者は報告しています。人びとは口々に、以前よりも安心して日々を過ごせるようになったと言います。十分な水が行き渡るようになったことで、生活の場であるキャンプが、より安全に暮らせる場所になりました。
持続可能な未来へ

ナイジェリア北東部グウォザの国内避難民キャンプに新たに設置された井戸。ICRCがナイジェリア赤十字社の協力を得て設置。
©ICRC
多くの避難世帯にとって、安定して水を確保できるようになったことは、暮らしを改善するだけでなく、より持続可能な未来を築くことにもつながっています。
グウォザの人びとは、毎日の暮らしに必要なものを入手することに多くの時間と労力を使っていました。使える水が限られていたため、身の回りを清潔に保つことや家畜の世話、野菜の栽培、ちょっとした仕事で収入を得ることも難しい状況でした。
安全な水を確保することは、人びとの暮らしを支え、生活を立て直す助けになります。そして、日々の困難を乗り切るだけでなく、より安定した未来を築いていくことにもつながります。
英語原文はこちら