2023年上半期の活動を写真で振り返る

イエメン
2023.07.28

世界各地には、計り知れない苦しみと喪失のなかに身を置く人たちがたくさんいます。ICRCは、各国赤十字・赤新月社とともに、困難に立ち向かい、前を向いて立ち上がるコミュニティーに寄り添っています。

命や生活を守るための救援活動だけでなく、犠牲となっている人々の人間としての尊厳を守るため、紛争当事者に対して国際人道法を尊重するよう訴え続けています。


イエメン:故郷へ帰還を果たせた喜び

サヌア空港にて ©ICRC

2023年4月中旬、イエメンにおける紛争の当事者からの要請を受けて、私たちは中立的立場から973人の被拘束者の解放と帰還をロジ面で支援しました。

お母さん!今、空港にいるよ。これから30分以内に飛行機に乗ってサヌアに帰るよ!

解放されたヤセルさんが電話で母の声を聞くのは1年以上ぶり。喜びと興奮を隠しきれない様子でした。

大切な人との抱擁に言葉はいらない ©ICRC


シリア:紛争の次は地震・・・疲弊する北西部の人々

壊滅的な地震により、弟を失ったスリマン君 ©ICRC

2月に発生した地震は、12年以上続く紛争を生き抜いてきたシリアの人々をさらに追い詰めました。何千もの建物が破壊され、何百もの命が失われ、その破滅の凄まじさは人々の生活や心の中に多くの傷跡を残しています。

シリアで活動するICRCのチームは、被災者の支援に注力し、北西部のアレッポやラタキア、ハマの避難所で過ごす延べ3万人以上が、缶詰の食べ物や、支援物資(毛布・マットレス・太陽光発電ライト・衛生用品一式・キッチン用品など)を受け取りました。

©ICRC


スーダン:紛争下の絶望のなかの救い

避難の最中に幼い子どもを抱きかかえてバスに乗り込むICRCのスタッフ ©ICRC

首都ハルツームが数週間にわたる激戦で破壊されたなかで、わずかながら安堵の瞬間も。6月上旬、マイゴマ孤児院の300人の子どもたちと、71人のケアワーカーが、約200キロ離れたワドメダニに避難しました。

銃声の聞こえない安全な場所に向かっている安心感がある一方で、避難者たちは、この先に何が待ち受けているかわからない不安と、長年の思い出が詰まった場所を離れる悲しみで揺れていました。

戦闘が始まってから、何千もの人々がスーダン国内で避難を余儀なくされ、その数を上回る何万人もが南スーダンやエチオピア、エジプト、チャド、中央アフリカ共和国などの近隣国へ逃れています。

スーダン国境付近に位置するチャド・アドレから、ンジャメナへ、負傷した市民を移送するICRCのチャーター機。顎や顔、神経系の手術が必要な患者たちは、不安な日々を乗り越え、ようやく治療を受けることができる ©ICRC


ロシア・ウクライナ紛争とダム決壊

ダム崩壊によって被害を受けた人々の避難を手伝う赤十字ボランティア ©ICRC

拡大・激化するロシアーウクライナ間の国際的武力紛争。ウクライナ南部へルソン州ノヴァ・カホフカのダム決壊は、地域住民の暮らしにさらなる脅威をもたらしました。

ICRCは、洪水に見舞われた日からウクライナ赤十字社や地元当局と協力し、特に安全な水の提供や、地雷に関する安全対策に焦点を当てて緊急支援を実施。大量の塩素水溶液・大容量の水ポンプ・タンク、数千のポリ容器、食料、医療用品を提供しています。

私たちは、現地にいる赤十字パートナーや人道支援機関、地域・地元当局と協力しながら、長期的なニーズを評価し対応しています。短期的には、上流地域の住民が現状に対処できるよう支援を開始。今後は、地元当局をサポートしながら数カ所で水源を確保する予定です。

ウクライナ赤十字社のボランティアによる飲料水の提供 ©ICRC


アフガニスタンの人々の生計を支える

西部ファラ州。現金給付型雇用プロジェクトを通じて農地を洪水から守り、コミュニティーの灌漑用水路の復旧を行う ©ICRC

数十年に及ぶ武力紛争に加えて、収入減少や不安定な雇用の見通し、気候変動の厳しい影響は、現地で必死に生きようとしている人たちを窮地に追い込んでいます。

1月から6月にかけて、2万8千人超に、多目的に使用可能な現金給付や、生活に不可欠な物資の提供を行いました。また、3千を超える人々に対する現金給付型雇用によって、収入を確実に得て、生計が立てられる機会を創出しました。


メキシコ: 行方不明となった大切な人を見つけるお手伝い

2019年7月9日、南部ゲレーロ州の州都チルパンシンゴで消息を絶った夫について、ICRCのスタッフに語るオルガさん。残念ながら、この写真が撮られてから数日後、夫は遺体となって発見され、家族のもとに帰った ©ICRC

世界に広がる赤十字・赤新月ネットワークは、150年以上にわたり行方不明者の消息を追跡調査してきました。ICRCの支援を受けて、赤十字・赤新月社の職員とボランティアが、大切な身内や離れ離れになった家族の行方を突き止める重要な役割を担っています。


南米コロンビアで必要とされる食料支援

©ICRC

数十年にわたる武力紛争で880万人が犠牲となっているコロンビア。私たちは、暴力の影響を受けたコミュニティーや行方不明者の家族を支援する一方で、移民の保護にも声を上げています。

戦闘により移動の自由が制限された西部チョコ県のアフリカ系コミュニティー6カ所に対して、長期間保存の利く食料品一式を700セット調達。カホン川とタパラル川に沿って3日間移動した後、シピとノビタに住む986人に届けました。


エチオピアで性暴力の被害者に寄り添う

ICRCが支援する施設に身を寄せる女性たち ©ICRC

国際法で禁止されている性暴力ですが、武力紛争やその他暴力の伴う事態においては、いまだ横行しています。私たちは、北部ティグレ州で被害者が安全に滞在できる施設を運営する「ティグレ女性協会」と覚書を交わし、共同プロジェクトを始動させました。

運営費の支払いに加えて、ICRCの支援内容は、寝具や家具、母子が楽しめる娯楽用品、掃除器具など、生活に必要な物資の提供。また、被害者の尊厳に配慮した援助も行いながら、家族との連絡が途絶えないよう、保護の観点から施設内で事業展開しています。


ソマリアで拘束された人々への支援

©ICRC

世界中のイスラム教徒がラマダン(断食月)を迎えるなか、塀の中で自由を奪われたソマリアの人たちもこの恒例行事にあやかることができました。

ICRCは、国内12カ所の収容施設に拘束されている約4,000人に向けて、日没後に取る伝統的な食事「イフタール」用の食材を調達。ヤギ肉やナツメ、レンズ豆、脱脂粉乳、砂糖、香辛料、食用油、トマトペースト、茶葉などを提供しました。

収容当局は、被拘束者の尊厳を尊重し、宗教的活動に加えて、娯楽的活動も奨励することが求められる。ドミノやトランプは、収容施設で時間を持て余すソマリアの人々に特に人気が高い ©ICRC