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ソマリア:リハビリが人生を大きく変える!

ソマリア
2026.04.10

©ICRC

「コストパフォーマンス」「製造業における持続可能性」「コスト削減」-人道支援を語るとき、こうした単語が出てくることはあまりないかもしれません。しかし、ICRCで身体リハビリテーション事業を統括するフィリップ・モーガンは、これらを用いて、いかに効率的に施術の質を向上させることができるかを語ります。
ICRCで20年のキャリアを持つベテランです。

最初の赴任地は、壊滅的な地震に見舞われたパキスタンでした。2005年のことです。義肢・リハビリ専用のクリニックをICRCが開設する際に、運営も担える専門家を必要としていたのです。

「ある同僚が、『一日も早く自分たちが必要でなくなることこそがこの仕事の成果だ』と言ったのです。それは私がこれまでに聞いた中で最高の助言で、胸に刻んでいます。人道支援従事者として、緊急事態下で人びとを助けるためにそこにいますが、無期限に留まることはできません。既存の保健システムで賄えるよう体制を強化し、政府当局や現地の赤十字・赤新月社といった地元アクターに事業を引き継ぐ必要があるのです」

「それ以来、私は常に効率性とコストパフォーマンスを追求しています。使っているのは私のお金ではなく、ICRCに寄付されたお金だからです。それを慎重に使う責任が私にはあります」

モーガンは2023年、ICRCソマリア代表部に籍を置き、現地の赤新月社と共同でおこなっている身体リハビリテーション事業をサポートすることになりました。

義肢装具士や装具士、助手、作業員、理学療法士など、ソマリア赤新月社のスタッフ56名と共に、わずか3つのクリニックでソマリア全土のリハビリニーズに応えています。病気や障がいを抱えながら生きる推定20万〜25万もの人びとを支えているのです。

首都モガディシュにあるリハビリセンターで話すモーガン(左)とソマリア赤新月社のスタッフ©ICRC

増大するニーズという課題

数十年にわたる暴力により、銃創や地雷、爆発で負傷した数十万のソマリア人がリハビリを必要としています。また、紛争の影響を間接的に受ける人も少なくありません。

長引く不安定な情勢は、ソマリアの保健システムに影を落としました。予防接種が徹底していないため、ポリオのような未然に防げる病気が流行し、身体に障がいが残る事態につながっています。産前産後ケアを受ける機会も限られていて、母子の健康リスクも高まっています。脳性麻痺や内反足など長期のケアを要する子どもたちもクリニックには多く訪れます。

10歳のアナスはポリオで体が不自由になりました。再び歩けるように、モガディシュのリハビリセンターで必要な治療を受けています。©ICRC

ICRCは、治療が必要になった瞬間から、傷病者に対して医療やリハビリを施し、そして社会復帰を支援します。それらを一貫しておこなっているのは、ソマリアではICRCだけです。

「人びとが安全に家に帰れるようにするだけでなく、ここを離れた後も生計を立てられるよう、また社会に積極的に参画できるよう支援します」とモーガンは説明します。

その一方で、長年の紛争に苦しむ他の国々と同様、膨大なニーズを抱えているにもかかわらず、人道支援のリソースが枯渇しています。

「私の目標は、施術の質を維持しながら、事業の財政面での持続可能を強化し続けることです」。そのためにモーガンは、仲間やセンターのマネージャーたちに、「もっと効率を上げよう!ミスを減らそう!スピードを上げて施術の質を最高レベルに持っていこう!」と伝えています。

義肢を装着した患者©ICRC

完全な持続可能性に向けて

「持続可能性への次のステップは、リハビリ専門家の現地養成への投資だと思います」とモーガンは語ります。

現在、学士号を持つ理学療法士はわずか15名で、ソマリアの人口約130万人に対して1人という割合です。全員が、ICRCや他の援助組織の支援を受けて海外で訓練を受けています。

モーガンは、こうした支援は手っ取り早いが改善の余地はあると考えています。モガディシュにあるソマリア国立大学で理学療法士を養成すれば、長期的にみてコスト削減となり、国内における人材調達力を劇的に強化できます。やがてソマリア赤新月社がリハビリ事業の運営主体となることも期待され、既存の3つのセンターの負担も軽減でき、持続可能な引き継ぎに向けた土台を築くことができます。

モガディシュのリハビリセンターで製造されている義肢©ICRC

「ICRCには既にそれを実現させるための技術的な専門知識があり、欧州の大学との提携や世界理学療法連盟とのつながりもあります」とモーガンは話します。「しかし、実現に必要な資金が足りないのです」。

これはソマリアに特化した問題ではありません。

「援助業界にとって、今は財政的に非常に困難な時期なのです」と彼は続けます。「だからこそ、製造の合理化、生産の適正化、コスト削減の取り組みが不可欠なのです。それによって私たちはより柔軟で迅速に対応できます。まさに、今の時代に求められていることです」。

モーガンは、「成果が実感できているので、私たちは正しい方向に進んでいると思います」と語ります。「でも、このプロジェクトを後任に託し、『自分はもう必要なくなった』と言えるようになるまでには、まだまだやるべきことが山ほどあるんです」。

英語原文はこちら