マラウィ紛争: 2年を経てもいまだ家に帰れない10万人
マニラ (ICRC)-フィリピン南部ラナオデルスル、マラウィで2017年に起きた紛争の爪痕は深く、今なお10万人以上に帰る家がありません。
「苦しい生活を送っている人々に対して、2年にわたり手厚い支援を行っていますが、マラウィの人々の疲労の色は濃くなり、いら立ちを募らせています。皆さんが、自立したい、援助に頼り続けたくない、という思いを持っているからです」と、赤十字国際委員会(ICRC)フィリピン代表部首席代表のMartin Thalmannは述べます。
親戚に身を寄せているにしろ、避難所や避難中継所にいるにしろ、マラウィの避難民たちは、飲み水、これからの生計を立てる機会、そして何よりもまず永住できる家の確保に苦労しています。
Thalmannは、最も被害を受けた地域 (MAA) の再建を始められるよう、行政当局が複雑な問題の解決に努めてきたことを認識しています。
しかし、紛争被害により行方不明者が出た家族や暴力の被害者など、「目に見えない」傷を持つ多くの弱者は置き去りにされていました。
「血が流れない傷も傷跡として残ります。何かにつけてぶり返す傷があるというのはこの上なくつらいです。起きた当時のままの痛みを思い出させるもの。でも、それも何らかの教訓なのだとすれば、思い出すのも仕方のないことなのでしょう」。マラウィ紛争で心に重い傷を負った「Mel」(仮称) さん (34歳)はそう語ってくれました。
ICRCのメンタルヘルス・心理社会的支援 (MHPSAS) プログラムは、2018年10月に立ち上げて以来約700人に手を差し伸べてきました。その中でもマラウィ紛争で心に重い傷を負った47人 (「Mel」さんを含む) は、MHPSSの個人セッションを受けた後に「気持ちが楽になった」「慰められた」「安心した」「分かってもらえた」などの感想を報告しています。
「紛争は健康な生活全体に被害をもたらしました。そこで負った精神的な傷が癒えるまでには長いサポートが必要です」と、Thalmannは訴えます。また、ICRCの次のステップについて、暴力の被害者に対する精神的なサポートを提供するうえで、公的医療制度の内容強化に取り組みたい、と述べました。
ICRCは紛争勃発以来、国内パートナーであるフィリピン赤十字社と被災者の支援を行ってきました。戦闘で負傷した人々は、ICRCから医療費補助を受けました。負傷した結果、身体に障がいを持つようになった人々は、義手・義足や理学療法を受けることができました。
ICRCは、さまざまな現場で収入源の回復をはじめ、飲料水供給や衛生面での改善を行い、避難民を引き続き支援します。また、紛争により身内や親しい人が行方不明になった家族に寄り添い続けています。
「行政当局と他の支援組織と調整し、復旧対応のギャップを埋めようとしてきました。しかし、できることには限度があります。行政当局には、持続可能なソリューションを提示してマラウィの人々を支援する第一義の責任があります」と、Thalmannは話しました。