「早く治して家に帰りたい」―ラファの赤十字野外病院の最新情報 相次ぐ支援者への攻撃

イスラエル・パレスチナ
2025.07.25

A doctor taking children through recreational activities to support mental health at the Gaza

©ICRC


ガザではこの1カ月で、支援物資を配給している拠点に大規模な攻撃が相次ぎ、既に崩壊している医療がひっ迫しています。

60床を備えるラファの赤十字野外病院は、現在この地域で唯一完全に機能している病院ですが、このところ最大収容能力を超えた患者が押し寄せています。

圧倒的な需要に対応するため、理学療法士が看護師を支援し、傷の清掃や包帯交換、バイタルサインの測定をおこなっています。清掃員は現在、搬送要員として活躍し、必要な場所に担架を運んでいます。助産師は緩和ケアにも従事し、痛みの緩和や、生存が困難な患者の手を握るなどの役割を担っています。

Inside OT with surgeon and OT Haitam at the Gaza field hospital

©ICRC

「1日あたり30~40件の手術をしています」 看護師ハイタムさん

あるノルウェー赤十字の看護師は、今回が4回目のガザ勤務です。5月27日以来、業務量は過去にないほどに増えており、前例のない件数の手術に連日追われています。

「以前は、1日あたりの手術は8~10件でしたが、最近は30~40件。仕事量だけみても、変化は明らかです。我先に治療を受けようと、人びとは叫び、走り回り、列の先頭に立とうとします。負傷者の大多数は、家族のために食料や支援物資を求めにきたところ攻撃に合ったと話しています」

Hassam at the Gaza field hospital

©ICRC

「早く治して家に帰りたい」 17歳の患者のハサンさん

ハサンさんは先月、14歳の弟と支援物資の配給場所を訪れていた際に足を撃たれました。赤十字野外病院に運び込まれて手術を受け、現在は蒸し暑いテントのベッドで、次の手術の番を待っています。

「家族のため支援物資を運んでいました。戦争以前は、何の心配事もありませんでした。好きなときに外出して、必要なものは父が何でも揃えました。学校に通って暮らし向きはよかったです。今は小麦や必要な食料さえ入手できない、ひどい生活を送っています。わずかな支援物資を家族に届けようと配給場所を訪れた際、銃撃されました」と5人兄弟の長男ハサンさんはいいます。

サッカーが大好きなハサンさんですが、再びボールを蹴ることができるまで数ヶ月かかります。

「早く足を治して家に帰りたい」

「銃撃に巻き込まれて懲りたので、退院後は外出したくありません」ハサンさんは言います。


7月に入ってから、赤十字職員への攻撃も相次いでいます。
7月4日、野戦病院で働くICRC職員が流れ弾で負傷しました。

この数週間、流れ弾の影響で、野外病院が活動不全に陥るような受け入れ難い状況です。

医療従事者、介護者、その他職員や患者は、警報の音を聞き次第、指定された場所に避難する生活が当たり前になっています。産科病棟の女性患者は、出産中の移動制限で、警報のたび床に伏せています。外科医や手術の支援スタッフは、周囲で銃声が鳴り響くなか、銃弾がテントを貫通するリスクを負いながら手術を続けています。

同日7月4日の朝には、パレスチナ赤新月社のスタッフ2名が勤務中に負傷しました。紛争地の第一線で救護に携わる人びとの負うリスクの大きさとガザの危険な治安情勢を物語っています。

7月10日、ICRCとPRCSの合同ミッションへの銃撃では、ICRC職員とPRCSのボランティアが負傷しました。負傷者は直ちに搬送され、現在の容態は安定しています。この合同ミッションは、7月4日以降の戦闘で連絡がとれず、負傷中のICRC職員と家族を救出するためのものでした。7月16日、職員とその家族が殺害されていたことが確認されました。

国際人道法は、いかなる状況においても医療施設や医療・人道支援従事者に注意を払い、保護することが義務づけられています。あらゆる手段をとおした安全確保が必要です。将来の事故を防ぐため、いますぐの行動が必要です。

英語原文はこちら
“I want to heal and go home”: Red Cross Field Hospital in Gaza grapples with unprecedented wave of mass casualty incidents
Gaza: ICRC staff member wounded by a stray bullet while on duty at the Red Cross Field Hospital in Rafah
Israel and the occupied territories: ICRC outraged by attack that wounded ICRC staff, PRCS volunteer during Gaza rescue mission