シリア北東部:捕らわれた人々と行き場のない人々

シリア
2021.07.16

©ICRC

シリア(ICRC)-ICRC中東事業局長のファブリツィオ・カルボーニによる現状報告。

シリアの人々はこの10年、ことごとくいろいろなものを失ってきました。町は破壊され、生きていくのに欠かせないサービスも崩壊。皆さんもその惨劇を何かしら目にしたことがあるでしょう。

こうした途方もない惨事の中で、シリアの北東部では、さまざまな事情によって複雑さを極めている「子どもたちの保護」をめぐって、問題がさらに深刻さを増しています。

北東部では、何万人もの子どもたちが避難民キャンプを後にすることもままならず、どんな子どもですら身を置くべきではない劣悪な環境下で日々を過ごしています。また、成人向けの刑務所に収容されている子どもも数百人に上り、そのほとんどが少年で、まだほんの12歳の子どももいます。彼らがいていい場所では到底あり得ません。

子どもたちの出身地は、シリアやイラクの他、世界数十カ国に及びます。家族と一緒にいる子もいれば、孤児だったり、近親者と離れてしまった子もいます。こうした子どもたちは、何よりもまず、被害者として対応されなければなりません。

私はICRCの職員として世界中の紛争地で仕事をしてきましたが、子どもたちで溢れかえるアルホル難民キャンプを訪れる度に胸が掻きむしられる思いです。

写真が撮影された3カ月前に爆発によって負傷した当時11歳の少年。怪我をした数週間後に家族と共にあるアルホル難民キャンプに来た。©ICRC

ここ数年でいうと4回現地入りしましたが、直近で訪れたのは3月。以前よりもはるかに状況は悪化していました。

皆さんに理解していただくために、私たちがどれくらい大きな問題に直面しているか、ここで説明します。アルホル難民キャンプは、湾岸戦争後の1990年代に約1万人のイラク人のために設置されました。以来ずっとここで暮らしている人たちもいます。

現在、キャンプには約6万人が暮らし、出身地は60カ国以上に及びます。大半がイラクとシリアの出身者で、そのうち9割が女性と子どもです。むさ苦しく、危険を伴うことも多い環境下で育つ子どもたちは、約4万人に上ると言われています。

私が初めてキャンプを訪問したのは2019年のことです。当時はちょうど、シリア東部バグズでの激戦を逃れてくる人々の避難先となっていました。

恐ろしく苦しみに満ちた光景でした。何千人もの女性や子どもたちが、ほこりにまみれ、腹を空かせ、寒さに凍えながら、ショック状態のまま何百キロも移動してきたのです。

爆弾で負傷したばかりの人たちや、手足を失った多くの人、また何カ月も治療を受けていない人もいました。

最初の数週間のうちに、私たちが運営する野戦病院で手当てを受けた患者のほぼ半数が子どもでした。その多くが、ひどい傷を負っていて、キャンプにたどり着くとすぐ亡くなりました。

あれから3年ほど経ちますが、生き残った人のほとんどは今もこのキャンプで暮らしています。

アルホル難民キャンプは、砂漠の中に見渡す限りのテントが並ぶ場所です。数千人が放置されたままで、絶望感がまん延しています。前途に光明を見出すことが人々には必要です。

母子のケアや小児医療、外科治療、心のケア、リハビリなどの医療サービスが全く足りていません。本来であれば明らかに予防可能な病気で亡くなった子どもたちの数は、2020年に増加しました。

キャンプの環境は、子ども大人を問わず、皆にとって厳しいものです。他のキャンプや収容施設への移動中に、子どもと母親が離ればなれになるなど、家族が離散することもあります。

少年の場合は特に、恐怖と不信感がぬぐえないまま暮らしています。多くが一定の年齢に達すると家族から引き離され、本来は子どもがいるべきではない、成人向けの収容施設に移されるからです。

収容されている子どもたちは、難民キャンプにいる身内と再会するか、家族と一緒に本国に帰還を果たすか、何かしらの特別な配慮がなされなければなりません。重篤な患者は、優先的に帰還させるべきです。

そしてもちろん、何千人もの大人たちの状況も見過ごせません。誰一人として法を超越した処遇を受けてはならず、皆が正当な法的手続きと人道的な扱いを受ける権利を持っているのです。

ビニール袋で作った自作の凧で遊ぶ少年。キャンプには遊具がないので、子どもたちは工夫しながら遊んでいる。 ©ICRC

私が初めてアルホルに足を踏み入れてからほぼ3年が経ちますが、今だからこそ明言できることがあります。それは、「手を尽くせないわけではない」ということです。課題は複雑で山積していますが、それは行動しないことの言い訳にはなりません。

重要なのは、一国だけでこの問題に取り組む必要はないということです。実際、長期的な解決策を見出すためには、国際社会が協力し、連帯して行動するほかないのです。

ICRCなどのように、専門知識を有し、助言ができる組織もあります。国際法は、打開策に導く枠組みを提供してくれます。国同士がお互いに学ぶこともできます。成功例を共有することもできるでしょうし、共有すべきなのです。

本国への帰還については、既に存在する格好の例に目を向けてみましょう。国際法に則って母子を帰還させ、家族が一緒に暮らせることを立証した国もあります。また、きちんと司法手続きを行ったうえで罪を問うたり、社会復帰させたりしながら、人道的見地から事後の経過を見届ける取り組みを実施している国もあります。

苦しんでいる人々をこれ以上追い込まないよう、私たちは行動するための一歩を思い切って踏み出せば良いのです。このままだとタイミングを逸します。

今こそ、国家が人道的かつ責任ある行動をとり、そうした状況に置かれた自国民を苦しみから解放するときです。ニーズが膨らむ一方で行動を躊躇すれば、皆が大きな代償を払うことになりかねません。

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