南スーダン:ICRCによる障がい者のためのスポーツプログラム
南スーダン、首都ジュバ (ICRC) —初参加の女性選手15人を含む総勢80人の車いすバスケットボールの選手が南スーダンの全国から首都ジュバに集結。2人の有名コーチから3週間のトレーニングを受けた。12月12日と13日にはトーナメントが行われる。
南スーダン系アメリカ人の車いすバスケットボール選手であるマラット・ウェイさんは、米国アリゾナ州でバスケットボール大学の部で活躍中。赤十字国際委員会 (ICRC) の車いすバスケットボールコーチであり、スポーツ・障がい・インクルージョンアドバイザーのジェス・マルクトと合流する予定です。
「才能があって元気をくれる選手が集まるジュバに来ることができて嬉しく思います」とウェイさんは挨拶し、「車いすバスケットボールとの出会いで自分の人生が変わりました。大好きなバスケットボールを皆さんとプレイできることは光栄に思います」と続けました。
この種のトレーニングは3回目で、ICRCと南スーダン車いすバスケットボール協会の協力で行われました。2018年以来、参加選手数は2倍を超えました。これはつまり、南スーダンでのスポーツ人気が高まりを見せ始めたと考えられます。
「バスケットボールをしていると自分が障がい者であることを忘れてしまいます。有名コーチに教えてもらう機会はめったにありませんから、自然と熱が入ります」と選手の一人、マリー・ヘゼキアさん。「ちゃんとした方法が分かれば、障がい者にもできることがあるはず。そこを分かってもらえなくて私たちは何もできない人と思われがちです」と言います。
南スーダンでは障がい者が利用できるサービスはわずかしかなく、整形外科センターは国内に3カ所しかありません。これらはすべてICRCの支援によるものです。ここでは理学療法や義肢や車いすなどの移動支援機器の提供を受けることができます。
「整形外科センターには毎日新らしい患者さんが訪れます。多くは銃に撃たれた傷口から感染が広がり、手や脚を切断した人たちです」と駐南スーダンICRC代表のジェームス・レイノルドは話し、「生涯取り返しのつかない傷を負った南スーダン人は数えきれません。この紛争がどれほど惨いものであったかの証左と言えます」と述べました。
2019年初頭から南スーダンのICRC整形外科センターには730人が入院しました。毎日平均約2名の計算です。そのうちの25パーセントは手や脚を切断した人々です。
赤十字国際委員会は、障がい者がスポーツに参加する機会や社会的受容を拡大することを目標に掲げて、障がい者のためのスポーツプログラムを大幅に拡大するための準備を進めています。
来年にはプログラムを新たに9ヵ国*に展開する予定で、ICRCがスポーツを通じた障がい者支援を推進する国の数は27ヵ国に上ります。これは、ICRCのプログラムの50%増に当たります。
身体の障がいにまつわる思い込みを壊し、障がい者が自己の能力を十分に発揮できる社会構造を作ることを長期の大目標に設定しています。
「障がい者は何もできないと言う誤解で障がい者を疎外するのはやめましょう」と、ICRC障がい・スポーツ・インクルージョンアドバイザーのジェス・マルクトはそう切り出して、「雇用と教育への道を開き、小児ポリオを患った人や、地雷を踏んで手足を失った人は親として何もできないとか、従業員として満足に働けないなど、ただの推測に反論しようではありませんか。彼らはできるのですから」と続けました。
12月3日火曜日は、国際障がい者デーです。障がいと生きる人々のことを思い、話し合うきっかけとする日です。マルクトが自動車事故で車いすの人となる前は、米国オレゴン州立大学の高跳びの選手でした。その彼は今や、障がい者のためのICRCスポーツプログラムを世界中で指揮しています。
「12月3日は、インクルージョンなどの課題に焦点を当てる日になりました。世界中で障がい者の権利と認知を呼び掛ける重要な日です。課題となるのが、障がい者コミュニティの存在をこの日に限らずいつも念頭に置き、社会に組み込んでいくことです」と、マルクトは言います。現在タイのパタヤで行われている車いすバスケットボールのトーナメントに出席しています。ここではICRCが支援する6チームが、2020年東京パラリンピックの出場権をかけて競い合っています。
*新たに加わった9ヵ国: ギニアビサウ、ラオス、マリ、ニジェール、ナイジェリア、パキスタン、トーゴ、ウクライナ、ベトナム