ミャンマー:北部カチン州で11,000人超に清潔な水を提供
ラフムルアンさんは、平和で幸せだった日々を懐かしみます。彼女の家族は、カチン州マンシ郡ナム・リン・パ村で家畜の飼育や米類などの農作物の育成に一所懸命に取り組み、何気ない日常を楽しんでいました。約10年前のことです。その日常が紛争によって破壊され、避難を余儀なくされました。以来、ラフムルアンさんは国内避難民として、マイン・カウンKBCキャンプで暮らしています。
「避難民キャンプでの生活には多くの困難が伴います」と語るラフムルアンさん。中でも、清潔な水を手に入れることが一番難しかったといいます。
キャンプに住む人はみな、一カ所しかない手押しポンプから水を汲んでいたので、十分に水を確保することはほぼ不可能でした。その水も濁っていて、鉄分が多く、飲料用や調理用には適していませんでした。洗濯をしても服にシミがついてしまうほどです。
ラフムルアンさん
カチン州の中でも、紛争で大きな被害を受けたマイン・カウン村。村民6,200 人が清潔な水へのアクセスは限られていました。そんな状況下にありながら、村は1,600人の避難者を受け入れたのです。
避難者も、受け入れ先のコミュニティーも、手堀りの井戸や手押しポンプから水を汲んでいましたが、飲料水や調理用、洗濯用に適しているとはとてもいえませんでした。
赤十字国際委員会(ICRC)は、カチン州でも遠隔地にいる住民や紛争の影響を受けた人々に対して、清潔な水へのアクセスを改善すべく、過去5年間で4件の重力式給水システム事業を実施。11,000人以上がその恩恵にあずかりました。
同システムは、効率的に水を運べるように、高台の水源から低地に向けてパイプを通し、サムピョン村(プタオ郡)、ラワ村(パカント郡)、タウングリン、マイン・カウン村(マンシ郡)に設置しました。離れた場所へ水を汲みにいく時間や労力を減らし、清潔な水が手に入りやすくなります。
「現場調査のために村を訪ねた当初、住民は、清潔な水を十分確保するのが難しいと話してくれました。同時に、現状を打開するために一緒に取り組んでいく強い意志もみなぎっていました」と語るのは、ICRCエンジニアのコテインオ。地元の人たちがこぞってやってきて、資材を運んだり、パイプ設置用の溝やくぼみを作ってくれたり、複数の村に水が届くようにパイプを連結してくれたといいます。
システムの有効性は、地形をはじめ、水源から実際に水を使用する場所までの距離、そして水の需要量など、さまざまな要因によって変わります。「カチン州ではこの方法が効果的だと証明されました」。
重力式給水システムは、電気や燃料が入手困難な地域においては最もシンプルな構造で費用効果も高いのです。
コテインオ、ICRCエンジニア
ラフムルアンさんは、このシステムによって生活が大きく向上したといいます。
今では、清潔な水があり余るほどあります。これで、水による健康被害も心配しなくていいし、村の催事を行う際も、水が足りるかどうか不安に思わなくてすみます。ICRCからの援助すべてに感謝です。
ラフムルアンさん
マイン・カウン村に住むラジンバウマイさんは、手押しポンプを修理できる人を探すのに苦労していたと話します。
私には4人の子どもがいるので、洗濯の量が多いんです。手押しポンプから水を汲んでいた頃は本当に大変でした。ICRCが新しいシステムを立ち上げてくれてからは、生活に必要な水を心配することもなくなりました。量も安全性も十分確保でき、今では好きなだけ水が飲めます。
ラジンバウマイさん