「食事を取る」か「暖を取る」か・・・究極の選択を迫られているアフガニスタン 肺炎と栄養失調が子どもたちの間で急増中
カブール(ICRC)―アフガニスタンで経済危機が加速する中、冬の到来とともに肺炎や栄養失調にかかる子どもの数が急増していることを、赤十字国際委員会(ICRC)が11月24日に発表しました。
ICRCが国内各地で支援する33の病院では、栄養失調にかかった子どもの数が、2021年通年の33,000人に対して、2022年の現時点ですでに63,000人を超えて、9割増となっています。一方、首都カブールで支援している小児科病院で治療を受けている5歳未満の肺炎患者の数は、前年同期比で55パーセント増加しています。
カブールにあるインディラ・ガンディー病院でICRCの支援事業を統括する医師のアブドゥル・カユム・アゼミは、次のように語ります。「アフガニスタンでは、過去数年にわたり貧困が深刻化し続ける一方です。ほとんどの人が、子どもが寒さで震えないよう家の中で暖を取る資材すら買えていません。さらに、十分な食事を与えることもできないため、肺炎にかかる子どもが増えています。今後、肺炎と栄養失調を両方抱える患者も増えるでしょう」。
激しい戦闘は鳴りを潜めたにもかかわらず、アフガニスタンは依然として人道上憂慮すべき状況にあります。人口の半数超にあたる2,400万人が人道支援を必要とし、半数にあたる2,000万人が深刻な食料不足に陥っています。国際社会による制裁や、ロシアとウクライナの国際的武力紛争が経済面に与える打撃で、危機が深まり、数百万ものアフガニスタン人が生計を立てられなくなっています。小麦や食用油、肥料の価格が高騰する一方で、人々は収入源を失い、貯蓄も底をついています。加えて、相次ぐ地震や干ばつ、洪水で、農業にも暗い影を落としています。
「アフガニスタンの人々は、暖を取るか、食事を取るか、究極の選択を迫られています。それどころか、お金がなくてどちらも手に入れられず、栄養失調や肺炎に苦しむ人が恐ろしい勢いで増えているのです」と語るのは、今週同国を訪れていたマーティン・シェップICRC事業局長。「現地のニーズは膨大で、援助団体だけですべてをまかなうことは不可能です。だからこそ、各国政府や開発機関がアフガニスタンに再び目を向けて、助けを求める数百万もの人々に支援を提供し続けるよう、私たちは要請しているのです」。
私たちは、3人のアフガニスタン人から、現在の苦悩について話を聞きました。
ここで治療を受けても、家に連れて帰ればまた病気なるでしょう。お金がないので、家を暖かくしたり、栄養を取れるような食事を子どもたちに与えたりすることができないのです。子どもを一人すでに肺炎で亡くしていますが、だからといって一体誰に助けを求めればいいのでしょうか。
肺炎を患う生後8カ月の子どもを持つ、日雇い労働者のハジ・ワリさん
生活状況は悪化しています。今は収入源がなく、子どもたちが病気になったときに病院に連れて行くお金もないんです。冬が来たのに、暖をとるために燃やすものすらありません。子どもたちが着る服さえない現状が、ただただ悲しいです
5人の子どもを持つマハジャビーンさん
誰もお金を持っていないから、買い手もいない状況です。みんな、仕事に就くことができず、食事をするお金さえありません。子どもを冬の寒さに凍えさせるか、ゴミを燃やして命をつなぐかしか、選択肢はないんです。
木材商を10年以上営むアッバスさん
アフガニスタンの人々の命を救うために、ICRCは33の病院(総病床数7,000以上)を支援しています。内容は、医薬品購入や運営費、約1万500人の医療スタッフ(3分の1が女性)への給与の支払いなどです。こうした支援は、推定2,600万人に対する医療サービスの提供につながります。また、国内パートナーのアフガニスタン赤新月社が運営する、基礎医療のための46の施設と、病院一カ所もサポートしています。加えて、今年は、最も弱い立場に置かれている1万世帯(8万人)超に対して、基本的なニーズを満たすために多目的用途の現金を支給しました。
「医療スタッフは女性も男性も、人々の命を救うために、勇敢かつ献身的に日々最善を尽くしています。ですが、長い目で見たときに、人道支援組織が公共セクターに取って代わって機能することには限界があります。だからこそ、国際社会がもっと積極的に支援しないとならないのです」とシェップ事業局長は訴えています。