アフガニスタン:障害を持つ子どもを勇気づけるスポーツ

アフガニスタン
2025.09.29
Several disabled Kids in Afghanistan playing football

©ICRC

フットサルのコートを駆け回るとき、12歳のムハンマド・エサンの目はボールに釘づけになります。相手選手にタックルし、もう1人の選手をかわし、ドリブルで突破してゴールを狙います。コートにいるときの彼の興奮と自信をみれば、誰しもエサンがフットサルを愛していることが分かるでしょう。脳性麻痺を患うエサンにとって、フットサルは単なる競技以上のものであり、身体性の回復と社会参加への手段となっています。

エサンがフットサルに出会うまで

エサンの母親であるザリーナによれば、エサンはほんの数年前まで歩くことも座ることも、その他の簡単な作業も自力ではできなかったそうです。2018年、赤十字国際委員会(ICRC)がカブールで運営するリハビリセンターに治療のためやってきました。間もなく、回復の兆しを見せ始め、センターのフットサル・イニシアチブに参加することになりました。

「生まれつき視力に障害があったエサンは、3歳ごろに足の痺れに気づきました。エサンをいくつもの病院に連れて行きましたが、リハビリセンターを知るまでは、何ら治療法がありませんでした。治療前は、用を足しにいくような単純な動作さえも困難でしたが、現在、全ての身の回りの作業を自分だけで簡単にやってのけます」とザリーナは言います。自宅が体育館から離れているため、ザリーナは、エサンをリハビリに連れて行くため、毎週火曜、金曜、そして日曜の朝5時に起床します。

Zareena, Ehsan’s mother and Mohammad Ehsan

ICRC/Mohammad Masoud SAMIMI

「エサンには練習をとおして成長して欲しい」とザリーナは言います。リハビリプログラムに参加し始めた当初は、エサンはつま先立ちで歩いていたそうです。

子どもたちの人生に変革をもたらすフットサル

ICRCフットサル・イニシアチブは2010年に始まり、アフガニスタンの障害を持つ子どもの長期的な身体的リハビリと社会参加に焦点を当てています。脳性麻痺やポリオを患う子どもたちを特に対象とし、スポーツを通した治療の提供、自立の促進、そして認知能力や社会性の向上を図り、障害をもつ人びとに勇気を与えてきました。

子どもたちが自信をつけ、同世代の友人とのコミュニケーション能力や社会性を身につけるなか、保護者たちも、子どもたちの変化、例えば気分や意欲、対人関係における変化を感じています。

リハビリの一環としてのスポーツ

カブール、ヘラート、そしてマザーリシャリフでは、14歳未満の子ども94人と大人46人がICRCのフットサル・イニシアチブに参加しています。このイニシアチブは、主に6歳以上の子どもを対象に子どもの発達段階や医療的ニーズにあわせて活動内容を調整しています。カブールには4つのフットサルチームがあり、ヘラートとマザーリシャリフには各2チームがあります。参加者は年齢と障害の種類によってグループ分けされます。このプログラムはICRCが管理・資金提供を行い、イタリアのNGO NOVE Caring Humansなどの団体が、必要に応じてユニフォームや道具を提供しています。

©ICRC


ICRCのフットサル・イニシアチブは、アフガニスタンの障害をもつ子どもたちの人生を、静かに、しかし深く変革してきました。このように共感と思いやり、創造力、そして地域社会の支援さえあれば、例え小さな取組みであっても、大きな影響を与えることができるのです。

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