国際赤十字・赤新月運動、コロナウイルス感染症対策で900億円の人道支援を要請

プレスリリース
2020.03.30
マスクを着けている黒人女性と、周りの人にマスクを着けられている小さな子供

©Aaref Watad/AFP

ジュネーブ、2020年3月26日 — 国際赤十字・赤新月運動 (以下、赤十字運動)は3月26日、紛争や災害、開発途上などを理由に弱い立場に置かれているコミュニティーを新型コロナウイルス感染症から守り、様々な影響から立ち直れるよう、8億スイスフラン(約900億円)の緊急支援を国際社会に対して改めて要請しました。
※1スイスフラン=約112.5円(2020年3月30日現在)

すでにパンデミック(世界的大流行)となっている新型コロナウイルス感染症ですが、必要物資へのアクセスを改善すれば、さらなる感染拡大や死者の増加を食い止めることが可能です。

国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)フランチェスコ・ロッカ会長:「今回のパンデミックで世界中の医療が危機にさらされ、医療体制がぜい弱な国や地域ではさらに状況は悪化しています。ウイルスの感染拡大を防ぐためには、コミュニティーの断固とした対応が必須です。感染症は全ての人に等しく襲いかかりますが、移民や避難民、ホームレス、災害に弱い地域に住む人たちの感染リスクは、顕著に高まります。医療へのアクセスが制限される可能性も最も高く、収入減による影響も一番に懸念されます。こうした人々の存在を忘れずに、コロナ対応の最前線に立つ赤十字・赤新月社のボランティアへの支援を強化しなければなりません」

赤十字運動は、赤十字国際委員会(ICRC)、IFRC、世界192カ国の赤十字・赤新月社の3機関から構成されます。

IFRCは、各国赤十字・赤新月社の活動に充てるため、5億5000万スイスフラン(約619億円)の支援を求めています。 医療や物資の確保と配布、リスクコミュニケーション、世界に散らばるコロナ対応要員が得た教訓の体系化、世帯向け現金支給、大規模感染の回避などの活動です。IFRCが各国赤十字・赤新月社をバックアップするために1億5000万スイスフランを要し、残りの4億スイスフランは各国の赤十字社および赤新月社が国内で募ることになります。

ICRCは、2億5000万スイスフラン(約281億円)の拠出を要請しています。資金は、紛争や暴力を伴う状況下での対応に充てられ、医療施設や収容施設の支援、避難民や被拘束者の感染防止および医療サービスへのアクセス確保、また、各国赤十字社・赤新月社の活動支援が含まれます。

ペーター・マウラーICRC総裁:「今、国際社会がしなければならないことは、紛争の影響を受け物資不足に陥っている地域への支援強化です。戦争によって数多の忍耐を強いられているコミュニティーが、ここに来て新たな人道上の惨劇にさらされるリスクにおののいています。ウイルスは国境を越えて広がります。この世界規模の問題を解決できるとしたら、それは国際社会の結束した行動だけでしょう」

赤十字運動は、すでに感染症関連の事業を展開しています。医療サービスの拡充や地域社会との連動、また、社会的弱者を対象に世界的大流行に備えた啓発を実施している各国赤十字・赤新月社を支援しています。その一環として、医療施設への物資の補給や、衛生管理および感染予防の強化を収容施設内においても実施。加えて、地域社会が基本的なサービスを受けられるように保障することで、ウイルスの流行による社会・経済への影響を最小限にとどめるよう努めています。各国政府に対しても、感染症の早期発見や感染者の隔離や治療、感染経路の特定などについて定めた世界保健機関(WHO)のガイドラインを政策に反映できるようサポートすることが可能です。

赤十字運動もWHOも警告は一致しています。世界的な大流行に歯止めをかけるには、国家や国内レベルでの資金拠出や支援など、社会全体への一貫したアプローチが必要となります。世界中が、新型コロナウイルス感染症の衝撃を受けていることでしょう。その中で、社会的に最も弱い立場にある人たちはとりわけ感染リスクが高いとされています。政府、個人、コミュニティー、公共機関、そして支援者があらゆるレベルで連携し、今回の危機による深刻な被害を最小限に抑えなければなりません。

赤十字運動は、世界最大の人道支援ネットワークを誇ります。地域に根差したボランティアや職員が、最も弱い立場にある人たちに手を差し伸べています。医療や社会福祉制度が整備されていない国に住む人々、被災直後で立ち直ろうとしている人々、移民や避難民、戦闘や暴力にさらされている人々、都市部のスラム街に暮らす人々、被拘束者、そして新型コロナウイルス感染症によって社会的、経済的な被害を受けている人々に、私たちは寄り添います。