よくある質問:中東での紛争激化と国際人道法

©Mohammad Yassine/ICRC
世界各地で130以上存在する国際的武力紛争(国家間の紛争)。その中でも、特に中東地域で最近激化している戦闘を例に、紛争当事者が守るべき国際人道法の重要な原則や規則についてわかりやすく説明します。
よくある質問
+国際人道法って何?いつ適用されるの?
国際人道法(以下、人道法)は「戦時国際法」とも呼ばれ、国家や紛争当事者の行動を含めた武力紛争を規律する国際的なさまざまルールを体系立てたものです。
国連憲章のような国家間での武力行使の合法性を規定する国際法とは異なります。
人道法は多面的で、武力紛争において生じるさまざまな状況や側面を規律する異なるルールで構成されています。例えば、軍事作戦の実施方法には一定の制限が設けられています。戦闘に関する多くのルールは、「区別」「均衡性」「予防」といった基本原則に基づいています。また、武力紛争の影響を受ける人びとの処遇についても規定していて、紛争当事者の支配下にある人びと、例えば拘束されている人や占領下に住む人びとがどのように扱われるべきかについても定めています。
+人道法によって民間人や民用物は戦闘の危険からどのように守られるの?
人道法には、紛争当事者間の戦闘行為、すなわち武力紛争中の敵対行為を規律する3つの基本原則、「区別」「均衡性」「予防」があります。これらは慣習法上の原則で、国際的武力紛争か、非国際的武力紛争(一国内における紛争)かを問わず、あらゆる武力紛争において国家や非国家主体である武装集団、そして戦闘に直接関与する民間人を含むすべての当事者が、いかなる状況であっても遵守しなければなりません。また、特定のカテゴリーに属す人びとや物は、特に保護の度合いが強められます。例えば、医療に関連する施設や医療従事者、搬送手段に加えて、民間人の生存に不可欠な物や、危険な力を内包する施設などです(後述「人道法は民間インフラを保護しているの?」参照)。
これらの原則や規則は、武力紛争の一環としておこなわれるあらゆる戦闘行為に適用されます。すなわち、地上戦、空戦、海戦だけでなく、サイバー空間や宇宙空間における作戦にも適用されます。
その目的は、民間人を武力紛争の影響から保護することです。軍事的必要性と人道との間でバランスを図り、紛争当事者が使用できる兵器や手段、そして戦闘方法に対して禁止事項や制限を課すことによって達成されます。
区別の原則は、戦闘員と民間人、軍事目標と民用物(家屋や民間インフラ、環境など)を区別しなければならないことを要求しています。当事者は、攻撃を戦闘員や軍事目標に対してのみ向け、決して民間人や民用物に向けてはなりません。無差別攻撃、すなわち人道法が要求しているように特定の軍事目標に定めていない攻撃や定めることができない攻撃、またはその影響を人道法が要求するように限定することができない攻撃も、厳格に禁止されています。同様に、民間人に恐怖を広めることを主な目的とする暴力行為または威嚇、民間人を飢餓に陥らせることを戦争手段として用いることも禁止されています。
攻撃が戦闘員や他の軍事目標に向けられる場合でも、均衡性の原則を尊重しなければなりません。これは、予期される具体的かつ直接的な軍事的利益と比べて、民間人の死傷や民用物への損害が過剰に上回る恐れのある攻撃の禁止を意味します。言い換えれば、軍事目標は想定される軍事的利益に対して民間人の被害や損害が不均衡ではないと結論づける評価をおこなったうえではじめて攻撃することが可能となります。
予防の原則は、紛争当事者のすべてに対して、軍事作戦の影響から民間人および民用物を保護するため常に注意を払うことを求めています。攻撃の実施に際しては民間人への重大な危険が常に伴うため、人道法は攻撃の計画、決定、または実行に関与する者に対して詳細にわたり義務を課しています。特に、実行可能なあらゆる予防措置として下記を講じなければなりません。
- 標的が軍事目標であることを確認すること
- 民間人の死傷および民用物の損害を回避し、いかなる場合でも最小限に抑えること
- 当該攻撃が均衡性の原則に違反する恐れがあるかどうかを事前に評価すること
- 攻撃が区別または均衡性の原則に違反することが明らかになった場合には、その攻撃を中止または停止すること
- 民間人に影響を及ぼす恐れのある攻撃について、効果的な事前警告を与えること
さらに人道法は、紛争当事者に対して、自らの支配下にある民間人と民用物を攻撃の影響から保護することも求めています。都市部では、軍人と民間人、軍事目標と民用物が混在していることが多く、人口密集地での戦闘は当事者にとって軍事的にも民間人被害の回避という点でも重大な課題をもたらします。市街戦においては民間人が特有の危険にさらされるため、人道法の原則および規則によって与えられる保護は極めて重要です。
+どのような人や物が攻撃対象となり得るの?
民間人と民用物は攻撃から保護され、標的にしてはなりません。人道法は武力紛争の当事者に対して、攻撃が特定の軍事目標に向けられていることを徹底するよう求めています。そのためには、標的の状況について合理的で確実な判断を要し、目標を達成するための継続的な検証も必要となってきます。人や物に標的を定める場合には、ケースバイケースで個別の評価が求められます。
人について言えば、戦闘員(すなわち、医療・宗教要員を除いた国家の軍隊の構成員や非国家主体である武装集団の軍事部門の構成員)は攻撃対象となり得ますが、戦闘不能な人たち(傷病者、難船者、無力化された者、明確に降伏の意思を示している者、または敵の権力下にある者)には攻撃してはなりません。民間人は攻撃から保護されていて、直接敵対行為に参加している間に限って例外的に攻撃対象となり得ます。軍事的地位や指揮系統にいない政治・行政関係者は民間人であり、その職務をもって攻撃対象とすることはできません。
物について言えば、民用物は攻撃から保護されなければなりません。攻撃対象となり得るのは軍事目標のみで、その性質、位置、目的または用途によって軍事行動に有効に寄与し、作戦を実行する時点の状況下で明確な軍事的優位性をもたらす物を指します。軍事目標と認められるためには、その物が戦闘と密接に関連していなければなりません。資金面での支援など、単に戦争遂行を支援するだけ場合、正当な攻撃対象とはなりません。
+人道法は民間インフラを保護しているの?
民間人に不可欠なサービスを提供するインフラは、原則として民用物に該当し、戦闘の影響から民間人や民用物を保護するすべての人道法の規則によって守られます。特に重要なのは、直接的な攻撃、無差別攻撃、不均衡な攻撃の禁止、そして攻撃時の予防措置や攻撃の影響に対する予防措置に関する規則が適用される点です(前述「人道法によって民間人や民用物は戦闘の危険からどのように守られるの?」参照)。
武力紛争下において民間人やその他の保護を受ける人びとに不可欠なサービスは、それぞれが相互に連結し依存し合っています。そのため、一つが途絶するとドミノ効果や波及効果が生じ、複数のサービスが停止したり、さらには崩壊したりする可能性があります。例えば、電力供給は給水や衛生サービス、ゴミ処理、コールドチェーンの維持に不可欠です。また病院や食料の生産・流通も、安全な水、衛生、電力の安定供給に依存しています。
重要インフラに損害を与えると予測される攻撃は、当該兵器が直接影響を与える範囲を超えて広範にわたり民間人に影響を及ぼし、攻撃直後にとどまることなく長期間にわたり影響が続く可能性があります。このような被害は、攻撃との因果関係がある場合、また、攻撃時に合理的に予見可能である場合、均衡性の原則および攻撃時の予防措置の両方に関連します。
人道法はまた、特定の種類の重要インフラに対して、特別かつ強化された保護を与えています。例えば、病院などの医療施設や医療搬送手段、民間人の生存に不可欠な物、危険な力を内包する施設、さらに文化財や自然環境などです。生活に欠かせないその他の施設の効果的な運用に重要なエネルギーインフラの一部も、特別な保護の対象となります。保護の内容はそれぞれ異なりますが、多くの場合、攻撃以外の行為からも保護されたり、たとえ軍事目標に該当する場合であっても一定の保護が及んだりすることを意味します。
エネルギーインフラ、すなわち民間人への電力・燃料・ガス供給などを可能にする重要インフラも、原則として民用物であり、攻撃してはなりません。これらは、軍事行動に有効に寄与し(例えば、軍事施設に電力を供給する発電所など)、攻撃によって明確な軍事的優位が得られる場合に限り、軍事目標となり得ます。国や地域の電力網全体(または他のエネルギーネットワーク全体)が敵の支配下にある場合、それらを一括して、あるいは先取り的に軍事目標とみなすことは禁じられています。さらに言えば、たとえ間接的に戦闘能力を支えている場合であっても、その目的が相手の経済力を弱体化させるためであったり、交渉のテーブルにつかせるため、住民の意思に影響を与えるため、または政治指導者を威圧するための攻撃は、人道法によって禁止されています。
場合によっては、重要インフラやその他の民用物が同時に民間目的と軍事目的の両方で使用されることがあります。このような、いわゆる「二重使用」されている対象物は、人道法上の軍事目標の要件を満たす場合には標的となり得ます(前述「人道法によって民間人や民用物は戦闘の危険からどのように守られるの?」参照)。しかし、そのようなインフラへの攻撃を計画・決定する者は、攻撃によって生じる民間人への付随的被害(当該対象物の民間利用への影響を含む)を考慮し、それらを回避または少なくとも最小化するために実行可能なあらゆる予防措置を講じ、過大な被害が及ばないよう徹底しなければなりません。
+武力紛争の当事者への武器移転に関するルールもあるの?
武器貿易条約(ATT)は締約国に対して、人道上の被害を軽減する観点から、戦争犯罪やその他の国際犯罪に使用されることを認識している場合には、条約の対象となる通常兵器、弾薬および付随する部品類の輸出、通過、その他の移転を許可することを禁止しています(第6条)。またATTは、これらの兵器や物資が人道法または人権に対する重大な違反を引き起こす、あるいは助長する明白な危険がある場合にも、輸出を禁止しています(第7条)。さらにいくつかの地域的な枠組みも、人道的観点から武器の移転を制限し、事前に評価をおこなうことを求めています。
武器の移転が人道法違反に寄与する明白な危険がある場合には、ATTの締約国でない国を含め、すべての国家が武器を紛争当事者に移転しない義務を負います。加えて、武器を移転する国家は、その取引相手による人道法違反を予防し止めるために、合理的に可能なあらゆる措置を講じなければなりません(1949年ジュネーブ諸条約共通第1条)。進行中の武力紛争の当事者に武器を供給する国家は、人道法違反の手段となり得る武器の提供をおこなう、もしくは差し控えることができる立場にあるため、人道法の遵守を徹底するうえで特に大きな影響力を持つと考えられます。武器移転の条件付け、制限、または停止は、武器供給国が人道法違反を予防し、止めるために取り得る実践的な手段です。
武力紛争当事者への武器移転について、過去の日本語記事はこちら
+武力紛争におけるAIの使用を規律するルールもあるの?
人道法は軍事用途におけるAIの使用を明示的に禁止または制限しているわけではありませんが、その開発および使用には制約があり、AIが兵器システムに組み込まれたり戦闘の遂行に用いられたりする場合には厳格な制限が課されます。そのため、AIも他の新しい戦争技術と同様に、既存の人道法の原則と規則に従って使用することは可能で、実際の使用にあたってはそれらルールに従わなければなりません(前述「人道法によって民間人や民用物は戦闘の危険からどのように守られるの?」参照)。
軍事分野におけるAI関連技術の発展と依存傾向を踏まえると、人道法上の義務は人間に課されるものであることを改めて認識することが重要です。攻撃の計画、決定、実行における適法性を徹底する責任は人間にあり、その判断についても人間が責任を負い続けます。これらの評価には、区別の原則、均衡性の原則、攻撃時の予防措置のように、戦闘行為の実施に関する原則と規則に見合っているかどうかの判断が含まれますが、そうしたことは機械に委ねることはできません。
もっとも、指揮官や戦闘員が攻撃に付随する被害の推定や弾薬の爆発範囲の計算などの作業をおこなうために、AIを含む支援ツールを使用すること自体を禁止、もしくは否定しているわけではありません。ただし、AIが導き出した結果は、あくまで情報源や計算上の指標として受け取られるべきで、攻撃が人道法に適合しているかどうかの法的判断そのものではありません。したがって、それらのシステムやツールは、人間の意思決定を支援するように設計・運用される必要があり、人間の決定を妨げたり代替したりするものであってはなりません。
+国際人道法は海上での軍事作戦を規律しているの?
船舶に対する攻撃をはじめ、沿岸地域のコミュニティーに及ぶ被害に至るまで、海戦は海上と陸上の双方に損害をもたらす可能性があります。また重要な海洋インフラにも危険が及ぶ可能性があるため、武力紛争のルールが厳格に守られることが不可欠です。
海上での戦闘は、海域における武力紛争に適用される国際法によって規律されます。この枠組みは、海域の発展とともに形成され、発展してきた条約および慣習法から成り立っています。国際人道法-特に1949年ジュネーブ諸条約第二条約-に加えて、海洋法や海上中立法などです。1994年のサンレモ海戦マニュアルは、これら規則をまとめた代表的な文書として、広く認識されています。
戦場においては、どんな状況下でも、民間人や非戦闘員、民用物は保護されなければならず、これは海上においても同様です。ただし、海戦には特有の事態が起こりうるため、特別な規則が設けられています。例えば、封鎖や航行禁止区域など戦術上の手段・方法や、拿捕や禁制品に関する措置など攻撃に至らない手段などです。
他の戦闘と同様に、海戦に用いる手段や方法は、無制限に選択できるわけではありません。ミサイル、魚雷、砲弾、機雷などの兵器は、区別・均衡性・予防の原則に従って使用されなければなりません(前述「人道法によって民間人や民用物は戦闘の危険からどのように守られるの?」参照)。水上艦艇、潜水艦、航空機はいずれも、それらの規則に拘束され、無人・自律型の海洋システムといった新技術を採用した兵器についても同様です。
商船やその他の民間船舶は、兵員輸送や軍事作戦への直接的支援、戦闘行為への関与などにより軍事目標となる場合を除き、常に攻撃から保護されます。仮に軍事目標となる場合であっても、乗組員や乗客、周辺の船舶、海洋インフラや海洋環境への被害を最小限に抑えるため、均衡性の原則と予防措置の規則が適用されます。
+武力紛争下における公海の航行の自由や封鎖についてはどんなルールがあるの?
一般に、公海における航行の自由は武力紛争中も存続します。
敵の港や沿岸へのすべての船舶の出入りを制限する軍事作戦としての「海上封鎖」は、厳格な規則の下でのみ合法とされます。封鎖は、事前に宣言されていなければならず、軍事上の実効性があり、公平に実施されなければなりません。封鎖によって民間人を飢餓に追い込んだり、人道支援を妨げたりしてはならず、民間の被害は想定される軍事的利益と比べて過度であってはなりません。また、中立国の港や沿岸へのアクセスを妨げることも禁止されています。
+傷病者や死者、難船者、被拘束者は、海上戦でどう保護されるの?
武力紛争中、海上にいる傷病者や難船者は、等しく保護され、適切な治療を受けなければなりません。敵の攻撃だけでなく、海洋自体も危険であるため、海上での救助義務が法的に定められていて、救助や医療行為をおこなう船舶も保護されます。また、戦闘によって海上で命を落とした人びとの尊厳も尊重されなければなりません。
1949年ジュネーブ諸条約第二条約は紛争当事者に対して、戦闘後に海上で傷病者や難船者、死者を捜索し収容するためのあらゆる可能な措置を取ることを義務付けています。人道法は長距離攻撃をおこなう船舶-あるいは浮上した潜水艦-が迅速に救助をおこなうことを常に要求してはいませんが、少なくとも救助を可能にする代替手段を検討するよう義務付けています。例えば、救助を要する位置を当局、敵または中立船舶、あるいは救助活動が可能な人道支援組織に報告することなどがあります。この義務を誠実に捉えなければ、第二条約の保護目的は達成できません。状況に応じて適切な注意を払い、実施されなければなりません。紛争当事者の各当局は、現実的に実行可能な措置を、誠実に検討する必要があります。
海戦の厳しい状況下では、できるだけ多くの人びとを助け、遺体を回収するため、中立船舶や沿岸の救助組織の動員が最良、もしくは唯一の手段となることがあります。状況に応じて、紛争当事者は近隣の中立船舶に知らせて、乗船して救護するよう協力を求める法的義務を負う場合があります。中立船舶は、海洋法や海事法によって救助活動の義務が課されることもあります。
交戦当事者や中立国は、自国の領土に入った傷病者や難船者を保護し、その尊厳を尊重して、各自の状態に応じた医療の提供を徹底するとともに、死者や行方不明者を捜索・収容・識別するための適切な措置を取る義務があります。人道的に扱い、暴力や脅迫から守り、十分な食料や医療、法的保護を与えなければなりません。
中立法に基づく義務の解釈に基いて、中立国が難船した戦闘員を拘束する場合、1949年ジュネーブ諸条約第三条約に従って戦争捕虜として扱われなければなりません。難船した商船乗組員については、可能な限り速やかに解放される必要があります。
海上で拘束された人びとは特に弱い立場に置かれるため、船上での収容は一時的な措置としておこなわれ、可能な限り早く陸上へ移送することが求められます。収容中は適切な処遇を受け、登録も含め正しい手続きを行う必要があります。
+捕虜とは誰を指すの?
1949年ジュネーブ諸条約第三条約では、捕虜に対する保護が詳細に定められています。国際的武力紛争において、紛争当事者の軍隊の一員で、どんな形であれ敵の手中にある人びとは捕虜と見なされます。
捕虜の地位は、国家のために戦っていて、民間人と区別される形で一定の要件を満たしている他の部隊の構成員にも与えられます。文官や戦争特派員、戦闘をバックアップする業者など、軍隊は特別に同行することを承認した民間人を配置します。これらの者も、第三条第4条で定められた特別枠の人びとと同様、捕虜の地位が認められていて、当該者の国籍によって左右されるものではありません。
医療・宗教要員が拘束された場合、捕虜の支援に必要な場合を除いて、所属する組織に送還されなければなりません。捕虜を支援する理由で例外的に留め置かれる場合には、捕虜としてではないものの、少なくとも捕虜と同等の利益と保護を受ける権利があります。
+人道法は、捕虜だけでなく、ほかの理由で拘束されている人たちも保護しているの?スパイや破壊工作員はどうなるの?
人道法は、捕虜以外にも、国際的武力紛争に関連して拘束されたすべての者を保護します。これには、治安上の理由で収容された者や、紛争に関連しているかどうかにかかわらず刑事事件で拘束・有罪となった者も含まれます。例外はあるものの、拷問の禁止などの基本的保証は、当該者の状況や拘束の性質に関わらず適用されます。
1949年ジュネーブ諸条約第三条約に基づく捕虜の地位に該当しないものの、戦闘行為に関与した者は、1949年ジュネーブ諸条約第四条約によって保護されます(国籍要件を満たす場合)。第三条約の捕虜や、第四条約の保護を受ける者にも該当しない者(国籍要件を満たさない場合)であっても、人道法によって保護されます。第四条約に基づく保護を受ける者の地位は、たとえその者がスパイ活動、破壊工作、その他同等に重大な安全保障上の脅威となる活動をおこなった場合でも失われません。しかし、同条約は、この種の個別の事例において正当な理由がある場合には、通常は認められないような一定の制限を例外的に認めています。(1977年に採択された、1949年ジュネーブ諸条約の第一追加議定書が適用される場合、占領地では、こうした制限はスパイ活動の場合にのみ認められ、破壊工作やその他の安全保障上の脅威には適用されません。)
こうした制限は、国家の安全保障上必要であり、主に当該者と外部世界との通信に関するものでなければなりません。例えば、抑留されている者は通常、便りのやり取りや家族の訪問を受ける権利を有しますが、スパイの場合はそれらの権利が制限されることがあります。しかし、条約は、当該者を非人道的に扱うことや、公正かつ通常の裁判を受ける権利を奪うことにつながる制限を課すことを明確に禁止しています。
スパイ行為中に捕虜となった軍人は、捕虜の地位を有しません。しかし裁判を経ずに有罪判決や刑罰を科すことは禁止されています。当該者は、上述の制限がある場合を除き、第四条約、第一追加議定書第75条、あるいは慣習法によって保護されます。
ICRCによる訪問は、守秘義務など職務を遂行する際に必要な手法を用いて、完全に人道目的でおこなわれます。そのため、スパイや破壊工作員であることを理由に、抑留通知やICRCによる訪問の権利を制限することはできない、というのがICRCの見解です。また、スパイや破壊工作員が抑留されたり、指定居住地へ配置されたり、もしくは2週間以上拘束されたりする場合は、被保護者として情報を収集し、関係各所に通達しなければならないという条約上の義務が課されます。
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