紛争地域における気候変動対策

お知らせ
2021.11.18

気候変動がもたらす危機が、人類の生存を脅かします。悲惨な結末を避けるためにも、それ相応の政治的努力が必要です。

しかし、たとえ画期的な緩和策が実行されたとしても、気候変動は数世代にわたって人々の暮らしに深刻な影響を与え続けることでしょう。中でも、紛争下にある国は、気候変動の影響を最も受けやすい国です。赤十字国際委員会(ICRC)は、気候変動と紛争が重なることで、いかに人道ニーズが増大し、必要不可欠なサービスが弱体化するかを日々目の当たりにしています。例えば、、、

アフリカのマリでは2012年以降、武力紛争が北部から中部へと広がり、多数の死者や避難民を生み、経済破綻を引き起こしました。そこに、気候変動が拍車をかけています。暑さや乾燥が加速する同国では、国土の3分の2を占めるサハラ砂漠が拡大し続けています。年間降雨量の予測は一層困難になっていて、洪水や干ばつなどの異常気象が多発しています。これは、伝統的な放牧に影響を及ぼし、牧畜民は自然資源が逼迫した地域に追いやられ、農民との間に緊張関係が生じるリスクが高まっています。とはいえ、人々が気候変動に適応するために農法を変えたり生活様式を完全に変えたりすることは、紛争や情勢不安によって困難な状況にあります。

気候変動および情勢不安により3人の子どもが国外へ避難したマリ人の女性。旦那さんが亡くなり、子どもたちとも連絡が取れないため、薪を売り自身の生計を立てている。 ©ICRC

マリの周辺の国々も苦しんでいます。ブルキナファソ、ニジェール、チャド、モーリタニアを含むサヘル地域では、紛争の激化や食料不安の増大、気候変動の加速など、さまざまな危機が重なり合っています。国連によると、気候変動が原因でサヘル地域の農地の約8割が損なわれ、食料の供給が激減しています。この地域では、2,900万もの人々がこれまで以上に人道支援と保護を必要としていることが報告されています。2050年に人口が現在の2倍以上、1億9千万人に上ると予想されていることを考えると、人々が長きにわたって危機的状況に陥る可能性が非常に高いといえます。

ブルキナファソの避難民キャンプで、ICRCからの食料配付を待つ人々。徒歩、またはロバなどを使い数時間かけて移動し、支援を求めに来ている。 ©ICRC

また、アフガニスタン、ソマリア、イエメンなど、その他の国や地域でも、気候変動と紛争が相まって深刻な影響が及んでいるのを私たちは目の当たりにしています。

ソマリアでは紛争などにより、300万人近くが避難民となり、国民の4人に3人が1日2ドル(約230円)以下での生活を強いられている。そこに拍車をかけたのが、昨今の気候変動問題。主産業である畜産業が行えなくなったため、伝統的な生活様式を放棄せざるをえくなったケースが増えている。 ©ICRC

COP26におけるICRCの呼びかけ

国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)は10月31日から11月13日にかけて、グラスゴーで開催されました。

COP26に先立ち、国際赤十字・赤新月運動は「コロナ禍および気候変動下における地域支援」に関するサミットを実施。最終日には、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)とICRCの両トップが、世界のリーダーに向けた5つのお願いを共同声明の中に盛り込みました。

声明はこちら:https://jp.icrc.org/information/cop26-red-cross-red-crescent-movements/

COP26期間中は、紛争地で活動するICRCとして、戦闘下にある国や地域における気候変動対策を支援するよう要請。気候変動の影響を最も受けやすく、対応能力が十分でないとされる25カ国のうち14カ国は紛争下にあるとしたうえで、まずはその認識を共有し、そうした国々への支援の拡大、また目的や実情に適った気候変動対策資金の投入を呼びかけました。

COP26が閉幕してみると、いまだCO2排出削減に向けた課題は山積みで、紛争の影響下など弱い立場に置かれているコミュニティーへの支援についても満足のいく結果が得られたとは言えません。引き続き議論を続け、今回合意されたコミットメントに関しては確実に実行していくことが大事です。私たち赤十字も一丸となって、紛争地における気候変動への対策を強化するとともに、他の人道団体や開発銀行、研究者や専門家を巻き込んで効果的な施策を打ち出すことで、次回のCOP27で有益な貢献ができるよう全力で取り組みます。

※中立・独立・公平を掲げるICRCは、政治的な議論には介入せず、純粋に人道的見地から支援・保護を提供する組織として、オブザーバー権限でCOPに参加しています。

アフリカ開発銀行との共同イベント

COP26と並行して、ICRCはアフリカ開発銀行とハイレベルイベントを共催。政府や開発セクター、市民社会、人道分野のパートナーとともに、紛争下にあるコミュニティーが気候変動のリスクによって一層弱体化している事実を認識するよう訴えました。

イベントを共催した両者は、それぞれの使命と優先事項を全うするうえで、アフリカ大陸で弱い立場に置かれている人々の問題に連携して取り組み、互いに補い合い、相乗効果をもたらしています。例えば、2019年にはサヘル地域(ニジェール、マリ、チャド)において、経済面での女性の自立や地位向上のために協働するなど、そのパートナーシップを加速させています。

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