駐南スーダン日本大使がICRC外科チームを訪問

2016.02.05

南スーダン、ジュバ(ICRC)-在南スーダン日本大使館の紀谷昌彦大使は、首都ジュバの軍病院を訪問し、銃撃によって負傷した患者や、赤十字国際委員会(ICRC)の移動外科チームと面会しました。

日本政府は、2016年のICRCの南スーダンにおける活動に3億3000万円(約300万米ドル)の拠出を決定。紀谷大使の訪問は、その政府決定が公表される直前の1月25日に実現しました。

大使は、ジュバ軍病院で働く井上芳門(いのうえ・よしかど)医師と会い、日本が財政面だけでなく、人材面からも南スーダン支援に貢献していることは喜ばしい、と語りました。「日本の貢献は、二つの側面から効果的になされています。日本政府は、とてつもなく大きいこの国の人道ニーズに応えようと、日々献身的に働くICRCをサポートしています。そのICRCの活動には、日本赤十字社から医師や看護師が頻繁に派遣されています。人的貢献でも素晴らしい成果を出すことが期待されます」。

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ジュバの軍病院を訪問する紀谷昌彦大使(中央右)。大使の右隣が井上芳門医師
©Jason Straziuso/ICRC

井上医師は愛知県出身。名古屋第二赤十字病院からICRCの紛争犠牲者救援活動に派遣され、2月4日までの約二か月間、麻酔科医として移動外科チームに在籍していました。学生時代から、海外での救援事業に興味があり、ソロモン諸島ではマラリアの研究に従事、マダガスカルでは母子保健事業のフィールドワークに参加したと言います。日本赤十字社の病院で働くようになってからは、海外救援の研修を経て、2013年にイラクに派遣されました。

医師になって二度目の海外ミッションが今回の南スーダン。ジュバ軍病院では、最初の5週間で74件の外科手術を担当。大半の患者が武器や兵器による負傷でしたが、なかには、街で大規模な爆発事件が起きた際にやけどを負った患者もいました。「基本的な薬と医療器具しか使うことができない状況下で、麻酔科医として仕事をこなすことは、私にとっての挑戦でした。麻酔器はないので、気管挿管が必要な症例では手動で換気をしなければいけませんでした」と井上医師。現場での医療を通して、「“紛争地域における医療活動は、全ての医療活動の原点がみえてくる”という日本の恩師の言葉が何度も頭をよぎりました」と語ります。

軍病院を訪れた紀谷大使の案内役を務めたのは、2008年から院長を務めるアリエ少将。病棟視察後、冷蔵設備のある場所に大使をいざないました。輸血用の血液を保存するため、ICRCが7基の冷蔵設備を提供。それまで院内における血液保管は不可能でした。日本とICRCの貢献について、アリエ少尉は謝意を表明しました。「非常に多くの命が救われています。南スーダンにおける日本の支援には、いくら感謝しても言葉が追いつきません」。

訪問を終えた紀谷大使は、人道主義という価値観を日本は世界と共有している、と述べたうえで、次のように締めくくりました。「日本も2011年の東日本大震災の際には、ICRCを含めた赤十字運動(※)の支援を受けています。このように、支援というのは一方通行ではありません。持ちつ持たれつ、です。私たちの国も世界中の多くの人たちから助けられ、成り立っているのです」。

※正式名称は、国際赤十字・赤新月運動。詳しくはこちら

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軍病院の病棟 ©Jason Straziuso/ICRC