核兵器禁止条約交渉会議におけるICRC総裁ペーター・マウラーの声明
人道の名において核兵器の時代にピリオドを
核兵器廃絶を視野に、核兵器禁止条約の制定を交渉する国連本部での会議において、演説の機会を与えられたことを光栄に思います。
核兵器の禁止と廃絶は人道上の義務です。
赤十字国際委員会(ICRC)と国際赤十字・赤新月運動は、心からそう実感しています。1945年、広島と長崎で傷つき、死に瀕している人々を救おうと奔走していた時、私たちは原爆がもたらす恐ろしい結末を直に目撃しました。以来72年にわたって、日本の赤十字病院は、放射線にさらされてがんを患った数千にも及ぶ被爆者の治療を続けています。したがって、核兵器が長期的にどのような影響を与えるのかについて、私たちは証言することができます。無差別に被害をもたらし、言葉を失うほどの苦痛を与えることが立証された核兵器が国際人道法に見合った兵器であるとしたら、大いに疑問を抱かざるを得ません。そして今日、大多数の国家が、核兵器がどんな形であれ一度使用されてしまったら人道上壊滅的な被害が発生することを念頭に置き、この交渉の場で約束されたことも含めて、核武装の解除に向けて力を尽くす必要性を認識しています。
この会議の歴史上の重要性をいくら強調しても足りないくらいです。核兵器廃絶に向けた最初の呼びかけから70年以上経ち、世界の国々はついに、国際法の下で、これらの武器を地球規模で禁止するために集いました。
禁止条約を採択したところで、すぐさま核兵器が消えるわけではありません。しかし、条約は、核兵器使用が不名誉なことであるという認識をより高め、核リスクの削減に向けた取り組みを支援し、核兵器拡散の妨げとなるでしょう。また、核兵器不拡散条約第6条で謳われている核軍縮に向けた取り組みを達成させる確かな一歩にもなりえます。化学兵器や生物兵器同様、完全かつ明確に禁止することが核兵器の廃絶に向けた礎となります。
核兵器は、人類が発明した最も恐ろしい兵器です。その破壊力や筆舌に尽くしがたい人的被害、そして時空への制御不可能な影響は他に類を見ません。また、取り返しのつかない危害を加え、環境と次世代を脅かします。つまり、核兵器は人類の生存そのものを脅かすのです。
だからこそ私は、人道の名の下、この交渉会議において代表者の皆さんに訴えたいのです。国際人道法に基づく完全かつ明確な核兵器の禁止を、早急に決意を持って採択へと導いてください。そうすることで、核兵器の時代にピリオドを打つ、重要で歴史的な第一歩を踏み出すことができるのです。
原文は本部サイト(英語)をご覧ください。