イスラエルおよびパレスチナ被占領地:人道物資の搬入停止から2カ月、人質1名の移送を仲介

©ICRC
ジュネーブ(ICRC)– 赤十字国際委員会(ICRC)は5月12日、人質1名の身柄をガザからイスラエル当局へ安全に引き渡す重要な役割を果たしました。中立を掲げるICRCによるこうした仲介は、当事者からの信頼あってこそ成り立ちます。
「もう一つの家族が本日再会できたことに安堵しています」と語るのはミリアナ・スポリアリッチICRC総裁。「しかし、残る人質とその家族、そしてガザ全域にいる何十万もの民間人にとって悪夢は依然として続いています」。
「命を救い、停戦を再開するための政治的意志が緊急に必要です。民間人が戦闘から保護され、人道支援がガザに届けられ、より多くの家族が再会できるようにすることが急務です」
人質が拘束されてほぼ600日というおぞましい日々が続いています。国際人道法の観点から、ICRCは一貫して、人質の安全と尊厳を完全に尊重した上ですべての人が無条件に解放されるべきと訴えてきました。
ガザにおける人道支援は崩壊の危機にあります。6週間にわたる激戦と、2カ月に及ぶ支援物資の搬入停止により、命を繋ぐ手段が断たれようとしています。ICRCにとっても、食料や医薬品、救命のための物資が手に入らなければ、ガザでの多岐にわたる活動を遂行することが叶いません。
ガザの住民は、戦火に身を置き、過酷な避難生活を送りながら、緊急援助を受けられない現実に耐えて日々を生き抜いています。これ以上事態を悪化させることは何としても避けなければなりません
パスカル・フント、ICRC事業局 副局長国際人道法の下で、イスラエルは、支配下にある民間人の基本的なニーズを満たすために実行可能なすべての策を講じる義務があります。このまま支援物資の搬入停止が続けば、住民が日に一度空腹を満たせる場となっているICRCの共同キッチンのような事業は数週間で稼働しなくなるでしょう。
5月9日に開設1周年を迎えたガザ南部ラファの赤十字野外病院でも、食料や医薬品が危機的に不足しています。必要不可欠な医薬品や消耗品の在庫もすでに底をついています。病院などの医療施設は救命活動を継続するために、在庫整理や物資の優先順位付けをおこなってどうにかしのいでいます。病院が患者に必要な医療を提供し続けるには、ただちに支援物資の搬入が再開されなければなりません。
水の品質や衛生状態の悪化も深刻です。パイプラインの閉鎖など給水システムが機能しておらず、重要な下水処理車も破壊されたことで、水を介した感染症のリスクを増大させています。
また、医療施設や医療従事者への度重なる攻撃も、状況をさらに深刻にしています。3月には、パレスチナ赤新月社の救急隊員8名を含む、15名の医療・民間防衛・人道支援従事者が無残にも命を奪われる事態が発生しました。それ以降、クウェート野外病院やアル・アハリ病院など医療施設への攻撃が相次ぎ、崩壊しつつあるガザの医療システムが機能不全に陥ろうとしています。
ICRCは、力を尽くしてガザの住民に寄り添っています。しかし、治安状況の悪化により同僚や赤十字運動の仲間たちの活動は厳しく制限されています。国際人道法は明確に次のことを謳っています:医療従事者と医療施設はいかなる状況においても尊重され、保護されなければならない。すべての当事者は、病院や医療施設が命を守るためになくてはならない、不可侵の場所であることを認識しなければならない。
支援がガザに入り込む状況を作ることは必須です。人質は解放され、民間人は保護されなければなりません。いますぐ対応しなければ、ガザの状況は惨禍を極め、人道支援がとても追い付かない事態にまで発展するでしょう。
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