イスラエルとパレスチナ被占領地:戦闘激化から1カ月 ICRCによる人道支援

イスラエル・パレスチナ
2023.11.24
現地に到着した緊急支援物資を運ぶICRCスタッフ

©ICRC

2023年10月7日から11月6日までの活動実績

激しい暴力の代償を払う市民たち

2023年10月7日に激化したイスラエルとパレスチナ被占領地(以下、パレスチナ)における戦闘は、前例のないほど大規模かつ激甚で、1カ月が経った現在、紛争による被害は驚くほど悲痛なものです。

戦闘により、これまで数千人が死亡し、数万人が負傷しました。イスラエルでは、240人以上の人質の家族が、31日間もひどい苦しみに耐えながら、愛する人との消息を絶たれています。また、20万人以上が家を失ったままです。

ガザ地区では、150万人近くが家を失い、多くの自宅やその近隣が瓦礫と化しています。病院や避難所、給水施設、パン屋を運営するために不可欠な物資やエネルギーが急速に不足するなか、人々は家族のために必死で食料や水、避難所を探しています。

援助物資は依然として不十分で、しかもいつ届けられるのか不明なため、悲惨な状況はさらに悪化しています。戦闘はとどまるところを知らず、激しさを増し続けているため、もはやガザ地区には安全な場所はなく、毎日が生きるための闘いとなっています。

重傷者の数が急増するなか、ガザ地区でもイスラエルでも、医療従事者は信じられないほどの勇気と献身を示し、自分の家族が無事かどうかもわからないなか、24時間体制で人命救助にあたっています。

なかでもガザ地区にいる医療チームは、暴力の中、水も電気も医療品も不十分な中で働き続けています。病院は病人や負傷者のための聖域であり、命を救い、治療を行う場所です。残念なことに、国際人道法の下で病院は特別に保護されているにもかかわらず、この1カ月の間に、病院は死と破壊の場となってしまいました。

国際社会がイスラエルとガザの悲劇に注目する一方で、ヨルダン川西岸地区でも暴力が着実に増加し、これまで150人以上が命を落とし、2,000人以上が重傷を負い、2,000人以上が逮捕されました。そして、コミュニティー全体が土地や家、生計手段を失いました。

当初から、私たち赤十字国際委員会(ICRC)は、持ち前の緊急対応能力を活かし、人命救助と国際人道法(IHL)の守護者としての役割、そして民間人の保護を組み合わせながら、迅速に調整を行い、対応してきました。私たちは、国際人道法の尊重、民間人の保護、ガザ地区にいる人質との面会および解放、ガザ地区の人々に届ける支援の拡大、イスラエルに拘束されているパレスチナ人被拘束者との面会の再開を絶え間なく求めています。

今後もパートナーであるパレスチナ赤新月社(PRCS)およびイスラエルのダビデの赤盾社(あかたてしゃ)と緊密に協力し、それぞれの緊急支援をおこなうとともに、赤十字運動全体の調整をおこないます。

国際人道法の尊重

  • 戦闘に関する原則(区別・均衡・予防措置)や民間人と財産の保護、移動の制限、人道支援へのアクセス、民間人へのテロ被害拡大の禁止、人質を取る行為の禁止、保健医療の保護、ガザ地区とイスラエル、ヨルダン川西岸地区で自由を奪われている全ての人びとに対するICRCによるアクセスなど、紛争当事者に国際人道法上の法的義務を訴えた。
  • ガザ地区やイスラエル、ヨルダン川西岸地区で見られる国際人道法違反とみなされる行為や暴力による人道的影響を文書化。これらの懸念を紛争当事者に対して、継続的に対話を通して伝えた。
  • 家族と連絡できるよう、イスラエルに拘束されているパレスチナ人被拘束者とICRCによる面会が再開されるよう、尽力した。
  • 中立的立場な仲介者として

  • ガザ地区にいる全ての人質の解放、人道的処遇、保健医療へのアクセス、ICRCによる人質の訪問を実現するため、絶え間ない努力をおこなった。
  • ガザ地区からイスラエルへ、4人の人質解放をロジ面から支援。
  • ヨルダン川西岸地区で、救急医療サービスが安全かつ円滑に提供するため、70件以上の即時介入を実施。
  • 緊急保健医療

  • ガザ地区、9つの保健医療施設に医療用品を提供し、1万740人が治療を受けた。
  • ヨーロピアンガザ病院でICRCの外科チームが最初の2件の手術を成功させ、40件の複雑な火傷や外傷の症例を診療。また、約5,000人の治療がおこなえる戦傷外科キットを提供。
  • 同病院、20人の患者に理学療法の提供。
  • イスラエルで戦闘によって影響を受けた人びとに対して、イスラエル・トラウマのための会と一緒にこころのケアを実施。
  • ヨルダン川西岸地区の救急医療施設に1,000リットル以上の点滴を提供。
  • 保護の必要がある人びとへの支援

  • ICRCの事務所に寄せられた保護に関する電話、1万2,300件以上に対応。
  • ICRCのヘルプライン(アラビア語、ヘブライ語、英語)に寄せられた、人質や捕らわれた人びとに関する3,400件の電話を受け取った。
  • 行方不明となった人びとの消息を明らかにするために、1,900件以上の要請を文書化。
  • 遺体の尊厳ある処置と身元の確認

  • イスラエルの医療チームに法医学用品(フェイスマスクやフェイスシールド、その他、身の回りの物)を1,200個提供。
  • ガザ地区の医療チームに法医学用品(遺体袋やその他用品)を8,760個提供。
  • 経済的支援

  • 生活必需品(キッチン用品、衛生品、燃料容器、防水シート)をガザ地区にいる避難民2万7,300人に提供。
  • ヨルダン川西岸地区で新たなニーズに対応するため、保護や支援活動の強化および調整をおこなう。
  • インフラ関連の支援

  • ガザ地区で計5万リットル分の水を浄化するための塩素タブレット5,000個を提供。
  • ガザ地区の約11万5,000人に計5,400㎥超の安全な水を提供。
  • ガザ市内と中部デイル・アル・バラに住む25万人に清潔な水へのアクセスを確保。
  • ガザ地区の重要な水道設備や保健施設が稼働するための燃料5万6,900リットルを提供。
  • ガザ地区にある水道網の緊急修理をおこなうため、92回のサポート、20以上の器具を提供。
  • ヨルダン川西岸地区で、保護と支援に関する総合的な対応を調整。

    ガザ地区における武器汚染

  • 民間人が不発弾に巻き込まれるリスクを下げるため、パレスチナ赤新月社と連携して、ショートメッセージ(SMS)やテレグラムを用いた啓発活動を実施。
  • 砲撃や銃撃による危険を回避するためなど、今後の啓発活動に適した回線や通信網を整備。