ミャンマー:2024年を振り返る

ミャンマー
2025.03.17

2024年、ミャンマーでは紛争や暴力の激化によって、既に悪化していた国内の人道上の危機が深刻化しました。

多くの地域社会が、医療支援、水、食料、通信、交通、そして収入を得る機会の制限を含めた深刻な課題に直面し続けています。さらに、地雷や不発弾などの生命に関わる脅威が残されたままになっています。ミャンマー国内では、洪水が国土を蹂躙し、地域の分断を引き起こす雨季の悪化によって、必要とする人びとへの人道支援がより困難になっています。

このような課題の中、赤十字国際委員会(ICRC)は、支援対象を水、食料、衛生、医療支援など基本的なニーズに絞り、影響を受けた地域社会への支援を続けています。
また、医療物資の提供とメンタルヘルスと心理支援の統合によって、爆発物の被害者が直面する課題に対応する物理的リハビリテーションサービスを拡大しました。
これらの写真は、2024年を通して、私たちが目撃した地域コミュニティの強靭性と決意を反映しており、困難な状況に善処する地域社会の力強さと勇気を垣間見ることができます。

ミャンマーの女性

Kyaw Kyaw Myo/ICRC

爆発した地雷の生存者であるマ・サン・サン・マウさんは、ICRCの支援を受けてパアン整形外科リハビリテーションセンターが企画した2週間の研修プログラムに参加しました。彼女は修理工として働き、義肢や装具の軽微な修理を必要とする人々にサービスを提供しています。
マ・サン・サン・マウ氏は、ジュネーブ条約の75周年記念に際して「私はすべての関係者に地雷やその他の爆発装置の使用停止を呼びかけます」と述べました。

Htoo Nyein Aung/ICRC

国際人道法の規定に基づき、家族は危機的状況にあっても愛する人の居場所を知る権利があります。ICRC は各国赤十字社や赤新月社と協力し、離ればなれになった愛する人に何が起きたのかを調べ、家族が再会したり連絡を取り合うことができるよう支援しています。
ICRCのチームは、愛する人が拘留されていることを知っていながら連絡が取れない家族に赤十字通信(Red Cross Messages)を届けています。

Kyaw Kyaw Myo/ICRC

国内で続く紛争により、釈放された被拘束者の多くは帰国にあたり大きな困難に直面しています。ミャンマーのICRCチームは、「セーフ リターン ホーム」支援事業を通じて、釈放された被拘束者が安全に、尊厳をもって帰国できるよう支援しています。
ICRCは彼らに交通費、食料、一時的な避難所の費用を支給しています。また、戦争時の残留爆発物の危険を避けるため、安全な行動をとるよう奨励しています。

Aye Sandar Htun/ICRC

ミャンマーのICRCは、家族訪問プログラムを通じて、被拘禁者の家族が収容施設にいる愛する人と面会できるよう、旅費、食費、一時的な宿泊費を援助しています。
2024年、ミャンマーのICRCは刑務所訪問によって1,638の家族を支援し、釈放された4,555人の被拘束者を支援しました。また、ICRCは1,896人の家族に親族の居場所を知らせました。

Precious Thein/ICRC

2023年後半から2024年初頭にかけて、シャン州北部の一部で衝突が激化し、数千人の生活が混乱しました。これを受けて、ICRCは3,656世帯の避難民14,850人に食料や生活必需品を提供しました。
シャン州北部全域で紛争が激化し、避難民と受け入れコミュニティーの両方がより安全な地域に移住することを余儀なくされるなか、私たちは食料やその他の支援を地域社会に届けるべく取り組んでいます。

Zaw Hpang Daung/ICRC

6月初旬、私たちはカチン州、カイン州、マンダレー地域、バゴー地域の避難民家族に稲の種、トウモロコシの種子、有機肥料を提供しました。
この取り組みを通じて、私たちはこれらの地域社会に農業用具や技術研修も提供し、農作物の生産増と食料消費の向上に寄与しました。

Oo Than Tin/ICRC

国際人道法の下では、自由を奪われた人々は愛する人々との接触を維持することが認められなければなりません。
2024年3月、ICRCは、ラカイン州の母親による娘の被拘留刑務所の特定を手助け、娘の拘留期間中、保育施設にいる孫との電話を手配しました。

Aye Sandar Htun/ICRC

ミャンマーでは、地雷や不発弾が多くの地域社会で生命と生活を脅かす大きな脅威となっており、毎年何百人もの人々が死亡したり負傷したりしています。
人々が直面するリスクを軽減し、そのようなリスクを認識してもらうため、ICRCはリスク認識とより安全な行動(RASB)に関するセッションを実施しました。コミュニティーベースのボランティアのためのトレーナーの研修を行い、アクセスが困難な地域に住む人々にはRASB資料(リーフレット、ポスター、漫画本、塗り絵など)を直接届けました。

Soe Kyaw Maung/ICRC

ラカイン州では紛争が続いており、地域社会が基本的な保健サービスや医療を受けることが難しくなっています。
紛争の影響を受けた人びとが基本的な医療を受けられるようにし、地域社会が直面している課題を軽減するため、ラカイン州のシットウェのICRCチームは、1月にThet Kal Pyin病院に、6月にシットウェ病院に医療物資を提供しました。 

Zaw Hpang Daung/ICRC

ミャンマーでは、ミャンマー赤十字社(MRCS)と協力し、遠隔地への支援を実施しています。共に緊急事態に対応し、リスク認識とより安全な行動(RASB)に関するセッションを実施し、病気を予防するための健康情報を共有することで、地域社会がリスクを軽減できるよう支援しています。カイン州のMRCSがICRCの支援を受けて運営するパアン整形外科リハビリテーションセンター(HORC)は、障害を持つ人びとに必要なリハビリテーションサービスを提供しています。

Mya Mya Soe/ICRC

カイン州のミャイン・ギ・ングー地域では、多くの避難民家族が生活の基本的なニーズを満たすのに苦労しています。この課題に対処するため、私たちは手掘り井戸を改修し、4角屋根付きの新しい手掘り井戸を建設し、安全な水を確保するために適切な排水システムを備えたコンクリート製のプラットフォームを建設しました。

Kyaw Kyaw Myo/ICRC

ICRCのミリアナ・スポリアリッチ総裁は9月、ラカイン州を訪れ、ミャンマーの人道状況を直接見た上で、人道支援拡大の必要性について述べました。
総裁は「ミャンマーの人びとを支援するICRCの決意は揺るぎません」と述べ、同国において最も差し迫った人道支援のニーズに応えていくICRCの取り組みを再確認しました。「私たちは、国際人道法を尊重し、民間人と人道支援に携わる人びとの安全を確保する義務を忘れないよう、紛争に関わるすべての関係する当事者と一対一の対面で秘密裏に対話を行っています」と加えました。

Aye Sandar Htun/ICRC

救急車による医療支援は、災害時や緊急事態の初期対応に欠かせません。救急医療従事者が、病院への搬送前に適切な救護活動を行うことによって人命を救い、苦しみを軽減することができます。
ICRCは、マグウェ地域にある民間救急医療従事者20名に対し、緊急時に地域社会が必要とする効果的な対応力強化を目指す、スキル向上の研修を行いました。

Khaing Wai Aung/ICRC

2024年11月、ジュネーブ条約75周年記念に際し、在ミャンマーのICRCがヤンゴンで写真展を開催しました。
この写真展では、国際人道法(IHL)の歴史的経緯と進化を描いた力強い写真やビデオが紹介され、世界中の武力紛争おいて人間の尊厳を守り、苦しみを和らげる国際人道法の役割が強調されました。