エチオピアでの活動報告~治安の悪化に伴い、増え続ける人道ニーズへの対応
エチオピア北部では、戦闘の激化に伴い、何十万もの避難民がより一層、苦境に追い込まれています。前線の位置が刻々と移り変わり治安が悪化する中、必要不可欠な人道支援へのアクセスが困難になっています。
エチオピア(ICRC)―同国中北部アムハラ州や北東部アファール州では、緊急の人道ニーズが膨らむ一方です。新たに国内避難民となった人々が切実に支援を求めているのです。何千もの人々が、何も持たずに都市部にやってきて、過密状態のシェルターや学校、あるいは野外で寝泊まりし、すでに水や食料、電力が深刻なまでに不足しているホスト・コミュニティーからの支援に頼って暮らしています。
ICRCエチオピア代表部のニコラス・フォン・アークス首席代表は、「最も緊急性の高い人道ニーズへの対応は、時間との戦いとなっています。アクセスが困難な地域に支援を届けているのは、多くの場合、エチオピア赤十字社と私たちだけであるにも関わらず、人道組織の対応能力を上回るニーズがあるからです。前線の位置が刻々と移り変わっていく中でも、こうした地域にアクセスできるよう、私たちは地域や地元の関係者と対話をしながら活動を常に適応させています。また、自分たちの安全とセキュリティーにも留意し、エチオピア国内での活動範囲を定期的に見直しています」と語ります。
紛争で家族がバラバラになり、多くの人が近親者の消息を知ることができずにいます。「大切な人の安否の確認が取れるまで、多くの人が眠れない夜を過ごしています」と語るのは、エチオピア赤十字社のボランティアであるアッセファさんです。
紛争地域やその周辺では、医療が非常にひっ迫しています。医療スタッフは、これまで以上に身の危険を感じながら、紛争による負傷者の治療や、住まいをなくして弱い立場に置かれた人々の基本的な医療ニーズへの対応にあたっています。そうしたことから、最も必要とされるときに医療サービスがほとんど機能しない地域もあります。
北部ティグレ州では、在庫が枯渇していることに加えて、数週間にわたって人道物資の移動ができていないことから、求められている支援の提供が大幅に遅れています。人道支援のための燃料や現金を現地に運ぶことが滞っていることと相まって、有意義な活動を行うのがますます困難になっています。
先月、エチオピアを訪問したICRCのペーター・マウラー総裁は、「激戦のさなかでも、民間人は保護やケアを受けられなければなりません。また、紛争のすべての当事者が国際人道法を尊重しなければなりません」と強調しました。これは、戦闘が激化している今でも重要なメッセージです。
さまざまな課題に直面しながらも、ICRCはエチオピア全土で支援を継続し、治安状況が急速に移り変わっていく中でも、特にエチオピア北部などの地域で必要とされる支援を提供することに加え、離散家族の連絡回復・再会のための活動に取り組んでいます。
2021年の10月以降、ICRCは以下を実施してきました。
- エチオピア北部を中心に、同国内で312,000人に生活必需品やシェルター、現金を提供。
- 1,300人にのぼる負傷者の治療のために、5つの病院に医薬品や医療機器を寄贈。
- ティグレ州で暮らす被拘束者や子ども、妊婦、授乳中の母親、障がい者、医療関係者など、弱い立場に置かれている8,000人以上に食料を配付。
- ティグレ州で68,000人、アムハラ州で70,000人に清潔な水へのアクセスを提供。
- 赤十字通信を通じて、12,000人以上の離散家族の連絡の維持・回復を支援。