
南スーダンの主要な人道問題である性暴力
性暴力は、南スーダンに蔓延する深刻な人道問題のひとつです。10年以上にわたる紛争と、異なるコミュニティー間の暴力が性暴力を日常化させました。武装している個人や組織だけの問題ではなく、民間人にも波及しています。
こうした事態が、被害者の糾弾という、もともと存在していた危険な社会規範に拍車をかけています。家族からの拒絶、離婚、コミュニティーからの孤立など汚名を着せられた状態になると、被害者の多くが助けを求めることを躊躇します。その結果、必要な処置にたどり着くまでに遅れが生じ、被害者をはじめ、強制的な性行為によって生まれた子どもなど家族全体に長期的な悪影響をもたらします。知識不足や、紛争地における安全で利用しやすいサービスの欠如も、被害者を救う上で足かせとなっています。2023年に隣国のスーダンで紛争が勃発し、難民や帰還者が大量に流入したことで被害者の数が膨らみ、ただでさえ限られていたサービスへのアクセスが難しくなりました。
性暴力に対するICRCのアプローチ
赤十字国際委員会(ICRC)は、性暴力の予防や軽減をはじめ問題の対応に直接的に関与します。たとえば、被害者に総合的かつ多分野にわたるケアを提供し、コミュニティー内で直面するリスクを軽減するための啓蒙活動をおこない、武装している個人や団体および関係当局に性暴力案件の防止を要請し、他の組織や当局が提供しているサービスを紹介したりします。ICRCの対応は、武力紛争やその他暴力の伴う事態下での性暴力に特化されていますが、保護と支援の任務の一環として、より幅広く性暴力やジェンダーに基づく暴力(SGBV)の問題と向き合い、赤十字運動のパートナーと連携して取り組んでいます。
数字で見る2024年の活動
予防
南スーダン国家警察の警官253名が、性暴力の捜査と国際人道法に特化した研修に参加
性暴力と国際人道法をテーマにした研修を20回実施し、軍隊および非国家武装勢力から計594名が参加
南スーダンの国家刑務官50名が、収容施設内での性暴力への対応をテーマにした2つの研修に参加
既存のフォーマットを用いて性暴力の報告を課すことの悪影響に取り組むため、政府、警察、人道支援団体を対象に25件の対外活動を実施
リスク緩和
上ナイル州、ユニティ州、西バハル・アル・ガザール州、中央エクアトリア州にある9つのコミュニティーのリーダーや宗教的指導者、教員、医療従事者328名が、コミュニティーレベルで性暴力問題に向き合うための研修に参加
上記研修に参加した人の92%が、「役に立った」または「非常に役に立った」と回答。また、研修後に91%が、コミュニティー内で性暴力問題に取り組むことに「抵抗感はない」と回答
上記研修後、南スーダン赤十字社のボランティアが上ナイル州と中央エクアトリア州のコミュニティーで実施した啓発活動に、5,035人の地元住民が参加
南スーダン赤十字社の啓蒙活動の後、同社ボランティアが性暴力とジェンダーに基づく暴力の被害者41名に利用可能なサービスを紹介
被害者が汚名を着せられないよう、ソーシャルメディアへの投稿、メディアを対象とした研修、ラジオとテレビにおけるメッセージ発信、そして人道支援団体や医療スタッフ、関係省庁の職員向けのプレゼンテーションを通じて、毎年11月に行われる「ジェンダーに基づく暴力と闘う16日間の活動」キャンペーンに貢献
被害者への対応
上ナイル州と中央エクアトリア州にある各種医療機関から37名のスタッフがレイプの臨床管理(CMR)に関する研修を受講。曝露後予防 (PEP) キットが確実に入手できるようユニセフと緊密に連携
被害者への偏見がもたらす悪影響と守秘義務の保持について研修を実施し、医療施設やリハビリセンターの担当者および精神心理カウンセラー127名が受講
性暴力の被害者36名に対して、直接的に次の支援を提供:保護に関する文書の作成、こころのケア、現金支給、他の組織への紹介状発行
対面で被害者のニーズに寄り添っている南スーダン赤十字社の職員とボランティア240名を対象に行われた、性暴力とジェンダーに基づく暴力に関する勉強会をサポート
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