諦めかけていた夢を取り戻したタンザニアの少年

タンザニア
2019.08.05

©ICRC

タンザニア出身のアブドゥル・ハマド・キパン君(11 歳)とムッサ・フセイン君〈9 歳〉の二人は、交通事故で下肢を失いました。ただ、タンザニアでは、障がい者用の人工装具やリハビリサービスが提供されるのはごく一部。2人はアフリカ南部の障がいのある子どもたちを支援するプログラム「ジャンピング・キッズ (JumpingKids)」に参加する機会を得てスポーツ用の義足を作ってもらい、訓練を受けることができました。

 

このプログラムは南アフリカにある義肢製作所 3 社が立ち上げムーバビリティ基金も参画しています。2人の少年とともに、タンザニア出身の義肢装具士二名も参加。帰国後に少年たちを技術面でサポートしていけるよう、人工装具やリハビリにおける最新の知識を習得しました。

 

そのうちの一人、ルース・オネスモさんは「スポーツに触れることが、切断手術を受けた子どもにとっていかに効果的であるかを目の当たりにしました。自分に合った義足を装着し、正しくリハビリを受ければ、障がいがあっても他の人と同じように成長できると感じました」と話します。

 

アスリートになることが夢だったムッサ君。交通事故に遭ったことで一旦諦めたものの、義足を得ることでさらなる野望を抱き始めました。それは、タンザニアを代表するパラリンピック選手になること。「少しも時間を無駄にしたくないんだ」と、ムッサ君は義足を装着するやいなや駆け出しました。

 

スポーツ用義足の感触を走りながら試す少年

スポーツ用義足を作ってもらい、その感触を確かめるムッサ君 ©ICRC

 


障がい者支援の新たな枠組み「MoveAbility 基金」

 

 

 

 

ICRC の支援は、紛争もしくはその他の暴力で犠牲を強いられている人々を対象に行います。しかし、紛争下にない国においても、必要な支援を受けられない環境に置かれている人たちが数多くいます。

 

WHO によれば、障がい者が必要とする支援が満たされていないケースが、低・中所得国において深刻な状況にあるといいます。そうした国において障がい者を支援し、ソーシャル・インクルージョンを促すために、通常のプログラムとは別に「ICRC 障がい者のための特別基金(ICRC Special Fund for the Disabled)」を1983 年に設立しました。その後、2017 年 1 月に、「ICRC ムーバビリティ(MoveAbility)基金」と名称を変更。

 

「Move」は動く、「Ability」は能力を意味します。身体を動かす力を強化するという組織の目的を強調したこの基金の運営費は、主に各国政府や財団、各国赤十字・赤新月社、そして企業、個人の寄付によって賄われています。

 

同基金による事業は、支援を必要とする国の政府当局から要請を受け、内部審査を経て決定されます。政府に代わってサービスを提供するのではなく、低・中所得国で障がい者が直面する障壁を取り除くこと、そして質が高く、持続可能なリハビリサービスへのアクセスを維持・向上させ、障がい者支援とソーシャル・インクルージョンがその国に根付くことに主眼を置いています。

 

2018年は次の 14 カ国で活動を行いました:

マダガスカル、タンザニア、トーゴ、ベトナム、タジキスタン、エルサルバドル、ニカラグア、ベニン、コートジボワール、ルワンダ、ソマリア、ザンビア、ハイチ、エクアドル

 

MoveAbility基金についてより詳しく知りたい方はこちら

MoveAbility(英語サイト)