コンゴ民主共和国:水をめぐる苦難

コンゴ民主共和国
2022.07.20
水道の写真

©ICRC

コンゴ民主共和国(ICRC)―2014年以降、武装集団による暴力により数千人が安全を求めて故郷の村を捨てて避難することを余儀なくされ、その多くが同州北方の都市、ベニの郊外に流れ着いています。現地当局によると、2022年1月時点で34,000余りの世帯が主にベニのカサビニョレ地区とマンバンゴ地区で避難生活を送っていて、その多くが土や木の板でできた仮設住宅に住んでいるということです。こうした地域では、人口の増加により、水不足をはじめ、水をめぐるさまざまな問題が生じています。

水不足に起因する性暴力、衛生問題、緊張関係

まず、性暴力の問題があります。水を十分に確保することが困難なため、女性や少女たちが、飲み水用や料理用、家事用に井戸や小川に水を汲みに行きますが、帰宅が遅くなり、レイプされることがあります。

小川など、安全ではない場所で水を汲むため、飲み水を媒介とした病気にかかる人が多くいます。@Trésor Katavali/ICRC

次に、衛生面の問題があります。マンバンゴ地区を横断する細い小川のほとりでは、女性たちが食器を洗い、その横で子どもたちが川底をかき回して遊ぶなど、すでに濁っている水はますます濁る一方です。そうした水を使うことで、子どもたちが疥癬にかかるなど、健康問題が引き起こされています。

水源をめぐり緊張関係も生じています。乾季には、その時期でも水を汲める数少ない井戸の周りに人だかりができますが、待ち時間が長くなるにつれ、人々の間の緊張は高まります。水を汲むためには早朝に家を出て、2キロ先まで歩き、夜の9時まで待たなければならないという人もいます。

需要の増加に対応できるだけの水源がないことから、ホストコミュニティーと避難民との間に緊張が生まれることが多々あります

ICRCベニ事務所のタンジャマ・アダマ・クリバリ代表

ICRCの水関連事業

ICRCはそうした人々を支援すべく、現地当局と協力し、できるだけ多くの人に飲み水を供給するために取り組んでいます。それにより、コミュニティー間の緊張を和らげ、飲み水を媒介とした病気にかかる人の数を減らすことも目指しています。

ベニの水道網は20年以上前に敷設されたため、古く、錆びついていて、水漏れが発生しています。水漏れにより水圧が低いことから、同じ家で暮らすホストファミリーと避難民の両方に十分な水を供給することはできません。水質もかなり悪化しています。また、資金不足により、人口増に応じて水道網を延長することができなかったため、最近になって避難してきた世帯は水道を使うことができません。

2021年、ICRCは資金提供をし、飲み水へのアクセスを改善するために、3カ月にわたる修繕事業を行いました。ベニの水道公社レジデソが、マンバンゴ地区に5つ、カサビニョレ地区に2つ、合計7つの公共の水飲み場を新設したのです。10個の蛇口が設けられた水飲み場はそれぞれ、新たに敷設した水道管と最大容量が7立方メートルの貯水タンクに繋げられました。また、錆びた水道管が4キロメートルにわたって交換されたことに加え、3.5キロメートルにわたる新しい水道管が敷設され、地区の水道網は拡張しました。これにより、同地区で暮らすマリエラさんのように、「20リットルのジェリカン7本を満たすのに数分しかからなくなった」という人もいます。

ベニの郊外で、水飲み場の建設を監督するICRCの技術者。©Trésor Katavali/ICRC

しかし、新設された水飲み場は、1日のうちわずか数時間しか給水できません。レジデソによると、ICRCの支援があっても、15%余りの避難民を含む、ベニの推定人口60万人が必要とする飲み水のわずか2割しか供給できていないのです。

ICRCは、水道網を維持管理するための機材をレジデソに提供しました。また、給水場の適切な使用方法や維持管理方法を地元の人々に指南することを目的として、コミュニティーの人々や赤十字のボランティアで構成される委員会も設立しました。

数値で見る、現地の暴力事態

ベニ周辺では武装集団による攻撃が多発しています。国連人道問題調整事務所によると、2021年12月から2022年3月中旬までに40件の攻撃が発生し、少なくとも256人が亡くなり、200人余りの民間人が誘拐されました。25万人以上が北キブ州のその他の地域に安全を求めて避難し、さらに3万人余りが東に国境を接するウガンダに避難しました。避難民の大半は、所持品も持たず着の身着のままやって来て貧困に陥り、避難先で暮らしを再建しようとしています。

2021年を通して、ICRCはベニ全域で避難民や帰郷した人、ホストファミリーなどのべ15,606人に対して支援を実施しました。生活必需品や種子を購入するための資金援助も行いました。

2021年1月から2022年3月にかけて、暴力事態下で負傷した394人以上が、ベニ総合病院やICRCが資金提供する他の医療センターで治療を受けました。