南スーダンでの10年の活動を数字で振り返る 対象期間:2011年~2021年

南スーダン
2021.07.20

世界で一番新しい国「南スーダン共和国」が2011年7月9日に誕生して以来、赤十字国際委員会(ICRC)は、紛争や戦闘行為の犠牲となっているコミュニティーのニーズの変化に合わせて人道支援を行ってきました。スーダンから独立してまもなく、南スーダン赤十字社の発足が承認され、国内各地に支部を置くべく支援を行いました。また、民間人の保護を強化し、人々が必要以上に苦しむことがないよう国際人道法を成す主要な条約を国内法に組み込むうえで、政府当局を支援しました。

紛争や戦闘行為の連鎖により、多くの家族が幾度となく避難を余儀なくされ、日々の暮らしのニーズを満たすことができなくなっています。危機を乗り越え、困難に打ち勝つ力(レジリアンス)を発揮するためには、長期にわたる人道支援が不可欠です。私たちは南スーダン赤十字社と連携して、緊急ニーズに応え、尊厳を取り戻し、生計を立て直す支援を行ってきました。

南スーダンが平和を見据えて前進する一方で、何十万もの世帯が食料や水、医療などの基本的なサービスが受けられず、今なお苦しみ続けています。私たちは引き続き、遠隔地で孤立している最も弱い立場に置かれたコミュニティーの人々に手を差し伸べるとともに、当局や武力を行使する人々を巻き込みながら、一番支援を必要とする人々をさらに保護・尊重するために力を尽くすことを約束します。

ここでは、南スーダンの地域社会とそこに住む世帯を対象にした過去10年間の私たちの人道支援を簡単にご紹介します。


南スーダン赤十字社と連携して、紛争や戦闘行為の犠牲となった地域社会やそこに住む世帯が暮らしや生計を立て直し、レジリアンスを高めるための支援:

  • 310万人以上(避難民や帰還者、受け入れ先のコミュニティーの人々)に(穀物や野菜の)種子や農具を提供。
  • 330万人以上に食料を配付。
  • 520万頭以上の家畜にワクチンの接種や治療を行うことで180万人以上に利益をもたらし、コミュニティーの獣医関係者1,160人以上にトレーニングを実施。
複数の世帯で共用する農具一式を運ぶ女性。2019年/南スーダン、デュラマヤ。
ICRCから種と農具一式を受け取った男性。2019年/南スーダン、デュラマヤ。
南スーダンでは空からも食料支援。トウモロコシを回収する女性たち。2014年5月/レール郡。
雨季には、紛争から逃れてきた避難民が暮らす孤立したコミュニティーに向かえないため、緊急支援のニーズに応えるべく飛行機を使って食料を投下。2014年4月/ジョングレイ州ワート。
牛などの家畜用ワクチンを提供するICRCスタッフ。

保健当局と協力して、医療サービスへのアクセス向上を実現:

  • プライマリヘルスケア(一次医療)の施設や病院を支援し、この10年間で150万件の診察を実施。
  • リハビリテーションセンターを支援し、身体障がい者2万7,000人以上の運動機能回復に寄与。
  • 外科部門を支援し、武器により負傷した9,000人以上の患者を治療。
足を撃たれた患者を手術するICRCの医師。アコボやガニエル、ジュバで活動するICRCの外科チームは、2020年2月中旬から3月上旬にかけて、110人超の銃創患者を治療。2020年/南スーダン。
手術後の患者を病室に運ぶ、南スーダン赤十字社のボランティア。2020年/南スーダン。
ICRCは2013年、南スーダンの中央に位置するレイク州の州都ルンベクにあるリハビリセンターの支援を開始。設備やトレーニングを提供した他、患者の滞在施設を新設した。また、2011年から2021年にかけて、ジュバやルンベク、ワウにある3つのリハビリセンターを支援し、27,000人以上の障がい者に寄り添った。

地域社会と協力し、南スーダン全土で清潔な水へのアクセス向上を実現:

  • 掘削孔や貯水池、水汲み場など数百の給水所を建設または改修し、275万人以上がその恩恵に与る。
  • グンボ給水事業として、ポンプ場や水処理場、配水管、水汲み場などの都市水道網の建設を開始。最終的には首都ジュバで暮らす20万人超に恩恵をもたらす見込み。
ルル・コレラ水処理センターの浄水場で清潔な水を汲む女性たち。2014年7月/南スーダン、上ナイル州。
水へのアクセスを向上するため、6つの太陽光発電を利用した水処理施設をジュバに建設。水処理施設1台で2,500人相当のニーズを賄う。2015年。
戦闘行為が頻発し、多くの人が農村部から、より安全と思われるルンベクの街に逃れてきた。既存のインフラ、特に揚水機はニーズに追いつけず、こうした人口増加への対応が急がれた。このためICRCは、15,000人に給水可能な貯水ヤードを改修した。2018年/レイクス州ルンベク。

被拘束者の人道的処遇をモニタリングし、収容環境を改善:

  • 50を超える収容施設を1,000回近く訪問し、被拘束者43,700人以上に面会。
  • 中立的立場の仲介者として、自由を奪われた336人の釈放に関与した。
被拘束者11人が釈放され、ICRC手配の飛行機でジュバに移送。2018年1月28日。
2020年以降、コロナ禍での感染対策の一環として、被拘束者が家族と面会できなくなった。そこで、携帯電話などを収容当局に提供し、互いが連絡を取り続けることができるよう便宜を図った。2020年/南スーダン、ジュバ。

南スーダン赤十字社と連携し、紛争や戦闘行為下での離散家族の連絡回復・再会を支援:

  • 13万5,000件以上の家族間通話を支援。
  • 25,000通以上の赤十字通信のやり取りを支援。家族が互いに近況を伝え合うことを可能とした。
  • 650人以上を家族との再会に導いた。
ビクター君(12歳)は、2016年8月28日に故郷の村で家族と生き別れに。それから1年以上が過ぎ、ICRCと南スーダン赤十字社が父親のフェデリコと引き合わせた。2018年1月/南スーダン、ジュバ。
ICRCは南スーダン赤十字社とともに、紛争や戦闘行為によって離ればなれになった家族を追跡調査し、家族間通信を可能にしたり、再会に導いたりしている。
ICRCから提供された電話で、離れて暮らす家族と会話している男性。ジュバの避難民キャンプにて。

武力を行使する立場の人々に、国際人道法と国際人権法を説き、その尊重を強化:

  • 軍人26,500人超に国際人道法の研修を、また警察官4,390人超に国際人権法の研修を実施。
この10年間、ICRCは南スーダン各地で軍隊や非国家武装集団、警察に働きかけ、国際人道法と国際人権法の知識の向上と尊重の強化に努めた。

収入を増やし、家族の生活水準を向上させるために、ICRCの支援のもとオープンした店の前に立つジェーン・カホさん。障がい者の自活に向け、小規模のビジネス経営に関する職業訓練も行う。2020年。
状況を把握し、人道ニーズを精査するため、コミュニティーの人々と会合を開くICRCチーム。そこに居合わせた母親と子ども。南スーダン南部のエクアトリア地方は、紛争による被害が続き、住民は家を追われ、食料やシェルター、水、医療へのアクセスが限られた低木地帯に避難している。ICRCは、紛争の犠牲となったコミュニティーに接触し、現状やニーズを把握うえで、必要な緊急支援を提供する。2021年/南スーダン、西エクアトリア州ムンドリ。