「ソマリア内戦による被害は、この地域で最も長く続いている人道危機のひとつです。30年以上続く武力紛争は、多くの苦しみと荒廃をもたらし、人々の暮らし、ひいては人生そのものを破壊しています。300万人近くが避難民となり、およそ160万人が極度の食料不足に陥っていて、4人に3人が1日2ドル(約230円)以下で生活しています」と語るのは、10月初旬にソマリアを訪問した、赤十字国際委員会(ICRC)事業局長のドミニク・シュティルハルトです。
現地の人々は、紛争の長期化に起因する問題に悩まされる一方で、現代ならではの問題にも直面しています。それは気候変動です。
ソマリアの主産業は、ラクダ、牛、羊、ヤギなどを飼育する畜産業で、国民の約3人に2人が遊牧民として暮らしています。しかしながら、昨今の厳しい気候事情によって、伝統的な生活様式を放棄せざるをえなくなったケースが増えています。
前兆は以前からありました。過去20年にわたって、長い乾季に加えて干ばつや洪水が地域を襲い、昔ながらの遊牧生活をことごとく破壊してきたのです。さらに悪いことに、立ち直る機会もほとんど持てませんでした。最近ではイナゴも大量発生し、頭痛の種は尽きません。
気候変動は地球規模の問題ですが、すべての人が同じように影響を受けるわけではありません。ソマリアの290万の避難民など、最も貧しく阻害されたコミュニティーほど、最大のリスクにさらされています。なぜなら、適応能力がすでに低下しているからです。ここに掲載した写真は、気候変動の影響を受けて、飼っていたラクダや牛、ヤギが減ってしまった遊牧民たちの現状を如実に写し出しています。
これまでずっと遊牧民として暮らしてきた、モハメド・ハッサン・グレさん(40歳)。かつては250頭のヤギやラクダを飼っていましたが、今ではヤギ20頭しか残っていません。財産である家畜を守るため、損害を出し続けながら長年苦心してきました。しかし、気候変動に端を発した自然災害が繰り返され、回復は困難に。「神のみぞ知る、ですが、私たちの生活様式は危機に瀕しています。このまま干ばつが続いて家畜がさらに減れば、事態はより深刻になります。そうなることを私たちは恐れています」。
©Abdikarim Mohamed/ICRC
家畜のための牧草地と水を求めて、仲間たちと集団で旅をしながら暮らしているアハマド・モハムドさん。気象パターンの変化、そして今後の先行きの不透明さに伝統的な生活が脅かされています。既に昨年、50頭の牛を失いました。特に長い乾季は家畜にとって過酷です。「乾季は気が気ではありません。状況が悪化した場合は、ラクダが自ら餌を探すのではなく、自分たちが用意しなければなりません」。
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「干ばつで家畜の一部を失った後、弱っていた家畜が雨でやられました」と、アブディ・アリさん。現在は、家族をどうやって養っていくかで頭を悩ませています。
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中部ムドゥグ州のガルカチョから西へ115kmのところにあるトゥーロ・コーラックス村に住むアブディ・ジャマーさん(35歳)。飼っていたヤギを干ばつと雨で立て続けに失い、20頭にまで減ったことで、一家の暮らしが成り立たなくなってきたと心を痛めています。「以前は農村部で家畜を飼っていた人がたくさんいましたが、家畜を失い、街にいる親戚や家族と一緒に暮らす人も出てきました。家を捨てて、移住するしかなかったということです」。
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遊牧民のヌロ・オスマンさんは、ガルカチョから東に95km離れたバンデルシード村で、甥や姪、孫など11人を養っています。飼っていた1頭のラクダとヤギ数頭が干ばつにより死んでしまい、苦境に立たされています。「雨が降らないと、病気が蔓延し、動物も死んでしまいます。特に子どもはコレラにかかり、下痢になります。皆が苦しむのです」。
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バンデルシード村の自宅前に座るアブシロ・ハッサン・ファラーさん。人里離れたこの村では、ほとんどの家が彼女の家と同様にドーム型の住居で、布やビニールシート、草を編み込んだマットで補修されています。今年は乾季が長引き、村では複数の世帯が影響を受けたため、ICRCは現金支援を実施しました。
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ムドゥグ州にある雨水貯留所でラクダに水をやる遊牧民。こうした貯水施設は、遊牧民や動物たちにとって旅の途中に一息つけるオアシスです。
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