ウクライナ紛争に関する声明:ICRCペーター・マウラー総裁

ウクライナ
2022.02.25

©ICRC

ウクライナにおける戦闘が新たな局面を迎え、私は背筋が凍るのを禁じえません。紛争当事者のとてつもない軍事力を考えると、今回の紛争の激化と拡大により、想像するのも恐ろしいほどたくさんの命が犠牲となり、大規模な破壊がもたらされる危険があります。

私たちはすでに、民間人に直接的な被害が及んでいるのを目の当たりにしています。このたびの戦闘激化がさらなる避難民を生んでいます。ドンバスなどの地域に暮らす住民は、これまで8年にわたる紛争を耐え忍んできました。住民がさらに窮地に追い込まれることを、私は今恐れています。多くの死傷者を出し、水道や発電設備などの民用物が大規模に破壊されることに加えて、多数の避難民や行方不明者、家族の離散、トラウマなどの問題を抱えることになるからです。

大規模な戦闘行為が民間人にどのような被害を及ぼすかについて事前評価する際、判断ミスや理解不足、間違った憶測によって、悲惨な結果につながることを私たちは知っています。それはICRCの長年の経験から知り得たものです。

戦闘行為に関わる人々に対して、次の点を念頭に入れておくよう求めます。

  • ウクライナにおける紛争の当事者は、1949年のジュネーブ諸条約および1977年の第一追加議定書を含む国際人道法を順守し、民間人と被拘束者を確実に保護すること 。敵対行為に関する規則や戦闘の手段・方法に関する禁止条項に違反する攻撃は控えるべきです。人口密集地では、被害が広範囲に及ぶ兵器の使用は避けなければなりません。
  • 民用物を攻撃の対象にしないこと。水道やガス、電力などの重要インフラに危害を加えてはなりません。民家や学校、医療施設には水や電気が必要不可欠です。また、サイバー技術など、最新技術を用いた攻撃についても、国際人道法を尊重しなければなりません。
  • ウクライナ赤十字社や赤十字国際委員会(ICRC)を含む国際赤十字・赤新月運動 などの援助団体が引き続き民間人に支援を届けられるよう、活動の公平・中立・独立性を尊重すること。
  • ICRCの最優先課題は、現地の人道ニーズに対応することです。今週は、ドクチャエフスク病院に3,000リットルの飲料水を配付し、ドネツク市当局に7,000リットルの飲料水を送りました。また、衛生・栄養状態を改善するために、収容所訪問なども実施しています。ウクライナで活動する同僚たちは、治安状況が許す限り、重要なインフラの修繕、医療施設への医薬品や機器の提供、住民への食料や衛生用品の配付などの支援を今後も続けていきます。同時に、戦闘の被害を受けている人々を保護するために、守秘義務に則ってそれぞれの紛争当事者と二者間対話を継続していきます。

    紛争が激化することで、民間人の犠牲や被害に支援や保護の能力が追いつかなくなるような事態は避けなければなりません。そのためにも、すべての国家に対して、権力や影響力を最大限発揮するよう求めます。

    ここ数年、あまりにも多くの紛争が勃発し、拡大していくのをICRCは見てきました。終結を迎えるケースはほんのわずかで、どの紛争においても代償を払わされているのは民間人です。