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2025年にICRCが接触した武装集団 ~なぜ私たちは武装集団と対話するのか

国際人道法
2026.01.15
ICRC member, talking to a member of armed groupt, ICRC With the ICRC's facilitation, a civilian is released after bieng held by an armed group.

©ICRC

※ここで言う“武装集団”とは、非国家主体であり、人道上見過ごすことのできない暴力事態を引き起こす潜在力を有した集団を指します。

紛争当事者の支配地域に暮らし、援助を必要とする人たちにたどり着くため、赤十字国際委員会(ICRC)は、国家のみならず非国家主体の武装集団を含めた、すべての当事者と対話をするべく常日頃から力を尽くしています。私たちは、その長い歴史の中で、常に武装集団と対話し、守秘義務に則って国際人道法上の懸念を伝えています。武装集団が戦時のルールを守ることで、戦闘によって被害を受ける人たちの苦しみを和らげ、予防することに繋がります。何より、武装集団の支配下に置かれた住民に対して、人道支援の提供が可能となります。

私たちが武装集団に接触する理由はさまざまです。
1)武力紛争やその他暴力が伴う事態の影響を受けている人たちにアクセスを得るため
2)ICRCが中立で公平かつ独立した組織だということを知ってもらい、活動への理解や信頼を得るため
3)国際人道法やその他の戦時のルールを知ってもらうため
4)国際人道法の軸をなす4つのジュネーブ条約の共通第三条に、非国家主体の武装集団を含む非国際的武力紛争の当事者に対して、ICRCが“その役務を提供することができる”と明記されているため()。

例えば、武装集団に捕らわれた人びとを訪問して、虐待や拷問がおこなわれていないかや心身の健康状態を確認したり、家族と連絡がとれるようにしたりします。また、解放時に中立的な仲介者として関与し、移送や身柄の引き渡しをおこないます。また、武装集団に封鎖された地域に暮らす住民に援助物資を届けることも、中立・公平・独立を掲げる赤十字だからこそできる支援です。

世界における武装集団の分布図は、紛争の勃発や、武装集団が支配する領土の拡大/縮小により、急速に様変わりしていきます。そうした事情からICRCは、効果的に人道的使命を果たせるよう、世界各地に置かれたICRC代表部からの情報をもとに武装集団に関する内部調査を毎年おこなっています。この調査には、ICRCと武装集団の関係値の測定や、武装集団の動向観察、関わりを強化するための機会の評価など、いくつかの目的も含まれています。

調査結果は、ICRCが各地で活動するなかでの優先事項や懸念点が反映されているため、科学的な見地からではなく、あくまでも活動を通して得た評価に基づくものです。武力紛争に伴う外的要因の変化や、ICRCの活動の優先度、調査方法の改善などにより、これらの数値は毎年変動する可能性があります。

2025年の武装集団への接触

ICRCは2025年、人道上注意を必要とする武装集団の数を、383と見積もりました。

内訳は、アフリカ(41%/158集団)と中近東(22%/85集団)が大半を占め、アジア大洋州(15%/58集団)や南北アメリカ(19%/72集団)、ユーラシア(3%/10集団)です。

2025年時点で、これら武装集団の影響を受けている地域には、少なくとも2億400万人が暮らしていると推定され、うち7,400万人はその完全な支配下に置かれています。また、1億3,000万人は係争中もしくは流動的に支配勢力が変わる地域(以下、影響下にある地域)に暮らしています。2021年のデータと比較すると、その数は3,000万人以上増加しています。

また、2025年の領土支配の実情をまとめると、92の武装集団(全体の25%)が完全かつ独占的に支配し、138の武装集団(全体の37%)は、領土の争いなどで流動的にその地域に影響を与えていると私たちは考えています。一方で、完全な領土支配をしている武装集団の81%がその地域を4年以上にわたり支配していることは注目すべき点です。

支配下の領土を持つ武装集団の多くは、当該地において事実上の統治や公共事業をおこなっています。2025年には、328の武装集団(全体の85%)が住民に対して公共事業や課税を実施しています。また、支配地域を持っていない集団のいくつかも同様のことをおこなっています。全武装集団の68%以上は治安措置を課し、50%が課税と同等の制度を設け、33%は司法や紛争解決のメカニズムを提供しています。その他にも、社会的支援(27%)、保健医療(15%)や教育(13%)、公益事業(9%)、法的文書作成(4%)など、長年にわたって完全な領土支配をしてきた集団は特にこうしたサービスを提供する傾向にあります。一方で、この調査では、支配下で暮らす住民がそれらのサービスをどのように認識しているか、住民がどの程度恩恵を受けているのか、支配する全域に行き届いているかなどについて評価することはできません。

ただ、これらの数値が浮き彫りにするのは、武装集団による領土支配が広範囲でおこなわれていて、その支配下で暮らす人びとが世界中にいる、ということです。武装集団の統治下にいる人びとは弱い立場に置かれており、特定の危機に瀕しています。民間人が死傷する可能性のある戦闘や敵対行為がすぐそばで繰り広げられ、必要不可欠なインフラやその他サービスへのアクセスが制限されるか、またはその提供自体が止まり、封鎖や包囲、制裁により人命救助のための物資やサービスにたどり着けなくなる可能性があります。また、政府当局の不在により、民間人が必要な法的手続きを取れないといった困難にも直面します。

武装集団が公共サービスを提供していても、多くの場合、支配下で暮らす住民の基本的なニーズを満たせていないのが現状です。そうした事情から、ICRCが武装集団と接触し、対話をすることがとても重要となってきます。領土を支配するということは、そこに住む人びとを守る責任を負うことを意味します。被拘束者の保護や家族の再会支援、国際法や国際基準に基づく紛争犠牲者の保護など、さまざまな支援や法的措置、保護について話をし、支配下で暮らす人びとのニーズを理解して対応することが必要です。

2025年 ICRCの武装集団との関わり

武装集団との接触は、一筋縄ではいきません。しかし、その支配下で暮らす人びとを支援し守るためには不可欠です。対話の内容自体は、前年と比べて大きな変化はありませんでした。私たちは、383の武装集団のうち、約3分の2に接触。そうした接触はさまざまな形でおこなわれ、話し合う問題も多岐にわたります。

立ちはだかる課題

そうした接触をおこなう中で、いくつかの集団とは複数の課題に直面しています。よくあるのは2つ:その時の治安状況と、もう一つは、武装集団との接触が国家との関係に悪影響を与えるという点です。これらによって、全武装集団の約13%との関与が完全に不可能になり、41%との関わりに制限が課されています。対話関係にあっても、ICRCの全活動を受け入れてもらうには至っていないケースもあります。さらに、国家によって「テロリスト」と指定されている場合、その集団と接触する際に大きな困難が伴います。全体の6%との関与が断たれ、42%との関与が制限されました。

私たちは、武装集団から関与を拒まれたとしても、そのこと自体を大きな課題としては捉えません。実際、消極的であるがために接触が完全に不可能となった武装集団は、全体の2%ほどです。データによると、武装集団は一般的にアプローチを受けた際には関与する意志を示しており、障壁は別のところにあります。主に治安措置、国家による障壁、そして人道支援団体自身の活動能力に関する制約です。

2023年、武装集団と関与するうえでの障壁は、ほとんどの場合国家によってもたらされています。残念ながら、現在の複雑な安全保障環境の下で、私たちが武装集団との関与を強化する余地は限られています。国家による障壁や「テロリスト」指定などがICRCの活動に与える影響をこれまでの調査が明らかにしたことで、私たちのような人道支援団体が、人道スペースを守り、強化していく必要性を再認識する機会となりました。そのためにも、テロ対策法に人道的免責条項を設けること、特に、国内法において武装集団との関わりやその支配下に暮らす住民への人道支援を違法としないように働きかけることが鍵となってきます。同時に、国内当局に対して、ICRCが武装集団と関与するための便宜を図ってくれるよう説得し続けることも重要です。

2022年、国連で安保理決議案2664が採択され、国連をはじめとした多国間による制裁が課す資産凍結に人道的免除が認められました。今後、各国が普遍的な認可や人道的免除を国内法に追加すれば、これから数年間の私たちの取り組みに多くの恩恵をもたらします。どの程度の恩恵かは今後モニタリングする必要があり、それも、同決議がいかに効果的に実践されるかにかかってくるでしょう。

武装集団によって支配または争われている地域で日々の生活を送る2億400万人の人びとがいます。完全な領土支配をしている武装集団の81%がその地域を4年以上にわたり支配していることから、持続的な人道的関与はますます重要になっています。

英文記事はこちら

(※)なぜICRCは武装集団とも対話をするの?―4つのQ&A
https://jp.icrc.org/information/why-icrc-talks-armed-groups/
(1)https://www.icrc.org/en/document/detention-non-state-armed-groups
(2)https://www.icrc.org/en/document/reducing-civilian-harm-urban-warfare-handbook-armed-groups