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立命館アジア太平洋大学(APU)チームが香港で準優勝の快挙!:国際人道法模擬裁判アジア・大洋州地域大会

国際人道法
2026.04.10

2026年3月に香港で行われた国際人道法アジア・大洋州地域大会で、日本代表の立命館アジア太平洋大学(APU)が準優勝の快挙を遂げました。香港紅十字社と赤十字国際委員会(ICRC)が主催する同大会には、アジア大洋州の各国で国内予選を勝ち上がった合計22チームが出場。優勝は韓国代表のハンドン国際法学院チームでした。

APUチームを構成する4名は、いずれも法学部生ではありません。どのような経緯で大会に参加し、準備を重ねて準優勝という成果を残したのか。ICRC駐日代表部は早速、APUチームのズジャジャさん、カトレアさん、デヴニさん、ドゥックさんにお話を伺いました。

APUmootcourtteam

左からシェーク・ズジャジャさん(パキスタン出身)、ダウブ・カトレア・アベリ・ユニス・ジャビアンさん(フィリピン出身)、ジャヤウェーラ・デヴニ・ネハさん(スリランカ出身)、
ド・ダイ・ドゥックさん(ベトナム出身)©香港赤十字社

※国際人道法模擬裁判とは:学生たちが武力紛争下におけるさまざまな架空の状況下で国際刑事裁判を行い、検察側と弁護側に分かれて人道法の知識や理解度を競う大会です。毎年、アジア大洋州地域の外交官、裁判官、弁護士をはじめとする法実務者やICRCの法律顧問が裁判官として参加しています。日本で行われた2026年度 模擬裁判・ロールプレイ大会国内予選の結果報告はこちら

APUmootcourtteam

©香港赤十字社

出場の背景

APUチームのメンバーは、国際経験や交換留学を通じて日本で学ぶことを選んだと言います。4人それぞれのバックグラウンドが、模擬裁判への挑戦の動機にもつながっています。

ドゥックさんは、高校時代の交換留学で来日し、多文化に触れる環境に身を置くことで外交や国際関係への関心を深めました。デヴニさんは、母親が日本に住んでいたこともありAPUに入学、国際関係学を専攻したと言います。ズジャジャさん、カトレアさんは、AFS交換留学(生活や学習、文化体験を通して国際感覚を養う青年向けの交換留学プログラム)や奨学金をきっかけに日本で学ぶことを選びました。APUに決めたのは、教育や自然環境への関心を抱きながら国際的な環境で学べるところに魅力を感じたからと話します。

APUの同窓となり、国際関係学を専攻している4人が法律の世界に関心を持ったのは、一年前の人道法模擬裁判で活躍した先輩たちに触発されたことが大きい、と言います。
※前年の大会に参加した先輩たちの成果はこちら

「先輩が築いた成果に恥じないよう、自分たちも全力を尽くさなければという想いが、挑戦へのモチベーションとなりました」

こうして、国際的な視野と人道への関心、そして先輩たちへの尊敬と責任感を原動力に、日本での国内大会、そして本選である香港大会への4人の挑戦が始まりました。

チームワークで乗り越えた困難

法律の専門知識がない中で、国内大会と香港大会に出場するための準備は非常に大きな挑戦だったと言います。4人は毎日早朝から集まり、大学の図書館でリサーチを重ね、関連書籍を読み込む日々を送りました。法的議論をおこなう上で論法をシミュレーションし、精神的にも体力的にも大きな負荷がかかる作業でした。先輩が残した結果を受けてプレッシャーもあったと言いますが、夜遅くまでの準備や仕込みは全く苦にならなかったと4人は口を揃えて語ってくれました。

チームワークの最大の要素は「信頼と支え合い」だと言います。
カトレアさんは、「メンバーの誰かが病気や個人的な事情で練習に遅れた場合でも、他のメンバーがその分をカバーし、全体を支え合った。互いの能力を疑わず、誰かが落ち込んでも全員で持ち上げる信頼がありました」と振り返ります。

ズジャジャさんも「チーム全員が互いの努力を信じ、必要な時には精神的にもサポートし合い、ご飯会や日々の練習を通じて絆を深めていきました」と語り、こうした信頼関係が大会で功を奏しました。

また、国内大会と香港大会では、競技の雰囲気や求められる法的知識が大きく異なりました。香港では国内予選を勝ち抜いてきた各国の優秀なチームと対戦し、緊張感もピークだったと言います。そんな中戦略的思考が求められ、「法律を専攻しているメンバーが一人もいないので、やはりその部分は不安でした」とデヴニさんは語ります。ドゥックさんは「自分に対してあまり自信がある方ではないので、大丈夫かな?と思っていましたが、チームメンバーが『大丈夫、絶対できるよ』といつも励ましてくれて結果が残せました」と感謝を述べました。

a photo from a moot court

弁論中のデヴニさんと彼女を温かく見守る3人©香港赤十字社

今回の経験を活かして将来を展望

大会を通じて、4人は法律や人道分野への関心を深めました。

デヴニさんは「これまで法律にあまり興味はなかったんですが、ICRCや国際人道法が現実の紛争や危機と深く関わっていることを実感し、関心を持ちました。今まで国際関係を学ぶ中で無力感を覚えることもありましたが法律や人道支援を通じて自分にも何かできるのではと考えるようになったんです」と語りました。

またズジャジャさんは、「私たちは法律の知識もなく指導教員もいませんでしたが、どんな状況でも全力で努力すれば結果が出せることが知れて、それが一番の学びでした。この大会を通じて多くの人と出会い、同じ志を持つ仲間とつながることができたのも大きな収穫でした」と話します。

将来の進路について、4人にそれぞれ聞きました。ズジャジャさんは、イギリスの大学院で安全保障を学ぶ予定で、将来的には安全保障や人道支援の分野でグローバルに活躍したいと考えています。以前は海洋生物学者を目指していたカトレアさんも、この模擬裁判への参加をきっかけに法律や人道分野への関心を深め、将来はICRCのような人道組織で働くことを目標にしています。デヴニさんは、日本に残って人権啓発に取り組みたいとのことで、ドゥックさんは、法律と人道支援の両側面から危機的状況下で仕事をする道を模索したいと言います。

こうした目標に向かって、模擬裁判での経験が今後も活かされることをICRC駐日代表部としても願ってやみません。

Award ceremony for a moot court

©香港赤十字社

それぞれにとっての国際人道法とは

4人にとって、国際人道法は単なる法律ではなく、「共感」と「対話」の実践だと言います。模擬裁判を通じて、紛争の被害者や当事者の立場を理解することの重要性を実感しました。

「人道法は大きな危機の時だけに適用されると思われがちですが、実際には普段の生活にも関係しています。現実の危機は日々起きていますが、多くの人は気づかないだけ。人道法を学ぶことで人びとの状況に目を向け、危機が起きてからではなく平時から備えることができます。人びとを守るためにどう行動すべきかを事前に考えられるんです」
とドゥックさんは話してくれました。

模擬裁判への参加を通して、ICRCの活動についても理解が深まったそうです。以前から赤十字の人道支援にはなじみがあったものの、紛争下のICRCの活動や、「国際人道法の守護者」としての役割は、目から鱗だったと言います。従来の人道支援だけでなく、戦闘や紛争時に民間人の命と尊厳を守るため、まさに「対話」を通して紛争当事者に国際法上の義務を徹底してもらう活動があることを知り、法と人道支援の関わりについて具体的に理解する好機となったと振り返りました。

最後に

国際人道法やICRCの活動の重要性を多くの人に知ってもらうためには、今回の模擬裁判のように、参加・体験型のイベントが効果的ではないかと語ります。ロールプレイやディスカッションなどを通じて、高校生や大学生が現実の紛争や人道危機に関心を持つことが重要だとチームは考えています。

「個人ができることは小さいかもしれないですが、関わることが重要です」と語るのは、デヴニさん。一人ひとりの関心と行動の積み重ねの重要性を強調していました。

ズジャジャさん、カトレアさん、デヴニさん、ドゥックさんの4人が大会や学びを通して深めた互いへの信頼感、そして共感、対話を重んじる精神は、人道支援や社会貢献には不可欠です。模擬裁判の国内大会、香港大会を通じて、これらを身をもって体感してくれたことが、人道支援業界の明るい未来につながることを願っています。

moot court family photo

参加者たちの集合写真©香港赤十字社

ICRC駐日代表部では、2026年も国際人道法模擬裁判・ロールプレイ大会を実施する予定です。夏頃をめどに駐日代表部のウェブサイトにて告知予定です。今年も各大学からの応募をお待ちしています。